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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第一章:冬休み
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第15話:カワセミさんのダイブを撮ろう!




 カワサキさんの妹さんの孫娘。スズキ・ランさん。


 スラリと高い背、長い黒髪。

 迷彩のダウンのせいで上半身はよくわからないけど、ピッタリフィットの黒デニムの脚からうかがえるスタイルはかなりのモノだろう。

 お顔の方は、うん、かなり美人系。


 身長百五十三センチでくせっ毛童顔、上から下までスラリとスレンダーなわたしは、ちんちくりんと呼ばれても、まあ、仕方がないけど。

 実際そう呼ばれるのはまた話が違うでしょう!

 しかも、初対面でいきなり!

 文句の一つも言ってやろうかと思うけど、二人とも撮影に戻ってるので、仕方なく、わたしも。


 と、思いきや。


「あなたもFPSされてるの?」


 スズキさんがファインダーでカワセミさんを狙いながら話しかけて来た。


「やってないよ。両親はやってるみたいだけど」

「興味は?」

「んー、特に無い」

「ふぅん」

「おい、蘭。まさかクランに勧誘しようとか思ってないだろうな?」

「一人へたれが抜けやがりましたから、メンバー補充は急務でしてよ?」

「それは分かってるけど。さすがに初対面の子、いきなり勧誘すんな」

「むぅ……名前からして適任かと思いましたのに……」


 本当になんなんだ、この子。ちょっと怖い。

 カワサキさん、この子と一緒にゲームやってるの? それもなんかすごい。


「ところで、おじさま。その照準器、貸してもらえませんこと?」

「そう来るだろうと思って、蘭の分も作って来てるよ。ほれ」


 うわ、いいなぁ。カワサキさん、甘々……。

 それに、彼女のカメラ、カワサキさんのとうり二つ。

 と言うか、まったく同じじゃないかな?

 だからカワサキさんお手製の照準器がそっくりそのまま使えるってことか。

 カワサキさんのカメラって確か『百万もしない』けど『百万には近い』金額だったはず。

 そんなのをわたしと同い年の女の子が持ってるって……やっぱり、いい処のお嬢様なんだろうなぁ。


「使い方は、さっき永依夢ちゃんに説明してたの聞いてたから分かるよね?」

「私を誰だとお思いになられて?」

「スズキ蘭」

「だ・か・ら、フルネームはやめて下さいまし、ホンダタクトさん」

「だー。フルネームはやめぇぇぇ」

「ふふっ」


 カワサキさんって、本名、ホンダさんなんだ。

 でも、二人とも本名フルネームがダメって、どゆこと?

 微妙に、謎。

 まあいっか。

 カワセミさん、集中。


 カワセミさんは葦に停まって水面をきょろきょろ見渡す。

 エサになる小魚を探しているみたい。

 小魚を見つけると、すぱっと水中に飛び込んで小魚を捕まえて、すぐに元の場所、もしくは近くの場所に戻る。

 たまに失敗して獲れないこともある模様。


 この水中に飛び込む瞬間や、水中から飛び出す瞬間を撮りたいところ。


 この前、カワサキさんに見せてもらった写真。

 水中から飛び出す瞬間がばっちり写っていた。

 あんな写真を自分でも撮ってみたい。


 何度か挑戦してみたけど、飛んでから慌ててカメラを動かしても狙いが定まらず、画面の中に入らないことも多い。入ったとしても、ピントも合わないし、写ってたとしても動きがありすぎて手ブレになりがち。

 葦の上に戻れば動きは止まるから、小魚を食べてるところは写せる。

 

 んー、どうやったらうまく撮れるんだろう。


 ここは、やっぱり、上手い人を真似するのが早道かな?

 カワサキさんがカメラを構えているところをちらりと横眼で盗み見。

 ?

 カメラの向きが微妙に違う。

 カワセミさんの居る方角からすこしズレてる気がする。

 こっそりとカワサキさんの後ろに回り込んで、その角度を盗み見てみると。

 !

 やっぱり、カワセミさんそのものを狙っているのではなく、下の方、つまり、近くの水面を狙っている模様。


 なんで?


 見ていると、カワセミさんが飛んだ。


「そっちかー!」


 カワサキさんが叫ぶ。


 あ。


 なるほど!


 カワセミさんが飛び込むと思われる方向を先読みして、水面そのものを狙ってたんだ。

 ただ、狙った通りに飛ぶとは限らない。今のは狙いが外れて違う方向だったんで「こっちじゃなくて、そっちか」と。

 読みが当たればカメラを大きく動かさずに狙いやすくなるってことなのね。


 ただ、飛び込む先を予想するにしても経験が必要そう。


 むう。


 とりあえず。


 カワセミさんが葦の上で『きょろきょろ』と首だけ回して水面を見渡しているので、その視線の方角の水面に照準を合わせてみる。

 カワセミさんの動きにあわせて、わたしも『きょろきょろ』とカメラを動かす。


 カメラも高速連射に設定して、待機。


 そして、カワセミさんが、飛ぶ!


 偶然か、ほぼ狙い通りの方角。

 角度自体はちょっと違ってたけど、カメラを斜めではなく、水平に横に少し動かすだけで着水ポイントへ。


 動かしながらシャッター。


 カカカカカ。


 高速連射モードのシャッター音が軽快に鳴り響く。


 やったか?!


「ああん、もう! ぜんぜんダメですわ!」


 隣から悲鳴が聞こえてきた。


「どうやったらおじさまみたいに撮れるんですの!?」

「いや、今のはウチもしくじったし……」


 わたしはどうだろう?

 プレビューを再生。

 最後の写真から遡って1枚づつ確認。

 最後の方は葦の上に戻ったところだけど、カメラを大きく動かしすぎたので、ブレが大きい。

 葦に戻る途中の飛行シーンもピントが葦に合ってて、肝心のカワセミさんはピンボケ。

 さて、もう数枚遡って、問題の水面シーン。


「おおおおおおおおおおお」


 あらやだ。思わず叫んじゃったわ。


 水中から飛び出した瞬間って訳ではないけど、少し飛び上がったところかな。小魚を咥えてるところまで写ってる。

 ピントは微妙に合ってない感じもするし、ブレてもいるけど。


 それなりに、撮れた!感。


 やー。


「何を騒いでらっしゃいます?」

「これこれ、見てみて」

 スズキさんが寄って来たので、カメラ背面の液晶パネルに拡大表示させる。

 スズキさんは、何やら台形のモノを液晶に当ててそれを覗きこむ。

「それ、何?」

「ルーペですわ。持ってらっしゃらない?」

 ルーペ?

 虫眼鏡?

 変な形……。


「ぱっと見、よく撮れてる風ですけど、拡大するとボケブレがよくわかりますわね」

 ぐぬう。そう言われると身も蓋もない。


 けど、そのルーペって便利そう。

「ちょっと、それ貸りていい?」

「どうぞ」

 ルーペ? を借りて、液晶に当てて覗いてみる。

 なるほど。

 枠が黒くて窓が小さいから、周りが明るくてもはっきりと見える。

 さらに拡大して細かく確認できるのね。

 いいな、これ。


「そういう蘭はどうなん?」

 カワサキさんの突っ込みにスズキさんは。

「……次がありますわ」

 とか言ってたら。


 キーッキキキキキ……


「あ」


 カワセミさん、どこかへ飛び去り。


 次は、いつになるでしょうか?










※写真なしです><

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