表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
第一章:冬休み
14/113

第13話:ウグイスはうぐいす色に非ず?



 例の、カワセミさんが居た小さな池に行こう! ってことでカワサキさんの後を自転車で着いて走る。


 と、思ったら、カワサキさんがキーっと、キーブレーキ。

 じゃなくて、急ブレーキ。

 わたしもあわててブレーキ。

 三脚を肩に担いでるんで、片手だけだとちょっと怖い。


「どうしました?」

「ウグイス、鳴いてる、そこ」

 へ?

 ウグイスって、あれだよね。ホーホケキョの。

 耳を澄ましてみても、そんな声は聞こえない。

 はて?

 『ジッジッ』と言うか『ジュッジュッ』って感じの、小さな低い声は聞こえる。


「ほら、そのあたり」

 カワサキさんの指さす方向のヤブ……の、やや左側からその声は聞こえる。

「ウグイスって、ホーホケキョじゃないんですか?」

「その鳴き方は春先のさえずりだね。

 それ以外はこの『地鳴き』って鳴き方なんね」


 ぜんぜん知らなかった。


 で、そのウグイスさんはいずこ?


 背の低いヤブの中から声は聞こえる。

 声はすれども姿は見えず。

 声のする方を見ていても、何も動く気配はない。

 声は少しづつ移動してる。

 けど、はて?

 

 カワサキさんは三脚を立てて、時々シャッターを切っている。

 わたしが見ているよりも、少し右側を。


 わたしは鳴き声を無視して、カワサキさんが見ている付近に注目してみた。


 あ、居た。枝と枝の隙間からちらっと見えた。


 そいうえば、この間、アカゲラのドラミングの音の聞こえる方向がカワサキさんと違ってた、なんてこともあったけど。


 とりあえず、ウグイスさん? を見つけたので、見失う前にカメラで追いかける。

 んがしかし。

 ヤブの中をちょろちょろと動いていて全容は見えない。

 たまにちょこっと顔を出すけど、一瞬。

 出た!と思ってエイムしてファインダに移ると、もう居ない。


 撮れ、なーい。


「滅多に外に出てこないからねぇ、ウグイスは」

 そ、そうなのね。

 と、思ってたら、さっと林の奥の方へ飛び去って行った。

「あぁ、行っちゃったかぁ」


 んー。残念。結局、一枚も撮れなかった。


「ほれ」


 カワサキさんがカメラの背面の液晶パネルをこちらに向けて、撮った写真を見せてくれる。

 枝の隙間からちょこんとこちらを覗く、灰色?の小鳥。



挿絵(By みてみん)




「ぜんぜんウグイス色じゃないですね?」


 もっと黄緑と言うか、抹茶アイスみたいなイメージがあったっけど。

 カワサキさんの写真は光の加減か、灰色っぽく見えるけど、よく見たらうっすらと緑がかった灰色。

「多分、きれいな緑を思い浮かべてるんだろうけど、実際はこれがウグイスの色なんよ」

「そう、なんですね……」


 いや、もう、なんか。

 一般的な知識が実は誤ってるって結構あるんだろうね。

 専門家と言うか、ある程度詳しくないと間違って覚えてしまうんだね。

 まあ、普段そんなに意識してないもんね。


「カワセミ、行こか」

「はい!」


 改めて、気を取り直して、カワセミを撮りに!


「タカっ!」


 キーっ!


 急ブレーキカワサキさん。


 マタデスカ?


 って言うか、タカさんですか!?


 どこ? どこっ!?

 

 カワサキさんが自転車を降りて、三脚からカメラを外して三脚を、投げ捨てる!?

 園路の脇の芝生の上に、だけど。だ、大胆にもほどがある。


 わたしも自転車から降りて、三脚からカメラを外して、三脚はそっと自転車のカゴに仕舞う。


 カワサキさんが手持ちで上空を狙っている。

 その方角を見てみると…

「あれですね!」

 わたしも早速エイム、アンド、シャッター!

 と言いたいところだけど、レンズの動く音で、ピントが右往左往してるのがわかる。

 それでもなんとか、何度かシャッターを切る。


 タカさんは上空をくるくると旋回した後、南の方角へ飛び去って行った。


 あまり近くではなかったけど、青空を背景に翼を広げた姿は相変わらずカッコイイ。


 早速、プレビューを再生して、写真を確認。

 

「ぐはっ」


 ほぼ、全滅。

 ピンボケ、ブレブレ、写ってない(泣)


「ほら。ハイタカだった」


 へこんでいるわたしに、カワサキさんが撮りたての写真を見せてくれる。


「うぅ。いいですねぇ…」


 やっぱり機材の差か? 腕の差か?

 まだやり始めて数日。こんなものかな。うん、こんなもんだよね!

 この間撮ったオオタカさんは、まぐれみたいなモノだったか……。


 さて、また、気を取り直して自転車で移動開始。


 例のカワセミさんが居た小さな池に近付くと‥‥


 キーっ!


 また急ブレーキ!?


 もうっ!


 と、思って停まったら、カワサキさんは停まらずスイスイ走ってる。


 あれ?


 キーっ。


 あ、今度こそ、ブレーキ。


「ん? どうかした?」


 じゃあ、さっきのは?

 近くに他の自転車も無く。


「自転車のブレーキの音が聞こえたんで、カワサキさんが停まったのかと」

「ああ。あはは。あれはカワセミの鳴き声だね。ちょうど池の方に向かって飛んでったかな」


 えー。


 もう、見るモノ聞くモノ、すべてが驚きです。


 でも、なんか、楽しい!









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

写真は、永依夢は撮れなかったので、カワサキさんが撮った風で。

ヤブの中のウグイスさん、です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ