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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
おまけ章】番外編:カワサキさんと蘭先輩と
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第107話:喧嘩両成敗



 蘭先輩、それに、わたしを落ち着かせようと。


 (くだん)の女性と離れて、別荘の部屋で少しくつろがせてもらっていたけれど。


 食事のお代わりを、と、取りに行った方菜(かたな)ちゃんが、血相を変えて戻って来た。


涼子(りょうこ)はン来てカワサキはン吊るし上げられとるっ!」


 はいぃ?


 どういう、状況?


 涼子さんが荷物を運んで来てくれるとは聞いてたけど。


 カワサキさんが、吊るし上げ?


 一瞬、何事、と思ったりもしたけど。


 あぁ、なるほど。


 察し。


 蘭先輩と、(くだん)の女性の状況を聞いた涼子さん。


 原因は、カワサキさんにあるって即断したっぽい感じ。


 でも、吊るし上げ、とは?


 急いで。


「んで、涼子はンが『お前らも来い』て()うてはる」


 うん。


 一蓮托生、って事だよねぇ。


「怒られるのは覚悟で、行きましょう、蘭」

「あ、ええ、叱られるのはやぶさかではありませんが……おばあ様……」

「ほら、行くよ」


 まだまだ、いろいろ、思うところは沢山あるだろうけど。


 わたしも。


 切り替えて、どーんと、怒られに行きますか……。


 とほほ。


 軽い気持ちで着いて来たのは、大失敗だった、かも。



 バーベキューのお庭に、戻ると。


 確かに。


「おじさま……!?」

「な? 吊るし上げられとるやろ?」


 方菜ちゃんの、おっしゃる通り。


 カワサキさんが、ロープ? で、ぐるぐる巻きにされて、桜の樹に、吊り下げられてる……。


 涼子さんがひとりで、って訳じゃなくて。


 屈強な、男たち、数名。


 あぁ、何度かサバゲ対戦したことのある、涼子さんの会社のメンバー。


 涼子さんもだけど、みんな迷彩服で。


 例の着弾判定ジャケットの試験(テスト)の帰りか、途中か……。


 涼子さんは、そのカワサキさんの、足元。


 正座して。


(らん)永依夢(エイム)方菜(かたな)、あんたらもこっち来て土下座しぃ、土下座」


 手招かれましても……。


 ここで抵抗しても、無意味だし。


 あぁ、確かに。


 謝罪。


 ね。


 蘭先輩、方菜ちゃんと、一瞬顔を見合わせて。


 すっと。


 涼子さんの、左右。


 カワサキさんの、足元。


 土下座と言うか、先ずは、正座。


 涼子さんが、場を見渡して、告げる。


「これで皆さんお集まりでっしゃろか?」


 集まっているひとたちが、顔を見合わせつつ、うなづくと。


 涼子さんが、続ける。


「ほな、改めまして。ウチはこのボンクラの妹で、この子の祖母の九重(ここのえ)涼子(りょうこ)、言います。こんな格好で失礼します」


 わたしたちは、同じように正座のまま、涼子さんの話を聞くしか無いよねぇ。


「今日はウチの愚兄と孫が、大変失礼な事をしでかしてしもうて、ほんに、申し訳ございませんでした」


 からの、土下座。


 額を、地面ギリギリまで降ろして。


 はぁ、なんてこった。


 と、言うか、これ、どうなったら、どうやったら終わるのかな?


 この、土下座……。


 ちょっと不安にかられたけど、でも、すぐに。


九重(ここのえ)さん……皆さん、顔をあげて下さい」


 声は、(くだん)の、女性(ひと)


 園田さんの、お母さん。


 その声に、首だけ起こして、顔を上げると。


「こちらこそ、失礼を申し上げ、また、お騒がせして大変、申し訳ございませんでした」


 園田さんのお母さんが、わたしたちの前で、土下座してた。


 あぁ。


 喧嘩両成敗、と言うか。


 一瞬、感情的にはなったけど。


 冷静さを取り戻せば。


 お互い。


 お互い様な。


 そして、少し顔を上げて。


 わたしたちの後ろに吊るされている、カワサキさんを見やって。


「りょうこさん。お兄さん……本多さんを降ろしてあげてもらえますか?」


 真っ先に、そう告げる。


「あ、あ、あぁ、おい」


 涼子さんが、後ろで最敬礼する迷彩服の男性たちに指示して。


 カワサキさんが、桜の樹から、降ろされると。


 園田さんは、カワサキさんに対して。


「本多さん……大変申し訳ありませんが、先般のわたくしの申し出、取り下げさせて頂きます」


 改めて、土下座……。


 しばらくして、その場で立ち上がって。


 今度は正座したままの涼子さんの手をとって。


「りょうこさん、お立ち下さい。これで、終わりにしましょう」


 そう言いながら、涼子さんを起たせると、今度は。


「蘭さん……」


 蘭先輩に手を差し伸べて。


「いろいろと、ごめんなさい」


 同時に。


 方菜ちゃんには、園田さんの、妹さん。


 わたしの前には。


 園田さん、の、娘……息子さん。


 それぞれ、手を引いて、立たせてもらう。


 園田さんのお母さんに立たせてもらった蘭先輩。


 もちろんの事、なりゆきに疑問もあるだろう。


「どうして、急に……?」


 そんな風に、園田さんのお母さんに問うんだけど。


「……わたしは……九重(ここのえ)の……」


 園田さんのお母さんの返答は。


「さーさー、一区切りついたみたいだし、どんどん食べよう食べよう。食材はまだまだたっくさんあるから、そこの迷彩服のひとたちも食べて食べてー」


 蘭先輩と同じ金髪の女の子の、威勢のいい掛け声に、かき消されるけれど。


 涼子さんが、代表で。


「いや、すまんけど、ウチらはこれでお(いとま)させてもらいますわ」


 うん、仕方ないよね。


 このままここで、この後も、と言うのは、ちょっと心苦しい。


「お騒がせしましたよって、ほんま申し訳あらしまへんでした。ほら、あんたらも、帰るで」


 うぅ、バイクスーツに着替えなきゃいけないからちょっと大変だけど。


 仕方ない。


 別荘の中へと移動しようとするけれど。


「園ちゃ……園田さん、ごめんね」

「いえ、こちらこそ……」


 カワサキさんは園田さんと、少し言葉を交わしてから。


 別荘の中へと、一旦移動。


 もくもくと着替えて。


 予定より、かなり早いけど。


 移動を余儀なくされる、わたしたちでありました……。







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