第103話:お花見バーベキューで女性のような男性に出会う
桜、さくら、咲く、春の日。
お花見バーベキューの、その会場に到着すると。
たくさんの、見知らぬひと。
高校生くらい、かな?
若い人が、多いみたい。
男の子も居るけど、女の子も結構、多い。
あ、蘭先輩みたいな金髪の、すっごく幼い子も居る。
中学生かな? 小学生かな。
それに、わたしたちと同世代くらいか、すこし上のオトナもいらっしゃる。
小さな、三、四歳くらいの幼い子を抱いた女性も。
さすがに。
カワサキさんは、最長老?
あはは。
公園では、まだ比較的『若い』って言われているカワサキさんではあるけど。
鳥撮りさんの平均年齢の高さがうかがえる。
ほんと、お金もかかるし、時間もかかるし。
鳥撮りって、老後の楽しみ、って考える方が、本当はいいのかも?
それでも、わたしたち、わずかな『若者』も。
お金のかかる部分は、工夫して。
時間は、なんとか工面して。
たまには、こういった遠征も。
ね?
すでに先に来られたひとたちで、バーベキューの準備が始まっている。
わたしたちも別荘のお部屋を借りて、バイクスーツから普通のお洋服へと、お着換え。
合流して、準備……は、ほぼ終わってしまってたため、そのままバーベキュー、スタート。
知らない人ばかりだけど。
なんとなく見覚えのある方も。
あぁ、そっか。
去年の夏のアオバト遠征の時に、海辺の別荘で会った女性たちか。
確か、女の子と、女性ふたり、若い女性と、年配の女性。
女の子と若い女性は、母娘、かな。
よく似てる。
乾杯の音頭は、その女の子……だと、思っていたんだけど。
まさかの。
その女の子が。、男の子だった!?
ぇえ?
乾杯の後、自己紹介大会。
一番最初に、その女の子だと思ってた子が、自己紹介で。
「園田真綾、この春から二年生です。こんな格好してますけど、一応、男子、です」
蘭先輩と、方菜ちゃんと、顔を見合わせて。
驚き。
いやちょっと待って、どこからどう見ても、可愛い女の子。
いや、でも、ちょっと待って、声は、あぁ、なるほど、確かに、男の子だ。
「あたし以外にも、そういう人が居るので、お楽しみに」
えぇえ!?
そういう人、って、女性のように見える男性、ってことだよね。
どひー。
高校や大学でも、そういった人がいらっしゃる、と言う説明があった。
LGBTQ、だっけ。
でも、現実的に、そういった人と関わることもなかったし。
会うこともなかったから。
大学の時に、ウワサ程度で、誰それが、って話はちらっと聞いた事はあったけど。
目の当たり。
そして、実際に。
女性だと思っていた人の中にも、数名。
高校生の子が、二人。
ひとりは、今日、はじめて女装で参加だとか。
そして、そんな『女装』の『道具』を売ってるお店のオーナーと言う、これまた素敵な女性かとおもいきや、男性。
その男性が抱きかかえる幼い女の子とみせかけて男の子。
どひーどひー。
世界観が覆る、って言うの、こういう状態、かな。
あひゃぁ。
こうなって来ると、男性に見える女性も居るのか? って、思ったりもしたけど。
そっちは、いらっしゃらず。
あ。
中学生か小学生かと思った金髪の女の子は。
こちらも、なんと、高校生だった……。
ひとは見かけに、だよね。
まぁ、わたしと方菜ちゃんもヒトの事は言えない、けど。
さすがに、二十人もいらっしゃるので、端折りながらとは言え、自己紹介の時間もかかり。
次は、わたしたちの番。
と、言うところで、先ずは、カワサキさん。
なんだけど。
「は、はい。えーっと、それじゃぁ……と、言うか、その前に、そろそろ、焼きあがってる感じですね」
ひと区切りの後、改めて。
カワサキさんから、自己紹介。
わたしたちが『野鳥撮影』の仲間だって話とか。
蘭先輩が、カワサキさんの妹の『孫』って言うのはさすがに驚かれたみたい。
ふっふっふ。
わたしたちも盛大に驚かされたし。
お返しっ。
さらなるお返しは。
カワサキさんの本名『ホンダ・タクト』からの、蘭先輩の『スズキ・蘭』、そして『スズキ・刀』の、バイク名三連発で驚きの笑いを取って。
特に、バイクに詳しい女性がいらっしゃったので、めちゃウケ。
いや、漫才グループじゃ、ないよ?
わたしの『永依夢』も、これだけの人数だと。
さすがに、中にはFPSを知ってる人もいらっしゃって。
知らない人だと『変わったお名前ですね』で済むところ。
高校生男子ふたりに、めちゃ突っ込まれましたわ。
あと、蘭先輩は、同じ金髪碧眼の、例の小学生のような高校生の子に。
「そちらの金髪のお嬢さんと同じ、日本人ですわ」
と、かなりの親近感を持たれたご様子。
そんな感じで。
漫才テイスト満載の、自己紹介も終えて。
おいしいおいしいバーベキュー。
お肉、お野菜、新鮮海鮮!
食しつつ。
カワサキさん、蘭先輩、方菜ちゃんは、バイクが好きだと言う女性、ユイナさんと一緒に、バイク談義。
わたしは。
ふと。
見上げる、満開に近い、桜の樹。
時々、ヒヨドリさんが飛んで来て、花の蜜や花粉をちゅーちゅーしてる。
あと、定番の、メジロさんも、時折。
そして、桜の上に広がる、青空。
なんか、飛んでないかなー、って。
ぼーっと、見てたら。
「河崎さん?」
左後方あたりから、声をかけられた。
ふと、そっちを見るも、誰もおらず。
「河崎さん、こっちです」
あ。
右耳の補聴器つけてなかったから、左から聞こえたか。
よくやっちゃうやつ。
「あ、はい、何でしょうか……ごめんなさいね、右の耳が聴こえにくくって」
一応、いつもの言い訳、からの。
「ちょっと待ってね、念のため補聴器着けるわ。電池が結構高いから、必要な時しか着けないのよね」
さらに意味不明な、だけど定番の言い訳も、追加して。
「はい、それで何かしら、えっと、園田さん?」
そう。
わたしに声をかけたのは、例の女の子みたいな、男の子、でした。
「あ、えっと、鳥の写真撮られてるって、どんな写真なのかな、って思って」
おぉっと!