第101話:お花見バーベキュー会場へ向けて出発
お花見でバーベキュー。
夏、冬に、涼子さんの別荘で、サバイバルゲームの機材のテストプレイの時に、バーベキューする事はあるけど。
春って、初めてかも。
明日、早朝から出発。
今回は、涼子さんは、都合が悪くて不参加なんだけど。
時間をずらして、荷物は運搬してくれるんだそうで。
「すみません、わざわざ、ありがとうございます」
カメラは、背中に背負って持参するとして、かさばる三脚や、着替えとお泊りセットなんかは、涼子さんに。
「かまへんかまへん、ちょうどウチも別荘の方に用あるし」
会場が、涼子さんの別荘の、わりと、近く。
近いと言っても、そこそこの距離はありそうだけど。
涼子さんにしてみれば。
「ちょこっと足伸ばす程度やしな、ほな、明日、夕方な」
「はい、よろしくお願いします」
涼子さん、相変わらずお元気そうで。
とっても高級そうなスポーツカー? を、駆って。
バイクには乗ってるけど、カワサキさんの受け売りだし。
車の車種とかは、もっと解らない。
鳥撮りの方は、機材の事とか、いろいろと勉強して、覚えたけど。
バイクや車までは、手がまわらない。
それは、ま、いいとして。
翌朝。
いつもの?
高速乗り口近くの、本屋さんの、前に、集合。
まだほの暗い、午前五時。
「うぅ、まだ寒いわねー」
「ホンマ、朝はキっついなぁ」
方菜ちゃんが、先に来てた。
すぐに、蘭先輩と、カワサキさんもやってきて。
携帯端末のナビに、目的地をセットしたのを確認して。
ヘッドセットの通信も、確認して。
『そんじゃ、行きますかー』
すぐ近くには、居るけど。
バイクのエンジン音もあって、直接の会話は難しいから、ヘルメット越しに。
通信用の、ヘッドセットで、会話。
「はーい」
『行くでー』
『方菜、速度注意、ですわよ』
『わかっとーわかっとー』
『ほんとに、もう』
あはは。
毎度の、やりとり。
方菜ちゃん、独りで走ってる時は、結構飛ばしてるんだろうなぁ。
あたしたち、カワサキさんや蘭先輩と、居る時は。
ペースを合わせて。
安全運転、安全走行!
ね。
高速に乗って、目的地を、目指す。
ぴゅーん。
寒いぃ。
四月になったとは、言え。
まだまだ、朝は、寒い。
革のライダースーツの上に、ダウンジャケット羽織っても。
手先、足先。
『ちべたい……』
うんうん。
途中、パーキングエリアで、少し休憩したり、しつつ。
走行していると、陽の出。
幸い、陽の光は、右手後方から降って来るから。
バックミラーがちょっと眩しい時もあるけど。
比較的快適な、走行。
太陽が正面にあると、視界が悪くなるからねぇ。
『次、降りるぞー、方菜、間違うなよ』
最後尾の、カワサキさんが、先頭の方菜ちゃんへ、念のための、指示。
ナビの案内もあるから、間違えないとは、思うけど。
『へいへい、左やな』
指示通り、高速の出口を降りて、一般道へ。
降りて、すぐ。
『ハラヘッター』
『メシやメシやー』
こちらも、ある意味、恒例になりました。
こんな早朝から、開いてる飲食店と、言えば。
毎度おなじみ、牛丼屋さん。
赤、オレンジ、黄色。
牛丼屋さんって、何故か、暖色系?
黄色は厳密には、中間色だけど、さ。
黄色の牛丼屋さん。
牛丼、カレーだけでなく、定食系や丼系も豊富で、最近は揚げたてトンカツなんかもある。
なので、朝限定の、定食を、いただきまーす。
「さて、時間はまだぜんぜん余裕あるし、どこかいい場所無いか探そうかね」
朝ごはんを食しつつ、この後の、予定。
最終的には、お花見バーベキューの会場へ行くんだけど、その前に。
明日、鳥撮りする場所を先に探しておこう、と。
「調べてみましたけど、それっぽいスポットは特になさそうですね」
わたしも、少し近隣を調べてみた。
「ここなんてどうかな?」
アドレスをメッセージアプリで送信。
「ん? 鳥の森公園?」
「名前だけ見たらそれっぽいけど、ちっちゃい公園やん。こんなとこ、何もおらンのちゃう?」
デスヨネー。
名前に鳥さんが入ってるから、それなりに居るんじゃないかなーと思ったり、思わなかったり。
「ってゆーか、永依夢、これ、鳥じゃなくて烏ですわね。烏の森公園」
ぐほっ。
ほんとだ、よーく見たら、鳥じゃなくて烏だった……。
「こっちの方なんてどうだろう。せっかくこっちまで来たんだから、公園じゃなくて森の方行ってみたいな」
カワサキさんからの、ご提案。
とりあえず、食事をささっと済ませて。
牛丼屋さんの駐車場から、先ずは大通りに出て。
少し走ってから、脇道へ。
山へ。
登りの、狭い道。
最初は、住宅街のような感じだったのが、すぐに、山道みたいになって。
道もどんどん、狭くなるし、路面の状態もあまり良くない。
道路の片側は、森。
もう片側は、崖……。
「落ちたらイチコロやな」
「ガードレールあるから大丈夫」
そんなに速度も出せないし、ガードレールを飛び越える事は、無いと思うけど。
「路面が怖いぃ」
落ち葉で滑りそうで、怖い。
「バイクの止められる広い場所があればいいんだけど」
言いながら、しばらく走ってみても、それらしい場所は、無く。
延々と、細い道が、続く。
そして。
「ぐはっ、結局、住宅街に戻ったっ」
「戻ったと言うか、別の住宅街に出た感じですね」
「じゃあ、一度幹線道路に出て、今度は逆方向に行ってみるか」
そんな感じで。
鳥撮り場所を探して、右往左往。
幹線道路の反対側も、似たような感じで。
あっちにこっちにバイクを走らせてみたけれど。
「そろそろ、いい時間じゃない?」
『うぉ、もうこんな時間か……そろそろヤバいか?』
『せやな』
大きな収穫無く、目的地へ向かう事に。
知らない場所だと、こういう時も、あるよねぇ。