第98話:波乱の予感
秋。
って、言うか。
秋、何処行ったぁああ。
夏の暑さから、すとん、と、気温が下がって。
いきなり、冬の、様相。
様相と、言えば。
公園の様相も、文字通り、様変わり。
老木や朽ち木が倒されて、薄くなった林に。
訪れる鳥さんも、めっきりと減って。
サンコンさん、何処いったぁあああああ。
みたく。
方菜ちゃんが『あれもヒヨ、これもヒヨ』って、『ヒヨドリのうた』を歌っていたのも、頷ける。
ほんと、秋の渡りの鳥さんとも、あまり会えず。
そんな、短い秋の日に。
熱い展開。
蘭先輩が、カワサキさんに、告白。
なんかもう、火山のように。
前触れに、気付いてる人は、気付いていたけど。
当のご本人。
カワサキさんは。
知ってか、知らずか。
「考えておく……リョウとか蘭の両親とかにも話聞いてみるわ」
って。
答えを保留。
逃げた、な、これは。
確実に。
蘭先輩も、そこは折り込み済みだったようで。
落胆するでもなく。
「ええ、じっくり考えて下さいまし」
ある種。
抱えていたものを、投げ飛ばして。
ちょっと、すっきりした感も、あるかな?
学生時代、特に高校時代と違って。
お互い、違う会社に就職したから。
会う頻度は減った、とは、言え。
鳥撮りの公園で、時々会うし。
なんなら、メッセージアプリで近況の報告と言う名の。
愚痴の言い合い。
『速報・おじさま、お祖母様に袋叩き』
えー。
まぁ。
仕方ない、か。
蘭先輩が、あらかじめ説明して説得したとは、言え。
そりゃ、直接話せば、ね。
ある意味、カワサキさんの方が、被害者?
って、気も、しなくは、無いけど、ね。
わたしは?
って。
蘭先輩や、方菜ちゃんにも聞かれるけど。
大学のゼミで知り合った男の人とか。
就職して、入社した会社の人、とか。
男の人と話す機会も、増えたけど。
特に、そういう感情は、芽生えず。
むしろ。
カワサキさん。
実は、ちょっと、って。
気持ちも、無くは、無かったのは、確か。
でも、それって。
蘭先輩の気持ちを、知ってたのもあって。
高一の時みたいな、暴走には、至らず。
ブレーキをかけることが、できてた。
まぁ、横取り? みたいなのも、アリかなぁ、なんて。
思ったりも、しなくもなくも、ない?
ナイナイ。
無い、って事に。
しとこう。
方菜ちゃんも、似たようなモノ、だそうで。
今は、まだ。
恋よりも、鳥さん。
それに、バイク。
お仕事が大変、ってのも、あるし、ね。
そして、季節は冬。
年末年始を、例年通りに過ごし。
いやぁ、両親の実家に行ったら。
おじいちゃんおばあちゃんたちから『結婚は?』『ひ孫を是非』みたく。
攻撃されちゃったけど。
軽くかわして。
みんなも、決まり文句、みたいなところで、そこまで真剣にってほどでもなかったから。
半分は冗談、だよね。
そんなお正月も明けて、新年一月も終わりに近い頃。
今年は、まだ雪も見ず。
晴天快晴の、公園。
いつもの場所、いつもの面々。
なんだけど。
「えらいこっちゃ」
「どないしたン、カワサキはン」
カワサキさんが合流するなり。
何やら?
「おじさま、何かありまして?」
うん。何だろう?
「蘭、えらいこっちゃ」
「だから、何がどうえらいこっちゃなんですの?」
何か、あったのかしら?
「会社の子に、告白された」
「え?」
「え?」
わたしと、方菜ちゃんは、ぽかん。
でも、さすがに。
蘭先輩は。
「はぁ!? 何ですってぇえええええっ!?」
まぁ、そうなる、わね。
こりゃ、また……。
波乱?