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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
おまけ章】大人の鳥撮り事情
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第97話:カワサキさんの過去と現在



 オオタカさんが、獲物を捕まえて、樹上に隠れ。


 周囲が静かになり。


 蘭先輩と、カワサキさんの、やりとり。


 告白(プロポーズ)


 蘭先輩から、カワサキさんへ。


 大姪から、大叔父へ。


 ふたりの関係性を知らずとも。


 見かけだけでも、その歳の差や、如何に。


 初老の紳士に、女盛りもはなはだしい、金髪碧眼の、女性。


 ふたりを全く知らない人から見れば。


 何事、とも思う、よね。


 わたしたち。


 わたしや方菜(かたな)ちゃん、それにシンさんとかは。


 ふたりをずっと見て来たから。


 わかる。


 わかっちゃう。


 わかってなかったのは、当の、カワサキさん、ご本人だけ?


「なぁ、蘭、なんでそうなった?」


 何故か、帽子をとって。


 超短く刈った、髪を自分で、つる、つる、と、撫でながら。


「何でも何も、理由はありませんわ。気が付いたら、ですわね」


 蘭先輩は、少し、頬は赤らんでるものの。


 逆に、いつも通り。


 いや、いつも通りを、演じようとしてるの、かな?


 ちょっと、ぎく、しゃく?


「それにしても、よりによって、ウチは無いだろうよ」



 他愛もないはずの、蘭先輩と方菜ちゃんの、かけあい漫才から始まった、この告白劇。


 ある意味、蘭先輩の、想いが爆発、暴発した、とも見える。


 わかる。


 わたしも。


 遠い昔。


 そう、まだ初心だった、高校一年の、冬。


 恋に焦がれて、男の人を好きになって。


 想いが、募りに募って。


 暴走、して。



 でも、それがきっかけで。


 カワサキさんに出会って。


 その姪である蘭先輩にも出会って。


 姪ではなくて、大姪だと知って。


 そのお祖母さん、涼子(りょうこ)さんにも、会って。


 方菜ちゃん、それに、シンさんや、公園(フィールド)常連の、カメラマンさんたち。


 他にも、同じ公園(フィールド)をテリトリーにされてて、よくいらっしゃる、鳥見(バードウォッチャー)さんたち。


 特に、高齢の女性、おばあちゃんたちにも三人まとめて可愛がってもらったり。


 いろんな人と出会って。


 高校を出て、大学も出て、就職して。


 まだ、働き始めたばかりでは、あるけど。


 そんな、長い間。


 いや、多分。


 それより、もっと前から。


「おじさま以外、考えられませんわ。もうずっと前から、もう、ずっと、子供の頃から」


 だ、そうです。


 そんなふたりのやりとり。


 聞かないフリをしつつ、オオタカさんを捕捉(エイム)して、でも、耳だけは、どうしても。


「参ったな、これは……でも、こんな話、リョウに知られたらウチら袋叩きにされるぞ、多分」


「ご心配は無用ですわ。お祖母様にはきっちりお話して、許可も頂いていますし」


「え? 何? リョウに話したの? え? マジ?」


「はい。まぁ、袋叩きに近いお説教は喰らいましたけど……ちなみに、両親も説得済みですわ」


「根回しすげぇな、おぃ……それでウチがノーって言ったらどうするつもりなんだ?」


「イェスと言うまで喰らい付くまで」


「怖ぇえええっ、やっぱ女、怖ぇええ……」


 オオタカさんは。


 そんなカワサキさんと蘭先輩の会話には。


 もちろん、わかるはずも無く、頓着もせず。


 おいしそうに、ガツガツと。


 ヒヨドリさんを、食されております。


 一応、ファインダーには捉えてるけど。


 シャッターはあんまり切りたくない、わよね、これは。


 それより。


「もう、この際ですし。おじさまが結婚されない、本当の理由、聞かせてもらってもよろしいですか?」 


 おぉっと。


 蘭先輩。


 周りが全く見えてないと言うか、気にしなくなったというか。


 よく、ここ(フィールド)で。


 カワサキさんも。


「あぁ、言ってなかったっけな……ウチ、実は……」


 ん?


 何やら。


 って、言うか。


(なぁ、永依夢(エイム)はン、これ、ウチら、聞いてもええンやろか?)


 方菜ちゃんが、耳打ち。


(知らないわよ勝手に聞こえてくるんだから、仕方ないんじゃない?)


 と、しか。


(せやなー)

(せやー)


 そして。


 カワサキさんがおっしゃるには。


「ウチ、実は女性恐怖症なんよ」


「え?」


「え?」

「え?」

「え?」


 どこがっ!?


「どこがっ!?」


 あ。


 蘭先輩も、激しくツッコミ。


「いや、いや、ウチら普通に喋っとんがな」


 思わず、聞くだけだった筈の、方菜ちゃんまで、お得意のツッコミが炸裂。


 そして、わたしも。


「そんな風には全然見えませんよ?」


 思わず、のっかってしまった。


「いやぁ、みんなは歳、離れてるし、趣味も合ってるから話せるけどー」


 (いわ)く。


 幼い頃に、女の子に、イジメられたらしく。


 それがトラウマで、女性、特に、同世代の女性に恐怖心を抱くようになった、らしい。


 しかも、それが、何度も。


「おじさま、その女どもの名前や住所はわかりますか?」


「いや、もう小学校の頃の話だし、名前も忘れた」


「探し出してブチ〇してやりますわ」


「まてまてまてまて」


 蘭先輩。


 カワサキさんの事になると、超、過激?


 カワサキさんが怖がるのも、わからなくは、無い、かも?



 と、言うか。



 プロポーズとか、結婚の話って。


 こんな感じで進んじゃうもの、なの?



 経験ないからわかんないけど。


 もっと、こう……。


(相変わらずおもろいなー)

(せやねー)


 何か、違う……。






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