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バード・ガール~鳥撮り少女  作者: なるるん
おまけ章】大人の鳥撮り事情
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第96話:プロポーズの返答を遮るのは



「おじさまっ! わたくしとっ! わたくしと結婚してくださいまし!」


 早朝の、公園(フィールド)


 突然始まってしまった。


 蘭先輩の。


 求婚(プロポーズ)


 お相手は。


 蘭先輩から見ると、祖母の、お兄さん。


 大叔父。


 告られた、当のご本人は、と、言えば。


 照れた様子もあり、戸惑いの様子も、あり。


 帽子をとって、つるっとしたその御頭を、ぽりぽり。


 所在無げに、右見て、左見て、前見て、そして、上を見て。


 周囲もまた、その動向を見守る中。


 バサバサっ。


 ワラワラ、と。


 池の周辺に居た、ハトさんをはじめ、小鳥さんたちが。


 一斉に、飛び立つ。


 それも、一方向ではなく、四方、八方、あちら、こちら、へ。


 おぉ。


 絶好の舞台背景。


 盛り上がりも、最高潮!?


 と。


「真上っ! タカっ!」


 ちょうど、上空を見上げていた、ご本人(カワサキさん)が、叫ぶ。


 求婚(プロポーズ)の返答では、無く。


 タカが来た、と。


 その声に、ついつい反応してしまう。


 わたしだけではなく、周囲の人達も。


 そして、小鳥さんたちが飛び立った、その中心点。


 もはや、上空ではなく。


 水平に置いた、視線の、先。


 わたしも、カメラに飛びつきつつ。


 照準器に目をやり、捕捉(エイム)


 できない!


 速すぎるっ!


 急降下してきたタカさんは、芦原の地面すれすれから、再度上昇。


 しつつ、獲物を追って、縦横無尽に、芦原の上を飛び回る。


「オオタカ!? ハイタカ!?」


 どっちだろう。


 高速で飛び回るタカさんを、肉眼で判別するのは、困難。


 逃げ遅れた小鳥さんも、バサバサと、飛び回る。


 獲物(それ)を追いかける、タカさんなのは間違いないけど。


 大きさ的に、オオタカさんのオスか? ハイタカさんのメスか?


 お腹側の、白っぽさ。背中側の、黒っぽさ。


 色合い的に、なんとなく、オオタカさんっぽい気もする。


 オオタカか、ハイタカか、と言われれば。


 撮りたい率で言えば。


 オオタカさんに、若干、分がある。


 貴賤はなくとも。


 カッコよさ? カワイさ?


 ハイタカさんは、ちょっとイカつい感があって。


 どうしても。



 それはそれとして。


 それより。


 今、叫んだの、蘭先輩、だよね?


「オオタカっぽいですわっ」


 いや、その、切り替え。


 どんなスイッチ。


 さらに、別のスイッチ。


「降りたっ! 捕まえたかっ!?」


 カワサキさんも。


 直前の会話の影響はどこへやら。


 飛来したタカさんを、捕捉(エイム)し続ける。


 葦原に着地したらしいタカさん。


 ここからだと、枯れた葦が邪魔で、その姿が見えない。


「左っ!」


 今度は、方菜(かたな)ちゃんが、叫ぶ。


 その声の通り。


 葦原の、左側へタカさんが飛び立つ。


 もちろん、捕捉(エイム)して、シャッター連打。


 タカさんは、そのまま、左方面へ飛び去るではなく、旋回して、島の中へ。


「入ったっ!」


 島に残る、青々とした樹々の間へ消える、タカさん。


 いや、消えては、居ない。


 樹々の間、薄暗い、枝の上。


 いらっしゃいますね。


 カメラのダイヤルを回して、シャッタースピードを落として、露出を上げて、明るくして。


 ファインダーに眼を移して見ると。


「なんか捕ってますね」


 枝の上のタカさんの、その足元。


 なにやら。


「何やろ? ヒヨ?」

「色と大きさからして、ヒヨっぽいな」


 犠牲者は、ヒヨドリさんの、模様。


 残酷では、あるけれど。


 自然の、摂理。


 食うか、食われるか。


 食わねば、生きては行けぬ、と。


 オオタカさんの、狩り。


 あ。


 とまってくれたので、ファインダーで拡大してお顔を確認したらば。


 やっぱり、オオタカさん男子、でした。


 かっけー。


 そんなオオタカさんの狩りの模様。


 昨今、なかなか、見るも、叶わず。


「めっちゃ久しぶりやなー」


 方菜ちゃんと思いきや。


 ちょっと興奮気味の、カワサキさん。


 関西弁、出てまんがな?


「ええ、すごく久しぶりですわね」


「もう何年も見てへンで、こンなン」


 こっちの関西弁は、ネイティブ方菜ちゃん。


「せやねー、久しぶりやねー」


 と。


 ついつい。


 方菜ちゃんとカワサキさん、それに蘭先輩のお祖母さんの涼子さんの関西弁が、移ってしまった、わたしも。


 鳴り響いていたカメラのシャッター音も、落ち着いて。


 カメラマンさんたちの興奮も、やや落ち着いて。


 樹上のオオタカさんを、見守る。


 うわぁ……。


 お食事中の、タカさん。


 ひぃ。


 これは、やっぱり、慣れないわね……。


 うぅ。


「ほンで、カワサキはン」


 そんな中、方菜ちゃん、カメラのファインダーを覗きつつ、声だけで。


「ん?」


 カワサキさんも、同じように声だけで。


「返事、どないすン(どうするの)?」


「あ」


 はい。


 思い出しましたね。


 オオタカさんもだけど。


 そっちも、ね?


 カワサキさん?





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