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親愛なる一番星へ
1年後。気持ちの良い風が優しく頬を撫でる夏の夜。
私は今、昨年と同じ場所に1人で立っている。
海さんのライブ後、私はピアニストとしての活動を開始した。
とてもありがたいことに、海さんが関係者の方に推薦してくれたのだ。
自分自身の本当の音を思い出すきっかけをくれた奏太や海さんに、
感謝してもしきれない。
そして今日は、記念すべき初のソロコンサートだ。
諦めなくて良かった。
今もピアノが好きだという自分の気持ちに素直になれて良かった。
これからもっと頑張ろう。
改めて、自ら歩むと決心した道への想いを胸に、凜と構えるピアノの前に向かう。
「それでは聴いてください。」
ステージの幕が穏やかに開く。
雲が流れ、はっきりとした光を放ち始めた満月の隣で、一番星が見守るように力強く輝いていた。