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願い

(かい)から全部聞いたみたいだね。」


いろいろ考えながら店を出ると、複雑な表情をした奏太の姿があった。

私は奏太に駆け寄り、本心をさらけ出さずにはいられなかった。


「奏太と再会できたのが、あのしきたりのおかげだなんて信じたくないよ…。」

「ごめん、ごめんな。音羽に悲しい顔させてばっかだな…。音羽を元気づけたくて来たのに…。」


そう言って奏太は、優しく私を包み込むように抱き寄せた。


「俺からの最後のお願い。あいつのライブで俺の曲を弾いて。海はああ見えて、世界で活躍するアーティストだ。2年前新人賞をとったあの海だ。作曲家になった俺は海と出会ってから、あいつの曲を死ぬまで作ってた。楽譜みればわかる。それに、音羽のピアノが本物なのは俺が誰より知ってる。だから心配することは何もない。」


心臓が高鳴りすぎてどうにかなりそうだ。

海は世界最高峰の音楽の祭典で新人賞をとった人だ。

顔を見せることなく、優しくて芯の通った歌声と淡く儚さを持ち合わせた楽曲をリンクさせ、聴いた人を虜にしてしまう。

奏太が彼の作曲家だったことも驚きだが、そんなすごい人の舞台に私なんかが立って良いのか。


「生きている時じゃなきゃ自分の気持ちのままに進めない。死んだら、ああしたい、こうしたいって願ってもできないんだよ。…音羽に逢いたいって思っても、どんなに願っても、これが最後なんだ。」


奏太の言葉に重みが増していくのがわかる。

自分の心も、大きく波打っていく。


「でも、音羽は違う。自分次第でこれから何でもできる。親がどう思おうが、音羽の人生の主人公は音羽なんだ。自由に羽ばたく権利がある。」


耳を澄ませれば、自分にとって何が大切かを教えてくれる、数々の言葉が降り注ぐ。


「生きている限り未来は無限大なんだ。だから自信を持って素直になれ。そんで、思いっきり今を楽しめ!」


そして、自分自身でいることを許してくれる優しい声にはっとする。

私は奏太の眼差しと言葉に勇気をもらい、挑戦する覚悟を決めた。


「わかった。私頑張ってみる。」 

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