第一話・防衛出動待機命令
2038年 3月30日 韓国外交部から日本政府に対し、ある要求が突きつけられた。
【1・先月可決され、即日施行された対馬島韓国編入法に基づき、日本政府は対馬島の全住民を速やかに退去させ、統治権を韓国政府へ即時移行すること】
【2・日本政府は以上を実行した上で、韓国に対し不当に行っている制裁を即座に解除する事、また、これまでの韓国政府への非礼、並びに対馬島を不法に占拠し続けたことに対し、謝罪と賠償を行うこと】
【3・賠償額はアメリカドルで10億ドル相当とする】
【4・以上の要求が受け入れられない場合、在韓日本大使館の接収、並びに対馬島の韓国への強制編入のための措置を実行し、対馬島の不法居住者に対して相応の罰則を持って応じる用意がある、また、回答期限は1週間とする】
これらの要求が突きつけられた日本政府は、在日韓国人、とりわけ特別永住許可を受けている者の許可の取り消し、全在日韓国、朝鮮人の強制送還措置の実行、在韓邦人への即時帰国命令を発令した。
更に、在日韓国企業の資産凍結についての検討を開始するに至る。
強制送還措置については、法的根拠として2030年の第4次藤堂内閣により、武力攻撃事態における国内治安維持への対処を目的に制定された【国内の治安維持に置ける、騒乱、暴動等の治安維持妨害行為を行う可能性が高いと判断される外国人の強制収容、強制送還に関する法律】を根拠として、実行に移された。
更に、内閣は、在韓邦人救出の必要性が出てくる可能性を考慮し、水陸機動団、第一、第二(2031年創設)空挺団、中央即応連隊に出動準備を行わせると共に、韓国政府が対馬への侵攻を匂わせていることから、防衛大臣が総理と相談し、海上警備行動を発令し、海上自衛隊初の正規空母(海自では固定翼機運用型多目的大型護衛艦と呼ぶ)を旗艦とする第五護衛隊群を日本海に派遣、警戒監視の強化をはかった。
1週間の期間のうちに日本が行ったのはこれだけではなく、アメリカをはじめとする西側諸国や中国、ロシアとの調整、根回しと、日韓開戦となった場合の邦人救出、保護に関する米軍との調整を行っていた。
つまり、場合によっては日韓開戦=国連軍対韓国軍対北朝鮮軍となる可能性すら出てきたのである。
因みに中国、ロシアであるが、中国はあっちへ行ったりこっちへ行ったりとして正直鬱陶しいアホを日本が片付けてくれるなら、自分は苦労ぜず、さらに朝鮮半島を自身の傀儡国家が統一し利権が舞い込むので、歓迎であった。
あとは、南沙諸島や第一列島線などへこれ以上手を出すには、そして、いずれ日本とことを構えるにしても、日本の力を見極めるにもちょうど良いし、出来れば多少なりとも疲弊してくれた方が都合が良いという考えもあった。
ロシアに関しては、中国に出し抜かれたり、他国との紛争が頻発したりと経済的に混乱してきており、そこに日本が漬け込んで北方四島の返還と平和条約締結を経済援助や、技術支援などをチラつかせて持ちかけてきたりと言う感じで、日本に喧嘩を売ると経済が死ぬが、売らなくても経済はヤバいのは変わらず、というか、国内の安定化しないととにかくヤバい状況で、去勢を張る以外に特に何も出来ないと言う状況になっていた。
そんな国際情勢の中、2038年4月2日 深夜0時 韓国海軍の最新鋭イージス艦および韓国海兵隊数個師団を乗せた揚陸艦を含めた大規模な艦隊が韓国の釜山港に集結し出港準備に入っているとの情報が日本政府に入る。
諸外国へは、自国内での演習の為と発表していたが、明らかに対馬への侵攻を意図していた。
ここに来て、総理大臣は閣議を招集。
韓国軍の対馬への侵攻は確実と閣議決定し、陸、海、空の全自衛隊に戦後初の防衛出動待機命令が発令された。
『我が日本政府は、忍耐に忍耐を重ね韓国政府と接して参りました。
韓国政府が過ちを認めることと、国として最低限の常識を持ち、そして常識的な判断をしてくれる事を期待してきました。
結果、彼らは国際司法裁判所への提訴にも応じずに我が国が単独提訴という形となり、我が国の哨戒機が撃墜された事案に対して韓国政府から真面目な回答は一切有りませんでした。
そして先日、対馬を韓国へ強制編入する用意があると韓国政府より通達があり、我が国としては、対馬及び竹島は我が国固有の領土で有ると説明するも受け入れられず、ついには対馬住民を犯罪者として扱うと言う趣旨の発言が韓国側よりあり、韓国釜山港に韓国海軍艦隊の対馬侵攻を意図したと思われる出港準備の兆候が見られ、閣議を開きました。
結果、対馬侵攻は確実と閣議決定し、私は戦後初の、そして2034年の憲法改正後初となる重大な決定をいたしました。
先程、3時間前の午前4時28分をもって、陸、海、空の全自衛隊に対し、防衛出動待機命令を発令、韓国軍の対馬侵攻が確認され次第、即時防衛出動へ移行する旨を全自衛隊へ下達致しました。
国会承認については、憲法の緊急事態条項に則り緊急国会招集を発令、即時採決を行い、正式発令は午前6時50分となります。
国民の皆様におかれましては、政府、自衛隊の活動に関して理解とご協力をお願いします。
自衛隊の防衛出動などについては後ほど詳しい説明が報道にて行われますので、其方をお待ちください。
私は日本国内閣総理大臣として、この決断をしなければならなかった事を非常に残念に思うと共に……この決断により生まれた如何なる犠牲も私の責任の元の犠牲であるとの、余りに重い責任ですが、これに絶対に折れないこと、そして、決して…決して譲歩はせず、必ず、ふざけた理由でこの国に戦争を仕掛けてきた報いを受けさせる事を国民の皆様に約束いたします】
2038年4月2日内閣総理大臣堂島猛の防衛出動待機命令に関する会見