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追い風参考記録

 

 そして試験が終わり……私は基礎トレと、スタート練習だけで……大会に望む事になった。


 学校で一切走る事が無かった私を心配する周囲、そしてなにか微妙な顔で私を見守る部長のつかさ。


 でも誰よりも一番心配しているのは他でもない私、自分自身だった。そしてその心配は現実の物となる。


 大会の1次予選は2位、2次予選は3位だったがタイムに救われた……。

 私は準決勝に進めたものの、タイムは自己記録よりもコンマ5秒も遅かった。


「あああああ、あいつに、やっぱり……騙されたああああ!」

 スタートは良かったものの、走りはバラバラ、もう今までどう走ってきたかもわからない程、酷い状態……。


 私は見に来ると言っていた先輩の姿をスタンドから探す。

 先輩はサングラスにマスクという怪しい恰好でスタンドにいた。


 いや、杖持ってる時点でわかるから、と突っ込む間もなく先輩を睨み付けると、先輩は気付かれた事に驚く様子もなく外を指差す。


 どうでもいいけど、怪しい格好をした二人……逆に目立っている、目立ちすぎている。 そして、先輩の隣にいるサングラスの女は誰? いや、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。


 私は競技場から出ると、先輩の元に駆け寄った。


「やっぱり駄目だったじゃないですかああああ、どうしてくれるんです!?」


「そう? ああ、言い忘れてた、準決ではスタートの手の位置を後10cmくらい広げてスタートしてね」


「10cmって、いやそうじゃなくて」


「じゃあ、頑張ってね」

 注目されない様に、キョロキョロしながら先輩は私にそう言うと、こそこそとスタンドに戻っていく。


「ちょっと先輩?!」


「あ、そうだ、後一つ」


「え?」


「笑顔だよ、笑顔」


「笑顔?」

 先輩は私に振り返ると人差し指を口元に添え、口角を上げ歯を見せニッと笑う。


「そう、楽しく走る、それが最も必要な事だよ……走れる喜び、それを忘れないで……」

 先輩は片方の手で杖を軽く持ち上げ、私にそう言った。

 僕の分まで走ってと、そんな事を言われた気がした。


 仕方ない今さら後戻りは出来ない。

 私は全てを諦め……準決勝に向けてウォーミングアップを開始した。


 そして準決勝、最終コール(スタート前に集合してゼッケンを確認する)の後にライバルの葵が私に駆け寄って来た。

 茶髪のベリーショート、男の子のような容姿のサッカー少女、私のライバル、去年の2年生の部の決勝で私を完璧に破って1位だった、木本 葵が笑顔で私を見つめる。


「ヤッホー、残念、決勝まで勝負はお預けだねえ」


「そうだね」


「ギリギリだったけど、大丈夫?」


「どうだろう」


「私は絶好調、ひょっとしたら全国の標準出せるかも、まあ、全国自体興味無いんだけど箔がつくから出したいんだよねえ」


「そうだね……」


「あははは、じゃあ、決勝でね」


「あ、うん」

 軽やかに走り去って行く彼女を見て、私はメラメラと闘志に火がつく。

 悔しい、悔しい……タイムって、私は相手じゃないって事? 

 ううううう、悔しい……。



 時刻なり、そんな思いで私は準決勝のスタート位置についた。


 8レーン一番外側……予選ギリギリ通過の私、ここから3人とタイムで2人、が決勝に残る。


 私は先輩に言われ通り、手の幅を10cm広げって、は?

 数センチの違いでも気になるのに、10cmも幅を広げるなんて……。

 今更ながらに思った……こんな体勢でスタートなんて出来るわけない。


 私は手の幅を戻そうって、そう思った矢先、スターターの『セット』の声が。


 間に合わない……もうこのまま行くしかない。


 腰を上げるけど、いつもよりも上がらない、身体は前のめりになり制止するのに精一杯。


『パン!』

 ピストルの音、練習ソフトとスタート練の通り、完璧に身体が反応する。

 でも反応し過ぎだって、スタートした瞬間そう思った。


「こ、転ぶ!」

 練習の時よりも低い姿勢でのスタート、あり得ないくらいに飛び出てしまう。


 自分の身体がコントロール出来ない!


「え?!」

 でも、転ばなかった……筋トレの成果か? スタート練の成果か? 私の身体は絶妙にバランスを保ち尚且つ足が低い姿勢でも前に出る。


 え? え? つんのめりそうになりながらも、私は完璧に、飛び出す様にスタートを切ると、誰よりも早く30mの位置に到達する。


『笑顔だよ』

 その時、先輩の声が聞こえる。その声の通り先頭を走る私は笑った。

 同時に身体の力が抜ける。惰性で走ってる様な感覚に陥る。


「いいの? これでいいの?」

 走りながらスタンドにいる先輩をチラっと見ると、先輩は心配そうに私を見ていた。

 拳を握りしめ、私を見てる。

 なんだよ、あんなに自信満々そうに言ってたのに、心配してんじゃん。


 ゴールは目の前、走りは無茶苦茶、意味わかんない……わかんないけど……。


 楽しい! それだけはわかった。

 走るって……こんなに楽しいんだ。



 私は準決勝を1着でゴールした。


 タイムは残念ながら追い風参考記録となるも、12秒50、予選よりも1秒以上縮め、全国標準記録を上回ってゴールした。



恋愛物です!( ゜皿゜)

ラブコメですう!(笑)|д゜)チラッ


なのでこの物語はフィクションです。

陸上に関して、実際の大会、練習方法等、すべて作者の思い込み、ファンタジーの世界ですので、決して突っ込まない様お願い致します。。゜(゜´Д`゜)゜。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] よくもまぁめちゃくちゃな走りで1秒もタイム削れる。 100mのタイムなんて、数十mm秒の単位でしょうに。 陸上は胸で着順決めるから、胸が大きい人が有利 [一言] 少なくとも、79話はス…
[一言] あらら、それはまだ新しいです。私はかなりのマイナー漫画が好きで超人ロックの連載前の読み切り短編作品だったと思う。もしかしたら昭和三十年代かも(苦笑) 何かで読んで『そんなメーカーねぇよ』と妙…
[一言] 今の世の中、マウントとりたがる人が多いですからね(苦笑) テレビとかだとツッコミ入れても反応が薄いからこういう小説とかに重箱の隅をつつく人増えましたよね(苦笑) 私はおっさんなので昭和四十年…
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