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どう……すればいいの……


 私は慌てる様に、でもそんな素振りは彼に見せない様に急いでシャワーを浴びる。

 本当は入りたくなかった、今は彼を一人にはしたくない。

一人ではいかないって、約束したから、多分大丈夫だとは思うけど……外の様子を伺いながら、シャワーを浴びる。


 本当に最悪な事態になった。

 まさか、彼の妹がそこまで私を憎んでいたとは思いもしなかった。


 そして彼がそこまで妹さんに依存していたとは思わなかった。


 私は会うべきじゃ、彼の元に来るべきじゃなかったのだろうか?

 予想だにしなかった事態に、私は困惑していた。


 とりあえず落ち着かなくては、余裕の態度で接しなくては、そう思いながら冷たいシャワーを被り頭を冷やす。


 身体がブルブルと震える。この震えはシャワーの冷たさでだってと、自分を誤魔化す。


「──どうしよう……どうすればいい?」

 考えろ、考えるんだ!

 彼の希望、彼の夢、彼の生きがい。

 妹さんに助けを……ダメ、私が連絡すれば益々彼女はお兄さんを、彼を拒絶する。


 私の言う事を妹さんは絶対に信じない……信じようとはしないだろう。


 かといって、彼が自ら妹さんに連絡はしないだろう、スマホの電源も入れようとしない。


「──死ぬなんて……駄目……止めないと、絶対に止めないと」

 でも、知っている、 ここで無理に止めれば益々彼は死を選んでしまう。

 益々彼を追い込んでしまう。

 

 だから、私が一緒にって……仲間だって思わせれば、彼は一人では行こうとはしないだろうって、咄嗟にそう思った。

 

 ううん、仲間って言うのは嘘じゃない……私だってチックが居なかったら、そして彼の事が無かったら、今ごろは……。


 彼の気持ちは良くわかる……痛い程に……私も誰もいなかった。ずっと一人だった。

 生まれた時からママは超有名人……私は最初名前さえ無かった。

 大女優【白浜 縁】の娘……それが私の名前だった。


 だから自分を見つけて欲しくて、自分の名前を知って欲しくて、アイドルのオーディションを受けた。


 でも、ママがそれを知らない筈が無かった。 

 折角できた仲間は解散で居なくなり、落ち込んだ私をママはお金さえ、仕事さえ与えて置けば、自分の目の届く所に置いておけば良いだろうって……そう思って私を芸能界にいさせた。

 

 でも、そんなんだから、ママの庇護の元でいる私を皆牽制した。

 行く先々の現場で私には誰も話しかけてこなかった。


 ママとそしてパパの威光が強すぎて、私は触らぬ神に祟りなしと、誰も近寄って来なかった。


 ずっと一人だって、私はこのままずっと一人ぼっちだって……そう思い生きる気力を無くして行った。


 だから私はチックに依存した……そして、彼に依存した。


 でもチックはいずれ死んでしまう……悲しいけど犬の寿命は短い。

 もしチックが居なくなったら、私には彼しか居なくなる。

 彼もチックも居なくなったら……私はこの先どうやって生きて行けばいいの?


 彼が私に振り向いてくれなくてもいい、彼が誰かを好きになって、そして彼を大事に思ってくれる人が現れたなら、それでもいい。

 

 生きていてさえ居てくれれば……でも、今、彼は死を選ぼうとしている。

 駄目それだけは……。


 彼をここまで追い込んだのは私、全部私のせい。


「ふ、く、ふ、ふえええぇぇん」

 限界だった……急いで浴室に入って正解だった。

 泣くわけにはいかない、絶対に彼の前では泣いてはいけない……。

 それは完全に裏切りだから……一緒に行くって言った私が彼の前で泣いたりしたら……彼はもう私を信用しない。


 死にたく無いんじゃない! 彼に死んで欲しくないだけ……彼に幸せになって欲しいだけ。


 好きな人に……幸せになって欲しいだけ。


 とりあえず買い物や観光、北海道なら気分も変わる、美味しい物も一杯ある。

 何より移動に時間がかかる……時間が稼げる。


 なんとかして彼を思いとどまらせる。


 なんとしても彼の希望を見つける……。


 でも、それでも……もし彼が終わりを選ぶのなら……もしそれが彼にとって一番の願いなら……。


 その時は……私も一緒に……彼と……。


 それが私に出来る彼への……最後の……贖罪だから。



 



さあ、いよいよ佳境に(笑)


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是非とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] あえて言おう。死ぬことは、美学であると 自分を綺麗なままで、死なせ後世に、なぜ死んだと疑問を抱かせてこそであると
[良い点] 楽しく読んでます [一言] ふと、 陸上関係者から恨まれる彼女 アイドルオタクから恨まれる彼氏 あれお似合いじゃないと思いまして、感想書きました。
[良い点] 死出の道行で不自然なまでに明るかった円の隠していた表情と想いを知る回でした。 いいタイミングでいい内容の話を入れてきましたね。 今後の展開も楽しみです。
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