8.曇った瞳で何を見る
アッシュム王国、キャロライン視点です。
王宮の庭園で優雅にお茶を楽しんでいたキャロラインはカップに口をつけ、ひっそりと笑んでいた。
邪魔なリアナを排し、念願かなって第一皇子を手に入れた喜びに打ち震えている。リアナが首を落とされてから、ずっと。
大聖女だと名乗り、リアナに神子の力を見せてみろと言ったのは、キャロラインに他ならない。
キャロラインは、侯爵家令嬢であり、聖女でもある。
神子と言う存在が現れなければ、第一皇子の婚約者は彼女のはずだった。
プライドが高く、周りからちやほやされてきたキャロラインには耐え難い屈辱だった。
自分こそが国母に相応しいと信じて疑わずに生きていた最中、ぽっと出た平民風情に席を奪われた事が許せずにいた。
あれこれと嫌がらせをし、手回しをし、リアナに魔法の使い方を教えない様にした。
それでも、神子であれば勝手に力を使いこなせるかも知れないと怯えてもいた。リアナが真実、神子であれば、神子に嫌がらせをしたと言う事実はキャロラインにとって足枷にしかならない。
運はキャロラインに味方をした。
キャロラインはリアナを排す事に成功し、無事望んだものを手に入れた。
笑わずにいれるだろうか。
リアナが処刑されてから、キャロラインに取り入ろうとする者に囲まれて、キャロラインは愉悦に浸っていた。
(そう、これが正しいのよ!)
リアナがいた頃は、キャロラインの周りにはここまで人はいなかった。
侯爵家令嬢、聖女と言えど、第一皇子の婚約者でもない。
キャロラインにはそれが耐えられなかった。
第一皇子、アレキサンダーの婚約者になって、煌びやかな宝石やドレスをたんまり貰った。
アレキサンダーは、キャロラインの様な派手な女性を好むらしい。
眩い金髪に深い海色の瞳は目を引く。
アレキサンダーの贈った宝石やドレスはキャロラインの美しさを引き立てた。
逆にリアナは、派手な装いを好まず、簡素な服ばかり身に纏っていた。
それはアレキサンダーの気に召さず、地味な女だと次第に興味を失ってずっと放置していた。
たまに会ってもアレキサンダーがリアナに声を掛ける事はなかった。
その様子はキャロラインの溜飲を下げていた。
ざまあみろ、そう心の中で悪態を吐いていた。
平民風情が調子に乗って第一皇子の婚約者になどなるからだ、と。
キャロラインは、神子と言う存在を全く信じていなかった。
聖女に選ばれた自分こそが国母に相応しいのだと信じて疑わずに、生きていた。
だから、リアナを貶めて首が断たれた時、自分は正しいことをしたのだと。
国を騙す悪女を排した英雄の様な心持ちだった。
そして、その傲りは後に国を傾ける事になるなど、キャロラインは全く気が付いていなかった。
仕事や私生活がちょっとごたついて暫く更新が滞っておりました。




