75.終止符は打たれた
廊下を進み、階段を登り、また廊下を進む。
掃除の手が行き届いておらず、端の方には埃が固まってへばりついているのが見える。
すっかり人が居なくなった城はやけに静かだ。突き当たりの部屋の前に騎士が二人、扉を護るように立っていたが、リアナとジャンを見つけると、諦めたように扉に手を掛ける。
「神子様とお見受けいたします。この先、国王陛下と王妃殿下がお待ちです」
「ありがとう、開けて頂戴」
小さく頷いてリアナは扉が開かれるのを待つ。
カーテンが閉ざされ、暫く閉め切っていたのであろう部屋の中は少し埃っぽい。
ジャンが先を歩き、リアナはゆっくりと足を踏み入れる。二人の体が部屋の中に入ると、後ろで扉が閉められた。
大きな寝台の上、やつれて痩せ細った男女の姿が見えた。
背中に枕を敷き詰め、なんとか座っている様だ。リアナと目が合うと、申し訳なさそうに目を伏せた。
「リアナ……、いや、神子様。今更謝罪をしても遅いのはわかっております」
「いいわ、それは。終わった事なの。事情は知らないし、知るつもりもないけれど、こうなってしまった一因は貴方達にもある。責任は取ってもらうわ」
寝台の上で手をついて謝ろうとした国王夫妻を手で制し、リアナは淡々と話を進める。
「統治権を神の国に返上して貰うわ。落ち着くまでは我々が管理します。その後は、この地にふさわしい人間に統治して貰うことになるわ」
「はい……、それが、神子様の思し召しならば」
「話が早くて助かるわ。最悪の場合、国を半壊させるしかなかったもの」
何もない様にさらっと告げられた言葉に、国王は絶句した。
幼い容姿で処刑された筈のリアナが、成長した、神子らしく神格に溢れた姿で目の前にいる時点で、彼女が冗談や嘘を言っている様には思えない。
「温情をかけてくださり……感謝いたします」
「一応母国だから」
何処か遠くを見つめるリアナの瞳に乗った感情は読めなかった。すぐに視線を国王に戻し、少し悩む素振りを見せた後、ぱちりと指を鳴らした。
光が体を包み、霧散した頃には、床に臥せる前と同じ様に活力に漲っていたのだった。
「ありがとうございます」
「あの偽聖女の力と、毒を仕込まれてたのね。魔力を回収した頃に起き上がれる様になったと思うけれど、毒は少しばかり残ってたみたいね」
ふぅ、と小さく息を吐いて、用事は済んだとばかりにリアナはくるりと背中を向けた。
後の事、よろしくね、と言い残し、ジャンにエスコートしてもらい、部屋を後にした。
国王は寝過ぎて凝り固まった体を伸ばして、王妃にぎこちなく微笑んだ。
「さて、最後の仕事が溜まっている。頑張ろう」
「えぇ、そうね」
自分達の息子を止められなかった。愚かに育ててしまった。
何処で間違えてしまったのだろうか。
答えがわかったところで、今更どうしようもないのだった。
「この国も、終わりか」
国王の呟きは虚しく響いた。
色々調べつつ書いてはいるのですが、本当に本当に敬語が、苦手で!
敬語というか謙譲語になるんですかね。色々おかしいかも知れないです。すみません。勉強します。




