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74.手を繋いで


もういいか、とリアナはアレキサンダーから離れる。ぶつぶつと呪詛めいた言葉を垂れ流しているアレキサンダーに近寄るものはいなかった。

また、懲りずにリアナに飛びかかろうとしていたキャロラインはジャンによって地面に押さえつけられていた。


「ジャン、ありがとう」

「気にしないで。君を害するものから僕が守るよ」


ありがとう、ともう一度呟いて、リアナはゆっくりと時間をかけてこの場にいる騎士達を見渡す。

じりじりと壁際に寄っていく様に、随分と怯えられてしまったものだと思う。


それもそうだろう。二度、神子に対し処刑を行った形になる。

処刑を起こしてから、国は衰退の一途を辿り、国自体が無くなろうとしている。


「国王の部屋はどこかしら」


リアナの問いに誰も答えない。誰も目を合わせない。溜息が溢れた。


「しらみつぶしに探すしかないかしら。ジャン、手伝ってくれる?」

「えっと……」


ジャンは暴れ続けるキャロラインを抑えるのに必死で、リアナの元に行く事は叶わない。

手を離したらまたキャロラインはリアナに襲いかかるに違いない。縄でもあれば、とは思うが用意してきていないのでジャン自身で押さえつけておく必要がある。

パチン、とリアナが指を鳴らすと、連動しているみたいにキャロラインの意識が途絶えた。がくりと床に倒れ伏している。


「暫くは大丈夫。行きましょう」


リアナが手を伸ばしてきたので、ジャンはそっと握った。

連れ立って謁見の間を出て、廊下を歩く。リアナの素足がぺたぺたと間抜けな音を立てる。


誰もが二人を見ては怯え、逃げ出したり、その場に立ち尽くしたり、出来る限り壁際に寄って距離を取ろうとした。


二人は、異質だった。

リアナの首にはぐるりと一瞬回った傷跡があり、身に纏った白い布は血でまだらに染まっている。髪の毛も首辺りから伸びている部分は血に染まってしまったかのように黒い。

ジャンはジャンで、首に傷跡こそないものの、首辺りは血で汚れている。


「なんとなくわかっているだろうけど、ジャンはもう人間じゃないの」

「うん、君と同じ……とはちょっと違うね。今までと何かが違うのはわかるし、多分君と同じ力が使えるのもなんとなくわかる」


人々が勝手に距離を取ってくれるので、誰も聞き耳立てないだろうと思い、リアナは切り出した。

自分の都合で巻き込んでしまった謝罪を少しでも早くしたかった。


「本当、ごめんなさい。ジャンにはジャンの人生を全うして欲しかったけど、貴方の命が散るのを見て、我慢できなかった」

「気にしないで。それにこれで君とずっと一緒にいれるんでしょ?君を遺して僕が往く事もない」


あまりにも何でもない風にジャンが言うので、リアナは開きかけた口を閉じた。

謝罪ではない。彼にかけるべき言葉は。


「ありがとう、ジャン」


本当に、彼に出逢えてよかった。

歯の奥を噛み締め、震えそうになる唇を抑える。

処刑され、魔獣の森に捨てられ。ジャンに拾われて。

生きていた間に良い事は少なかったけれど、ジャンと出逢って、息を吹き返してからはとても、充実したものだった。

握り合った温もりを離したくなくて、リアナは力を入れ直したのだった。

神子は人間を眷属として召しあげる力を持っています。どこかでねじ込めそうな気がしなかったのでここに記載させてもらいます。

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