71.そして神子は動き出す
リアナの姿はとても目立つ。
メリーとライルを連れ、適当な空き部屋に入り込んで、一息つく。
神子が帰ってきたと城内は俄に騒がしくなりつつある状態だ。全員が味方なら良いが、そうはいかないだろう。
神子の癖に簡単に処刑された挙句、この国に災いを齎したと解釈する輩もいるかも知れない。
手早く誰も部屋に入って来れぬ様に魔法を行使する。
この世にいる希少な魔法使いでも、神子の力には遠く及ばない。誰かが入ってくることは叶わない。
「これから、どうするの?」
「私は王太子と大聖女を止めに行くわ」
扉から誰か入ってこないかとソワソワしている様子のメリーとライルは立ったまま。
リアナとジャンは部屋にあった椅子に腰掛けている。
魔法で誰も入ってこれないようにしていると何回か説明すると、ようやく二人も恐る恐るではあるが近くの椅子に腰を下ろした。
それで、とリアナは言いにくそうに、三人へ順番に視線を向けていく。
「出来れば、ここで待っていて欲しいの。勿論誰も入ってこれないように魔法はかけていくし安全は守るわ」
「待ってリアナ。僕は行くよ。何の為にここまで来たと思ってるの?」
メリーとライルは顔を見合わせて、少しだけほっとしたように肩の力を抜いた。
対照的にジャンは立ち上がり、リアナに反論する。リアナは怒られた子犬のように小さくなって見せるが、ジャンは止まらない。
「何を心配しているの、リアナ。僕はこれでもそれなりに腕は立つもりだよ」
「わかってる。でも、胸騒ぎがするの」
「でもリアナ……」
じっと見つめてくる瞳に、リアナは狼狽える。暫く視線を彷徨わせ、唸った後、長く息を吐いた。
「ねぇ、ジャン。いのちはひとつきりなの。なにかあっても、後悔しないと言えるの?」
「自分の身は自分で守るよ。それに、リアナのことも側で守りたい。必要ないかもしれないけど」
「どうなるのか、わからないのよ。私はまた死ぬかも知れないし」
「だからこそそばに居させてよ」
話は堂々巡りだ。
お互い折れるつもりはない様だ。言い合いを繰り返し、結局折れたのはリアナの方だった。
「わかった、ジャンは一緒に来て。私の側から離れないで。でも無理もしないで。私は死んでも生き返れる」
「リアナ……」
「いい? 自分を最優先して」
しつこい程の念押しに、ジャンは心配性だな、と思いつつも頷く。リアナはまだ何か言いたげにジャンを見つめていたが、何かを言うことはなかった。
「じゃあ、行ってくる。また会いましょうね、メリー、ライル」
優しく微笑みかける少女は光に包まれ、次の瞬間には赤く長い髪を持つ女性の姿に変わった。
ただ、首くらいの長さから赤い髪は黒っぽく染まり、首にはぐるりと一周囲む傷跡が残っている。
たっぷりとした布を体に巻いただけにも見える服は、絵画で見るような女神にも思えた。
「またね」
きっと、リアナが大人になった姿なのだろう。神々しい姿は神子の名を戴くに相応しかった。
メリーとライルは返事もできないまま、ジャンにエスコートされて部屋を出ていくリアナを見送ることしか出来なかった。
せめて週一で更新したいです。ここで宣言しておけば逃げ場なくなると思いました。
頑張ります…。だいぶ物語も終わりに近づいてきました。




