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69.紙の城


掃除が行き届いておらず、端が薄汚れている廊下をキャロラインは突き進む。

ドレスの裾を蹴り上げ、荒々しくヒールを打ち鳴らす。


かつての彼女からは想像も出来ないほど、粗野な言動だ。

扇を開いて軽く首を傾げ、緩やかに微笑んでいた頃の面影はまるでない。布の擦れる音しか聞こえない程、繊細で緻密だった所作も鳴りを潜めている。


「アレク様、お伝えしたい事がございますわ」

「なんだ、俺は忙しいんだ! 嫌がらせのつもりか全ての仕事が俺に集まってくる。これも全てアイツのせいだ!」

「アレク様。その元凶が戻ってきております」


喚き散らし、机の上や机の周りに築かれた紙の山を崩壊させたアレキサンダーは、顔を上げ、うっそりと笑った。

座っていた椅子を蹴り飛ばし、散らばった紙を踏みながらキャロラインに近づくと荒々しく抱き寄せる。


「よく教えてくれた、キャリー。これで地獄も終わりだ」

「ふふ、諸悪の根源がのこのこ戻ってくるなんて。どんな手を使ったか知りませんけど、再度殺してしまえばいいのよ」


仄暗い光が目に浮かび、二人はどちらからともなく、顔を近づける。

重なり合う唇は次第に深くなり水音が響く。


硬く閉ざされた窓には、隙間なくぴしりとカーテンが閉められていた。


二人きり、頼れるのは互いだけ。

もつれ合う様に側の三人掛けソファーに倒れ込み、絡み合う。


「愛していますわ、アレク様」

「愛している、キャリー。一生離さない」


いや、離れられない。口には出さず、アレキサンダーは乾いた笑みを飲み込んだ。

鬱蒼と笑う、と書いていたのをうっそりと笑う、に変更しました。

他にもあると思うので見つけ次第修正していきます。

ご指摘ありがとうございました!

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