68.光が強いほど闇は濃くなる
振り下ろされた拳は、容易くリアナの体を吹き飛ばした。
同年代の少女と比べても小さなリアナは、キャロラインの力でも簡単に倒せてしまう。
それに、キャロラインは無意識ではあるが魔法で力を強化していた。
大聖女の名を戴くキャロラインの蛮行にも、周りはもう慣れた様子だ。誰もリアナの心配をし駆け寄る事もない。
庇えば、次は自分に火の粉が降りかかるのが明白だからだ。
だが、ジャンだけは違った。
床に這いつくばるリアナの体を起こし、受け止められなかったことを謝る。
「ごめん、間に合わなくて」
「いいのよ、これ茶番だし」
対してリアナはジャンにしか聞こえぬ小さな声で、手助けは不要だったと言外に告げた。
「私を馬鹿にして、タダで済むとでも!? もう一度、その首を落としてやる!」
「ご遠慮願いたいですね」
「何をしているの! あの小娘を捕らえて!」
鼓膜に突き刺さりそうな金切声で叫ぶキャロラインには四方から冷たい視線が注がれている。もう気が付かないのだろう。狭まった視界には映らない。前しか見えていないのだ。
捕らえろ、と言われても。
騎士達はぎこちなく顔を見合わせた。
大聖女は少女の名を叫んだ。処刑されたはずの神子の名を。
そして再度首を落としてやるとも。
神を愚弄し、現状を生み出したのだとすれば、再度同じ過ちを繰り返せば何が起きるのだろうか。
すでに天罰は下されていると言っても過言ではない状況、これ以上の悪化は御免被りたいところである。
「大聖女様、彼女が神子リアナ様なのであれば、私達は捕らえることなど出来ません」
恐る恐る意見を騎士の一人が述べる。
ぐりん、と高速で振り返った女は美しいと言われた面影などなく、悍ましい表情を浮かべていた。
「私に、逆らうとでも?」
キャロラインは騎士を掴み、鬱蒼と微笑んだ。仄かに彼女の体が光を帯びる。
思わず目を奪われる光景だが、齎されるのは奇跡ではなく、悲劇。
「やめなさい」
キャロラインと騎士の間に割り込み、リアナは大聖女を睨みつける。
そっと騎士の体を押し、下がらせる。
「回復魔法の悪用なんて、よく考えたわね。元気すぎても人は死ぬってね?」
「アンタが邪魔しなかったら今頃内側から破裂してたかも知れないのに」
騎士はキャロラインの言葉にぞっとして後退りした。小さな少女が割り込んで止めなければ、今頃は悶絶する間も無く死んでいただろう。
「何しに来たの、リアナ・モーヴァン。アンタは死んだ。神子じゃなかった。早く死んで。もう一回死んで。気持ちが悪いわ」
「馬鹿ね。神子だから来たんでしょう。さぁ、もう一人の馬鹿を呼んで」
冷たく言い放つリアナは、体こそ小さいが、放つ威圧は強大だった。
キャロラインは鼻を鳴らし、一人で立ち去っていった。
「自分で来なさい。そして、もう一回死んでちょうだい」
キャロラインに着いていく者は、もう誰もいなかった。
キャロラインに暴言吐かせたいだけになってる気がします。なんかしっくり来たので…。
そろそろ皇子のほうも出したいです。存在感まじでない。




