67.大聖女との対面
吸い寄せられるように、騒めきの発生源へと目を向け、リアナは硬直してしまった。
彼女にとって、因縁のあるキャロラインが護衛をぞろぞろ従えて此方に向かって来ていたのだった。
リアナの首を落とす原因を作った、大聖女。
慈悲の心を持たぬ、美しき女。
首が落ちるその瞬間、色付いた唇が悦びに歪んだのを覚えている。
ライルとメリーは床に星座をし、地面につくほど頭を下げており、ジャンもそれに倣っていた。
リアナだけがその場に崩れ落ち、座り込んだまま、呆然としている。メリーがリアナを突いたり、引っ張ったりしてくるが、ぴくりともしない。
「何様かしら、貴方」
「……!アナ!」
顔色を失ったメリーがリアナの頭を下げさせようとするが、リアナはするりと交わすと、立ち上がってキャロラインに近づいた。
冷たく見下ろしたまま、キャロラインは手の甲でリアナの横っ面を張った。
抵抗ひとつしなかったリアナの顔から眼鏡が飛んでいく。
「無礼な使用人もいたもの……ね……」
「大聖女様は、理由もなく手を上げられるのですね」
誰もが固唾を飲んで見ていた。
おおっぴらには言わないが、奇跡の力を持つとは言われているが、性根が腐っている大聖女。美しいのは見た目だけ、中身はドロドロ。
そんな大聖女に正面から食ってかかった少女がどう行動するのか、期待していた。そして、少女の命を守る為に、動くべきか悩んでいた。
神子であったとされる少女を処刑してから、第一皇子アレキサンダーと大聖女キャロラインの暴挙は悪化をしていた。
少しでも機嫌を損ねれば処刑、良くて拷問が行われた。
キャロラインが少女を捕らえて処刑することを命するかと思いきや、少女の顔を見つめて、じりじりと後ずさっていく。
「な、なんで」
「どうしました?」
後退するキャロラインを追うリアナの顔には鬱蒼とした笑みが浮かんでいる。
周りで見ている人々も、リアナの表情に背筋が凍った様だ。
「その顔、色を変えても分かるわよ……!」
「はて、誰かにそっくりなのでしょうか」
あくまでもしらを切るリアナに、キャロラインは苛立ちを覚え始める。
恐怖が苛立ちに勝り、長い爪が手のひらに食い込むほど握りしめて、振り上げる。
「リアナ・モーヴァン!」
振り下ろした拳は、リアナに向かっていた。
これから一気に話が動きます。
もうラストスパートです。




