表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/80

65.洗濯


水を張ったタライを泡が多い尽くしている。

普段ならば白いそれは、今日はうっすらと赤黒い。洗濯板で汚れた箇所を必死に擦っていたメリーは大きくため息を吐いた。


「取れないよぉ」

「血の汚れだもんね。すぐに洗ってたらまた違ったかも知れないけど」


返事を返すリアナは、ちらと手元の地に汚れた服に目を落とす。

多少は色が落ちたが、しっかりと輪っかのシミが付いている。無言で擦る。


「駄目よこれ」

「だよねぇ」


さっさと匙を投げる。

ある程度良いだろうと勝手に判断し、血の汚れが薄くなれば次に取り掛かる事にした。


もっとも、リアナの再生魔法を使えば血がつく前に再生させることは雑作もない。

けれど、使うわけにはいかない。リアナが神子だと露見すれば、事態は悪化する事だろう。


現状、処刑された神子の怨みだなんだと言われているのだ。

そこで神子は生きていました。城に戻ってきています。それもなんと、素性を隠して!

恐らく、復讐を果たしにきたのだと思われ、また吊し上げられるだけだ。


それに、手を貸したジャンにも疑いの目はかかるだろう。

隣国の騎士だと分かれば侵略の手がかりを掴みにきたスパイだと疑われても仕方がない。


完璧に落ちることのない血の汚れを大人しく洗濯板で擦るくらいしか出来ない。


手を止め、何気なく空を仰いで、リアナはぽつりと呟く。


「この後、破壊され尽くした部屋を回って掃除が待ってるわね」

「今日は残業かな……」


二人のため息が虚しく重なった。



その頃、ジャンとライルもまた必死に血の汚れと格闘していた。

擦れど擦れど、落ちない赤茶のシミ。

赤黒かったのが赤茶に薄くなっただけマシだと自らに言い聞かせ、無心に擦った。

泡は膨らむばかり。


「それにしても、本当にアナと仲がいいよな、ジャック」

「今まで離れてた分の反動かな」

「アナの反抗期が来なければ良いな」

「それは嫌だなぁ」


朗らかに笑いながら返事をしたジャンだが、服を握る力は強い。ごりごりとあるまじき音が聞こえてくる程だ。


「……なんかすまん」


藪をつついたら、蛇どころか熊が出た気分だった。御臨終しそうな服だったものにそっと目を伏せ、ライルは菩薩の如き笑みを浮かべたのだった。


ジャンがシスコンになってきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ