64.騎士団総長の溜息
グレゴリオ視点です。間話の様なものです。
開け放った窓から、風が舞い込んだ。
机の上に積み上げた書類がはらはらと風と踊るのをちらりと横目で見た。
拾い上げることも億劫で、後回しにし、グレゴリオは再び手元の書類に目を落とす。毎日毎日、よくもまぁこんなに仕事が舞い込むものだ、と事務作業に飽いたグレゴリオはあくびを噛み締める。
祖国に帰ると言ったリアナにジャンを同行させてから随分と時間が経った気がする。
実際にはまだ二週間程度ではある。
その間にも難民は増え、国境沿いの村だけには止まらなくなってきた。じわじわと多国籍の人間が増え、万引きなどの犯罪も増えてきた。
とは言え、難民全員に施しを行える訳ではなく、手の届く範囲から細々とした支援を行なってはいるものの、状況は芳しくない。
自分たちの方が大変だと訴えるものは後を絶えないからだ。
「どうにかならないものか…」
「確かに大変よねぇ」
「シム、突然現れるな」
グレゴリオの呻きにシムが返事をした。
この部屋には誰も招いていない、と苦言を呈したくもなった。相手がシムなので深くは問わない。
誰か人が来たら、彼女は何も言わずとも姿を隠すからだ。
シムが突然現れるのはいつものことなので、もうグレゴリオは気にしない事にしている。
しているが、ついつい一言言ってしまう。
「まぁ、まぁ、いいじゃない。私と貴方の仲じゃない」
「はいはい」
シムは風で飛ばされたままにされていた書類を拾って、机の上の山に戻す。
グレゴリオは山を崩してはまた別の場所に山を作る。彼なりの秩序によって築かれているが、側からみれば整理が苦手な人にも見える。
勝手に奥の棚からティーポットを出してお茶を注ぎ、自分の分だけ啜るシム。
「隣の国、もう駄目よ」
零された溜息と、さらりと告げられる言葉に、グレゴリオはゆっくりと息を吐いた。
返事は出来ない。
これからも仕事の量は減りそうになく、むしろ、今後増えるのだろうな、とグレゴリオは天井を仰いだ。
私生活で色々あってなかなか書くことが出来なくなっています。暫く落ち着くまで不定期更新に戻します。




