60.状況は悪化
結果的にいつもよりも早く洗濯物を返し終える事が出来た。
これには巻き込まれたメリーも喜んだ。
「いつも勝負したらどう?」
なんて言いだす始末。
大体同じくらいのタイミングで二組が掃除道具を仕舞っている部屋に着いた為、勝負は引き分け、持ち越しとなっている。
そして、現在。
「おいおい、なんだその掃き方は! ちゃんと隅の方まで気を付けろ、隅に埃が溜まるんだよ!」
「ならライル、上の掃除を先にして欲しかったな! 埃がどんどん落ちてくる!」
ジャンは掃き掃除、ライルは窓の拭き掃除をしていたが、途中でハタキに持ち替え、棚の埃を落とし始めたのだった。
この件に関してはジャンの勝ちだろう。なんの勝ち負けかわからないが。
「今日は兄さんの勝ちね。異論は認めないから。焦ってハタキに持ち替えたのが敗因よ」
「うんうん、まぁ、ジャックは確かに隅の掃除が甘いけど、ライルも窓の拭き方雑だしぃ。拭き跡残ってる」
リアナとメリーは雑巾で床を磨きつつ、駄目出しをしていく。
未だ火花を散らす男を放置する事に決めた。
「でもこの分だと早く終わりそうだねぇ」
「そうね」
黙々と床を磨く。
暫くすると、男陣は黙々と働く二人に申し訳ない思ったのか口論を辞めてせっせと手を動かした。
沈黙が顔を覗かせ、四人が掃除をする部屋に居座る。
だが、沈黙はすぐに退出する事になった。
西の塔は怒号と悲鳴で溢れ返る。掃除の手を止め、四人は部屋の隅に固まった。
「少し前から、たまにあるんだ」
「うん、ジャックもアナも初めてだよね。暴徒が乗り込んでくるの」
部屋からは暫く出ない方がいいかもな、とライルがぼやく。
騎士達が駐在している西の塔にわざわざ乗り込んでくるのは不思議だ。まともな判断が下せないほどになっているのだろうか。
「明日の洗濯と掃除は、大変だろうね」
瞳を濁らせ、床に視線を落とすメリーの呟きがやけに重たかった。




