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6.馬の上で仲良く


城の裾に広がる街に着く頃にはリアナは随分と落ち着いていた。

夜だと言うのに街はまだ賑わっている。喧騒の中、リアナは首を後ろに傾けた。


「夜なのに、人が多いのは、何か祭りでもあっているから?」

「いいや、いつもの事。酒を呑んだり、料理を味わったりってね」


楽しそうだ、とリアナは思った。

出来立ての料理はさぞ美味しい事だろう。リアナは小さく嗤った。


(お腹、空かないけど)


そもそも、首と胴を繋げても、それは表面的なもの。

中身はきちんと繋げたわけでは無い。何か食べたり、飲んだりしても、行き場が無い。


「夜も遅いし、ちゃんとした挨拶は明日になるかな」

「私は構わないです」


リアナはまた前を向いた。

いつだって構わない。あの国に帰らなくていいなら。


リアナに祖国の思い出はある様で無い。

生まれ育った村に帰ることは出来ないし、王宮には楽しい思い出は全くない。


村の人々は、リアナの事を恨んでいるだろう。

神子だと騙った、罪深き悪女。そして、その悪女を育てていた村。

糾弾されているだろう。


不満の捌け口に、丁度いいから。


アッシュム王国では、ここ数年、災害が頻繁に起きていた。

鎮めてくれ、と懇願された事もあるが、リアナには分からなかった。

どう鎮めればいいのかなど。


奇跡を起こすのが神子だとしたら。

首と胴が別々になって生きているよりも、災害が起きない様に願った時に奇跡を起こして欲しかった。


「私は今夜何処で過ごせばいいのかしら」

「流石に僕の部屋には入れるのはね。宿を取るよ」

「ジャンさんは?」

「寮に帰るよ」


リアナは無一文である。

ジャンに支払わせてしまうのは申し訳ない。別に野宿でも構わない。


「ジャンさん、私は野宿する」

「君ね、僕が『はいそうですか』って言うとでも思った?」


リアナはジャンに片腕で捕まえられ、馬の上で身動き出来なくなっていた。

ゆっくりと進む馬の上で、リアナはむくれている。


人の優しさに触れ、どう反応したらいいか、分からなかった。


「女の子を見捨てて帰ってきたなんて知られたら僕は総スカンさ。僕の面子のためにも、ね?」

「その言い方はズルいです」

「大人は狡いんだよ。勉強になったね」


勝ち誇った様に歯を見せて笑うジャン。

リアナは口を引き結んで眉間にシワを寄せていた。ズルい。


ジャンはどう頑張っても、成人したばかりくらいにしか見えない。


「背伸びをするにはまだまだじゃないですかねぇ」


リアナはジャンに聞こえないくらい小さな声で独りごちた。

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