57.新たな友人
アッシュム王国の使用人として潜り込んで早くも数日が経った。
今日も今日とて洗濯物を回収し、洗濯を終えた後掃除をし、掃除を終えると乾いた衣類やシーツを取り込んで畳んで元の場所に返す。
毎日、就業中も終業後も、お手洗いとお風呂と寝る時以外はずっと一緒に行動を共にしているおかげで、仲良し兄妹の印象はしっかりと付けることが出来た。
仲が良すぎて揶揄われるくらいに。
誰もが疲れた顔をしているが、寝る場所があって、ご飯も出て、突然襲われることがない城内は安心だから、と力無く笑っていた。
ある日突然現れたリアナとジャンに対しても
苦しい中、耐えて来たんだろうと同情的だ。
リアナは田舎に住んでいたが、生き別れの兄を頼って村を出たと言うことにしている。
そして兄と再会を果たし、生きていく為に城にやってきた、と。
「アナって結構小さいよね、何歳?」
休憩中、仲良くなった使用人のライルとメリーと四人で話をしていると、突然メリーからそう問われた。
メリーは金髪の癖毛を二つに結んでおり、鼻を中心にそばかすが散らばっている。青い瞳は丸く大きく、童顔を強調させる要素になっている。
「十二……、だ、よ」
「へぇ、小さいのに立派ね」
リアナは答えてから、しまった!と内心慌てた。歳を偽るのを忘れてしまった。
西の塔勤務のメリーやライルとは、中央の塔の端で半ば幽閉されていたリアナと面識は絶対無いだろうが、年齢くらいは知っている可能性が高い。
笑顔を張り付かせ、どうかバレませんように、と心の中で手を組む。
ライルはふと思い出したように声を上げる。
「そう言えば神子様もそれくらいだったよな」
「そうね、ずいぶん小さかったわ」
「あ、しょ、処刑されたって言う」
どもりながらもなんとかリアナが問うと、ライルを押し除け、メリーが頷く。
「あの時は、目が曇っていたけど、神子様は、神子様だったわ。それにあんなに幼いのに神子様を騙るなんて出来っこないわよ」
「おいメリー、誰かが聞いてたらどうするんだよ」
「みんな言ってるわよ!あの処刑は第一皇子殿下と大聖女様の狂言だって。じゃないとこんな急に加護を失ったみたいになる訳がないわ」
ライルとメリーが口論を始めたので、リアナはジャンに身を寄せる。
誰にも聞こえない様、小声で話しかける。
「随分と信頼がないみたいだね。皇子と聖女」
「まぁ、この体たらくじゃね。良かったね、君は恨まれてないよ」
「うん」
ライルはぼさぼさで艶のない黒髪を肩甲骨まで伸ばし適当に結んでおり、目つきも悪く、口も悪いので第一印象は悪いが、面倒見が良い。
なんだかんだで周りをちゃんと見ているのだ。なので。
「おいまた兄妹の世界に入るなよ!本当仲良いな!本当に兄妹か?恋人とか言わねぇよな?」
「もう、しつこいな。なに、嫉妬?アナは渡さないからね?」
「その誤解もやめろ」
まさか友人が出来るとは思っていなかったので、嬉しい誤算だ。
リアナは緩みそうになる頬を引き締める。
「ねぇ、そろそろ休憩終わるんじゃない?」
もう少しこの時間を楽しんでいたい、と思う自分を、見ないフリをした。
きっと、それは許されない事だから。
リアナの一言で慌ただしく身支度を整えるメリーとライルの、この先の幸せを願わずにはいられなかった。




