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55.潜入開始?


王都は、今まで通ってきた村や町と比べ、まだ観れる状態だった。

だが、一歩進んだ暗がり、路地裏は他と変わらない。人が倒れ、汚れ、不都合をそこに詰め込んだ様だ。


王都に入る前に馬は野に返した。

何度も振り返り、名残惜しそうにしていたが、二人はただ眺めた。きっと馬は祖国、ルババグース王国へ帰っただろう。

こちら、アッシュム王国ではご飯を与える事さえ難しくなる。


目を見張るほど健康な馬だったので、難なく帰れるはず。


「さて、行きますか?ジャンさん」

「そうだね、行きましょうか、リアナさん」


キリッとお互いに顔を見合わせ、意味もなく頷き合う。

長く続く石畳の路は至るところが剥げ、かつては美しかっただろう容貌は鳴りを潜めている。


怒号と悲鳴と鳴き声が入り混じり、耳を刺すほどの喧騒はそこかしこに溢れている。

この状況でも尚、第一皇子と大聖女は足元に目を向けず、贅を尽くしている。


飢えた民は木の皮までを剥がし齧る程に困窮しているが、貴族や王族は今までと変わらず、下手すると今までよりも豪勢な馳走に舌鼓を打つ。


暴徒と化した民が反乱を起こし、その多くが命を散らせた。

しかし、度重なる反乱には騎士や兵士も疲弊していた。それは身も心も。

上からの命で、罪の無い人々を粛清するには、心に負担が大きい。


城に辿り着き、門番に街で拾った使用人募集の紙をリアナは押し付ける。


「今なら出自問わずに雇ってくれるって本当なんね?食い扶持稼ぐ為に来たんよ」

「あぁ。まぁ、続けばいいがな」


リアナがすらすらと訛った喋り方で門番に話しかけているのをジャンは内心驚いた。


「この兄ちゃんも使用人募集見て来たらしいんよ。迷子になりかけのウチをここまで連れてきてくれたんよ」

「ふぅん、まぁ、案内するよ」


興味なさそうに門番は聞き流している。

リアナは嫌がらせかと思うくらい、ずっと訛りまじりの発音で話しかけ続けている。


(いや、何してんのリアナ)


ジャンは、とりあえず黙っておく事にした。

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