53.目的地に接近中
日の出と共に、出立した。
もう目的の城は目視できる場所にあり、馬を飛ばせば二日もあれば着く。
魔法で作り出した温泉を、魔法で跡形もなく片し、バリケードを組んでいた木々も地面に吸い込まれていった。
後から誰かが通っても、其処に温泉を築いた事に気がつくのは不可能だ。
腕の立つ魔法使いであれば、魔法の痕跡を感じただろうが、そんな者は現在いない。
リアナと同じ神子であれば、或いは気がつくかも知れない。
けれど、同じ神子である存在、シムはルババグース王国の山にある家に住んでいる。
なので、完全犯罪なのである。
別に犯罪ではないが、シムにあまり魔法は使わない様にと釘を刺されている。
温泉に浸かり、機嫌の良い馬は急かさずとも、全速力で野を駆けた。時折、楽しげに嘶く。
「温泉、気に入ったのかな」
「水浴びとはまた違っていいのかも」
「明日のお昼くらいには着きそう」
「そうだね。うん、もうすぐだね、リアナ」
風で乱れる髪を抑え、リアナはじっと城を見つめた。
無理矢理連れて行かれ、外に出る事も許されず、勉強を詰め込まれ、最期には用済みだと首を落とされた場所。
誰もに死を渇望され、生きている事を否定されたあの日。
確かに命を落とし、生まれ変わった。
「ジャンさん、出来る限り、私のそばにいてね」
「うん、勿論」
リアナは再生させることが出来る。
死んでも、生き返れる。そんな奇跡が起こせる。
人間には、使えないと伝えているが、使えない訳ではない。リアナもシムも、人間には使うべきでは無いと言う考えで一致している。
人間だけでなく、生物には使うべきでは無い。
二度と、死ねなくなるから。
もし、ジャンが命を落としそうになった時、リアナに彼を見捨てる選択肢は無い。
自分のエゴで、一人の人生を縛る訳にもいかないと思う。なので、可能な限り、自分の側で守りたいと思っている。
「怪我しないでね。死なないでね」
「こう見えてもわりと強いんだよ?」
絶対なんてどこにも無い。
信じてるよ、と言葉にするものの、リアナの胸には不安が消えなかった。
遅刻しました。次から王都に入れると思います。
同時連載中の「筋肉固めの三角形〜人外合わせて四角形〜」も興味があればぜひ。
細マッチョとゴリマッチョと筋肉フェチの三角関係です。私の趣味です。
私情ですが筋トレを始めたら筋肉痛が凄まじいです。筋肉が育ってるのをひしひしと感じます。




