51.現実逃避も大事です
時折、一言二言、ぽつぽつと会話をし、風を切って急いだ。
途中で野宿を挟みつつ、出来るだけ先を急いだ。野営に慣れているジャンと違い、リアナには酷な旅だ。ジャンは日に日に言葉少なになるリアナにどう声を掛けるべきか悩んだ。
けれども、どんな言葉を掛けたところで、彼女の心は晴れないだろうと言うことだけはわかっていた。
慣れない野宿に疲れただけではない事は、ジャンも理解していた。自分が尽くしてきた祖国がみるも無残な姿になっていれば、ジャンもどう元気を出せばいいか分からなくなるだろう。
せめて、と森が近くにある場合は、野生の果物をもいで食べさせた。
「……もうすぐ、だね」
王都に近付くにつれ、リアナの顔は益々強張っていった。少し遠くに霞んでみえる王宮を竦然と眺め、微かに震える声で呟かれる。
痛ましい。神子になったとは言え、まだ十二年しか生きていないのだ。ジャンは痩せ細ったリアナを抱き寄せる。
「痛いよ」
「ごめん、ちょっとだけ」
鍛えた身体には脂肪はついていない。筋肉に押し付けられたリアナは文句を言う。
(でも、あたたかい)
与えられる事の少なかった温もりに、そっと目を伏せる。
つい数日前に川のほとりで水浴びしたくらいなので、二人とも少し臭いがきつい。でも、お互い様。それに、とっくに鼻はまともに効かない。
国境を超えてから、異臭の漂う町をいくつも抜けた。
人の体液や、糞尿、嘔吐物や残飯。ありとあらゆる臭いが混ざって、おぞましいものになっていた。
「流石に湯浴みしたいかも」
すんすんと自分の臭いを嗅ぐリアナは、ふと動きを止め、突然手を叩いた。
「魔法、あるじゃん……」
「あんまり使うなってシムさんに言われてなかったっけ?」
「バレなきゃいいんでしょ」
ジャンを押し除け、リアナはぽんぽん魔法を使い始める。
認識阻害魔法で人々から自分たちの姿を隠し、土魔法で穴を掘って石で固め、水魔法と熱魔法を組み合わせて湯を作って急拵えの露天風呂に流し込む。
ぱちりと指を鳴らせば、木が生茂り、死角を生み出す。念には念を。
そして最後に露天風呂を分断するように衝立用の薄くて横長の石を生やせば完成。
「さ、お風呂入ろう!」
「やりすぎだと思う」
ジャンの突っ込みは、無視された。
諸事情により休みが減るので今後更新が滞るかも知れません。
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今日も遅刻しました。




