48.そうして一歩踏み出す
数日が経ち、ジャンとリアナがすっかり旅支度を終えた頃、グレゴリオからの呼び出しを受けた。
二人揃ってグレゴリオの執務室へ向かうと、今日も机にこんもりと書類の山を築いているグレゴリオが迎え入れてくれた。
「結論から言うと、二人にはアッシュム王国に向かってもらうことになった」
書類を裁く手を止め、グレゴリオはそう告げる。
ジャンとリアナは顔を見合わせ、笑みを見せる。
「だが」
二人に釘を刺すために、グレゴリオは重々しく口を開く。
どことなく疲れた様子である。
「表向き、二人は自分たちの意思で向かう事になっている。面倒ごとはなるべく避けてくれ」
「それは勿論。我が儘を聞いてもらえて嬉しい限りです」
しっかりと頷いてグレゴリオと目を合わせ、リアナはにこりと笑む。
眉間を揉み解し、息を吐いてからグレゴリオは立ち上がり、机を横切ってリアナの横に立つ。
そして、リアナの髪をくしゃくしゃに撫でた。
「君は幸せに過ごすべきだろう。でも、神子である君の意見をねじ伏せる事は難しい。うちの国では、神子は大事に預かり、時が来れば送り出すものらしいからな」
まぁ、シムの様な破天荒過ぎる例外もいる事だし、今更だがな、と困った様に眉尻を下げる男にリアナはただ嬉しさを感じた。
神子と言う存在でありながら、まだ幼い自分を気遣ってくれるその態度に。
「ありがとうございます。行ってきます。また、会いましょう」
「あぁ、シムにも宜しくと伝えてくれ」
そしてリアナだけ先に退出を促されたので、大人しく従う。
部屋にはグレゴリオとジャンだけが残された。
「気を付けて行ってこい。直ぐに暴動や内乱が起きるかも知れないから、神子の側を離れず、自分の命を守れ」
「リアナのではなく、ですか?」
「先日シムから聞いたんだが、神子は不老不死だ。確かに出会ってからシムは全く変わらないから気が付いてなかった事を笑われたんだがな」
それは置いといてだな、とグレゴリオは続ける。
「ともかくだ。危険な中に飛び込む訳だ。気を付けろよ」
肩を二度叩かれ、激励を受けたジャンは挨拶をしてから外で待っていたリアナと合流した。
それから程なくしてジャンからアッシュム王国へ向かったと伝書鳩からの知らせを受けたグレゴリオは窓からアッシュム王国のある方角へと目を向けた。
仕事でえぐいミスをして自己嫌悪タイムが長引いてギリギリ?になりました。




