44.自己都合の王者
アッシュム王国視点です。
貧困に喘ぐ国民を踏み潰し、綺麗な顔で第一皇子と大聖女は笑っていた。
王都はまだ、辛うじて落ち着いてはいたが、街の外に出れば、道端に人が倒れ、路地裏でゴミを漁る子供がおり、飢えに耐えきれず暴れる者もいた。
優雅に馬車で王都の視察をする第一皇子と大聖女の目にはそんな国民が映らない。
お互いしか見ていないから。
「アレク様、もう帰りましょう?」
「あぁ、そうだな。言われた通り視察は済ませたし帰るか」
面倒臭そうに吐き捨てる第一皇子。
馬車の外で警備している騎士達は、漏れ聞こえた第一皇子、アレキサンダーの言葉に、顔を暗くした。もう、この国は終わりだな。
誰も言わないが、そう思うには充分だった。
全て、神子を処刑してから始まった崩壊だった。
神子を騙ったと処刑されたが、第一皇子と大聖女が手を組んで罪を作り上げたのではないかと、囁かれている。
国の崩壊は、神子が本物だったから、神の怒りを買ってしまったのでは、と。
アッシュム王国は犯罪が増え、死者が増え、亡命者が増え、落ち込むばかりだ。
第一皇子と大聖女は偉そうに貴族に命を下すばかりで、状況の打開をする気配はまるで無い。
危機を覚えた貴族が進言をするも、右から左に抜けていく。
そして、運の悪いことに止めるべき国王と皇后は、病で伏せっており、現状アレキサンダーに実権が移ってしまっている。
「もう、終わりかもな」
「あぁ…」
騎士達は、国民からの恨みの篭った視線を受け取りながら、疲れ切った顔で溢す。
崩壊はもう始まっている。
国に忠誠を誓った以上、反旗を翻すことは許されず、絶望を抱え、己の力のなさを悔やみ、耐えるしかなかった。
いつ暴動が起き、命を奪う事になるかも知れず、また、命を落とすかも知れず、状況を全く理解していない第一皇子と大聖女だけが呑気に過ごしていた。




