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43.視察開始


リアナは休みの三日を魔法の訓練に費やした。昼も夜も、時間を見つけては魔力の制御を練習した。


そして、国境の視察当時。

リアナはジャンの操る馬の上にいた。

ジャンの前に大人しく座り、優雅に揺られる予定だったが、思いの外激しく揺れる。

ジャンの片腕に抱かれ、じっとするしか無かった。景色は後ろにびゅんびゅん飛んでいく。見る余裕は無い。


「飛ばすね、ジャンさん。大丈夫?道わかる?見えてる?」

「あぁ、うん、慣れだよ、慣れ」

「いやぁ私は無理そう」

「その割に落ち着いてるけどね。舌噛むよ、危ないよ」


軽口の応酬を楽しみつつ、リアナは時間を潰す。仮に舌を噛んでも、自分だけなら回復魔法を使えば良い。

案外そんな事は無かったが。


馬を駆け、いくつもの街を抜け、国境付近に辿り着く。

馬は国境沿いの町に預け、二人は手を繋いで国境に近づく。

ジャンは今日、私服を着ている。騎士だと悟らせない為だ。リアナは裾のほつれた服を着ている。

少し貧しい兄妹を装っている。


騎士が視察に来ていると露見した場合、武力に訴える難民が居ないとも限らない。

実際、国境沿いには難民が多数いた。

テントを張っている者もいれば、ボロ布を布団に地面に転がっている者、力無く座り込んでいる者などが見受けられる。


やはりと言うか、異臭が凄い。

難民故に、お金を持たぬ者が多いので、気軽に湯浴みも出来ないのだろう。

思わず顔を顰めそうになる臭いが立ち込めている。国境沿いの町に活気が無かったのも、難民が押し寄せてから、町を出る者が多かったからだろう。


稀に町から国境にやってきて、廃棄する食材を気紛れに置いていく業者もいる。

腐りかけた物や、殆ど残飯の様な物でも、難民は我先にと飛びつく。


数日に渡り、リアナとジャンは難民達を観察する為に毎日足を運んだ。

焼け石に水だが、食料を少しずつ配ったりもした。


「…どうにか、しないとね。アッシュム王国をこのまま野放しにしてたら、もっと増えそう」


顎に手を当て、唸るリアナの頭に、元婚約者の第一皇子と、自分の後に婚約者の座に収まった大聖女の顔がちらついていた。

私生活で色々あって、心労が凄いです。

なるべく更新は止めない様頑張ります。

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