31.神子とはなにか
シムの後に続いて山を登り、温かみを感じるこじんまりとした家に着いた頃には、リアナはすっかり疲れ切っていた。
なにしろ、城に軟禁され、ろくに動き回ることをしなかった。体力はまるで無い。
最後の方は腕を引かれ、惰性で足を動かせていたくらいだ。
すぐにソファーに座り、もとい、へばりつき、休息をとっていると、シムが笑いながらお茶を出してきた。
「貧弱ねぇ。でも慣れるわよ〜。山登りくらいしかやる事ないもの」
「やっぱり自給自足…」
「勿論。神子だってバレたら面倒よ?また城で窮屈に過ごしたい?」
「嫌ですぅ」
ソファーに上半身をへばりつかせ、床に座り込んだまま、リアナはぷくりと頬を膨らませる。シムはソファーに腰を下ろしてお茶を一口。
「なら山を登って畑を耕して動物を仕留める事ね」
「なんか増えた」
じとり、と睨め付ける視線を意にも解せず、シムは楽しそうに声を上げて笑うばかり。
ソファーにもたれ掛かるリアナの毛先の変わった髪の毛をつまみ上げた。
「慣れるまでは面倒みるわよ。家ができたら騎士くんと住むんだから頼ればいいわよ」
尤も、神子たるリアナが魔法の使い方さえ覚えてしまえばなんて事ないだろうけれど。
あえてそれは言わずにおく。
どちらにせよ、リアナには魔法を叩き込むつもりであるし、成長してから自分で気が付けばいいと思う。
なんでもかんでも手助けするのは、成長を妨げる。
「私は大地の神子で、貴方は再生の神子。不名誉な二つ名に、人間から与えられた呪いが武器よ。どうせ私たちの席は暫く開かないんだから、こっちで楽しみましょう」
リアナは顔を上げ、シムを眺めて、曖昧に頷いた。
まだ、分かるようで分からない。理解するには少しの時間が掛かるだろう。
「いいこと、万人に手を差し伸べるのが神子では無いわ。等しく皆を見守ることこそが大事なのよ」
「導く事も?」
「時には必要かも知れないけれど。全てが神頼みで、全てが神のせいになってしまえば、面倒だもの」
どうにか立ち上がり、ソファーに座り直すリアナ。
まだ湯気のたつお茶に口をつけ、一息ついた。
「貴方の力は特にね」
「…そう、だね」
一度死ぬ筈だった自分の運命さえも変えてしまった力。
シムが改めて釘を刺す程に。
もともと考えていた話の折り返し地点くらいです。
このまま3日に1回(目安)ペースの更新頑張りますのでお付き合い頂ければ幸いです。




