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27.時を経て


盛られた焼き菓子をもりもりと食べていたシムだが、宰相が戻って来ると、直ぐに顔を取り繕った。

むぐむぐと頬の内側に居座っていた焼き菓子も飲みくだされ、澄ました顔で紅茶を啜る。


「大変お待たせ致しました。王から直ぐにでも来て欲しいとの伝言を承りました」

「ありがとうございます」


宰相からの言葉に、グレゴリオは安堵し、立ち上がって頭を下げた。


カップをソーサーに置き、シムは立ち上がって微笑んだ。


「宰相さん、ありがとう。この国の未来は安泰ね」

「ありがとうございます」


深々と宰相はシムに頭を下げ、見送る。

護衛騎士は、宰相が低く頭を下げるのを見てぎょっとしていた。自分の行動を振り返り、青褪める。

軽く肩を竦め、シムは青褪めた護衛騎士の肩を叩く。


「仕事に忠実なのは良いことよ。これからも励んでね」

「は、はい!」


長く艶めく宵闇の髪を揺らし、足取り軽く進む後ろ姿は、まるで神子には見えない。

とは言え、神子がなんたるかを詳しくはグレゴリオも知らない。


グレゴリオの知る神子、シムは型にはまらず、自由気ままに、心穏やかにこの世界を謳歌している。

権力や財に執着することなく、まるで徳の高い僧の様に慎ましい生活を送り、満足している。

時折街に降り、グレゴリオとその妻に会い、街の人々の暮らしぶりを見ては森の家に帰る。

傅かれることを厭い、寄り添う訳でもなく、ただ見守る。


「ここも久しぶりだわ。何年前だったかしら。貴方は随分と若かった」


独り言の様で、グレゴリオに問いかけるシム。

上半身をひねり、グレゴリオに視線を向ける。


「かれこれ二十年くらい前だ」

「そりゃ歳を取る訳だ」


シムは、グレゴリオと出会った頃から、変わらない。

性格も見た目も。全て。

神子とは言え、人の子。不思議なこともあるが、誰にでも常識が当てはまる訳では無い。


かつて大魔法使いと呼ばれた人物は、人間でありながら三百年以上生き永らえたと、歴史に残っている。


城に勤める者たちの視線を物ともせず、堂々と進み続け、シムは大きな扉の前に立った。

扉の前で待機していた護衛騎士達は、見知らぬ女に狼狽るが、後ろに立つ騎士団総長の姿を見て疑問を深める。


「サーベリッジ宰相からの許可は得ている。通してもらえるか」

「は、直ちに」


先程宰相が直接訪れていたこともあり、すんなり扉は開かれた。

絨毯が長く伸びる先に鎮座する豪奢な椅子に、この国の頂点が待っている。


「…なんと、これはお久しぶりです。さぁ、中へどうぞ」


国王はシムを認めると、厳しい顔を緩め、久しい対面を喜んだ。


「えぇ、久しぶりですね。改めて、森の家をありがとうございました。住み心地抜群で未だにこの国に滞在してしまいましたわ」


気安く話しかける女に、護衛騎士達は目を見開いた。

だが、王が気分を損ねる様子はなく、むしろ嬉しそうであるのでただ見守る事にした。


「あぁ、すまん。これからは大事な話になる。グレゴリオは中に。騎士達はすまんが外の警備を続けてくれ」


早く扉を閉め、出て行け。言外にそう言われ、護衛騎士達は外に出て扉を閉めた。

この部屋は壁も扉も厚い。音が漏れても詳しい内容までは伝わらない。


「念には念を入れさせてもらうわ」


ぱちん、とシムが指を鳴らした。

外の世界が夜であるかの様に音が消える。

音を遮断したのだ。


「感謝申し上げる。何処から情報が漏れるかはわからないのでな。さて、わざわざ足を運ばれるとは…。何事でしょう」


まだもう少し大人達の話が続くと思います。

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