25.神子の秘密
グレゴリオとシムは並んで王宮の回廊を歩いていた。まずは王に謁見を求める為に、側近である宰相に話を通して貰う必要がある。
騎士団総長のグレゴリオは、城に勤める者は顔を知っているが、シムの存在を知る者は王以外居ない。
なので、視線を集めていた。
愛妻家と名高い騎士団総長の横を歩く親しげな美しい女。
この国では珍しい宵闇の髪色と瞳を持つ、妖しげな雰囲気を持つシム。目立つ事この上ない。
大地の神子が居たと歴史に刻まれた時期は時を遡り随分と前のことで。
仮に生きていたとして、しわくちゃでないとおかしい。
そもそも、神子と言う存在は歴史に記されても、容姿は残されない。
なので、シムを見て大地の神子だと気がつく者はいる訳がない。
不審極まり無いが、怪しい者を捕らえるべき騎士団総長が横にいることで、誰もが不審には思うものの、何も出来ずにいる。
「熱烈な歓迎だわ。王は私のこと覚えてるかしら」
「覚えておいでだろう。それにシムは王に家をもらったのだから安否の確認くらいはしているんじゃないか?」
「監視なんかしたら速攻国に帰ると言ってるからないわね」
つまり、シムはグレゴリオ達を助け、王に家を貰ってから、音沙汰が無かったらしい。
グレゴリオは天を仰ぎたくなった。自分の元には、時折シムは顔を出していたのだ。
シムはグレゴリオの妻も気に入り、神子とは名乗らずとも、友人関係を築いているくらいには。
けれども、一国の主には居住地を賜ってから連絡は一切なし。ルババグース王国の王は温厚であり、慈悲深い。文句は言わないだろうが悲しい顔くらいはしそうである。
「国王陛下、落ち込まれるので無いだろうか」
「そんな繊細な…、いや、でもそうね。あの王なら神子を悪用はしないだろうけど。茶飲み仲間にはなって欲しいとか言ってたわね以前」
シムはことごとくつっぱねたらしい。
王とは言え、神子には敵わない。それは今では稀有な魔法が使える存在であり、世界の創造主たる加護を受けた愛し子である故に。
「随分と長居しているけれど、本来なら国に帰っても良い頃ではあったのよね。まだそんな人間出来てないしいいかなーって先延ばしにしてたけど」
でも、残ってて良かった。あんな小さくて不安定な神子一人で立てるわけないもの。
そう言ったシムの言葉に、グレゴリオは首を傾げるばかり。
先程から国と言ってはいるが、シムもリアナも、生贄だったり処刑されてたり、内容は違うもののアッシュム王国には戻れないだろう。
「やはり、アッシュム王国に戻りたいのか?祖国だから」
「いえ、アッシュム王国に居場所はないわよ。…あぁ、国って言うのは神子の、違うわね、神の国のこと」
「言ってもいいのか?そんな国、聞いたことはない」
「構わないわよ。歴史に残ってないのは、歴史に載せたくない誰かがいるだけなんだから」
そう言うものなのか、と未だ腑に落ちないが、神子であるシムが言うのでそうなのだろう、と無理矢理グレゴリオは納得するしかなかった。
今迄のキャラや設定をノートにまとめたのですが、読み返すとおかしい部分とかもあったので修正を少しずつ入れていこうと思います。
3、長い考え事のリアナと第一王子の出会った年齢を、10歳→13歳に変えてます。リアナの年齢に変更はありません。