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17.過去の話


立ち上がろうとするジャンを軽く手で静止したグレゴリオは近くの椅子を引っ張り出してジャンの横にどかりと座った。


「畏まらなくていい。今は俺とお前、そしてこの少女だけだからな」


グレゴリオは眠るリアナに目を向け、軽く目を伏せた。

小さな身体に巻かれた包帯は痛々しい。


「総長、この少女は隣のアッシュム王国を追放された件の」

「そこかしこで聞く。神子を騙って処刑されたと言う娘だろう?」


朝に髭を剃ったばかりのつるりとした顎をグレゴリオは親指の腹で撫でる。

石鹸の香りはまだ仄かに残っている。


処刑されたはずの少女は確かに目の前で、包帯に巻かれてはいるが眠っている。


「本物の、神子か」

「でなければ、こんな奇跡起こるわけありません」


微かに膨らんだり縮んだりを繰り返す胸元は、少女の生を主張していた。

グレゴリオは再び、親指の原で顎を撫でる。


「包帯の下に、斬首の跡が残ってるのか」


痛ましい。

グレゴリオは顔を顰める。小さな少女が背負うには重過ぎる痛みであろう。

手を組んで、懺悔するかの如く頭を垂れる。


「私は、…大地の神子を知っている」

「どういう事ですか」


大地の神子は数十年も昔の話で、ジャンより年上ではあるが、大地の神子がいたとされる時期は、総長が生まれるより前だ。

ジャンは総長の言葉を待った。掌にはじとりと汗をかいている。


「騎士になりたての頃、隣国近くの湿地で大陥没が起きた」


総長は当時を思い出しているのか、宙に目を向けた。

ジャンは必死に記憶を手繰る。大陥没ともなれば話に聞いたことくらいはあるはず。

そして、直ぐに思い至る。確かに、二十五年ほど昔に湿地で大陥没が起きた事実は残っている。


「丁度遠征をしていて、大陥没に巻き込まれたのだが、奇跡的に死人は居なかった。大地の神子が、助けてくれたんだ」

「大地の神子は、生きてたのですか…!?」


驚きを隠せず、思わずジャンの声は大きくなる。

それに引き換え、グレゴリオは沈んだ表情のまま、こくりと頷いた。


神子とは、なんなのだろう。

改めて考えるとわからない事ばかりだった。

神に愛された子供。神に愛された存在。

常人には為せない事をやってのける。

それくらいしかジャンには分からなかった。


「大地の神子は、突然現れ、陥没で生き埋めになっていた者達を助けてくれた」


書き溜めて投稿していく方針に切り替える予定ですので少しの期間お休みを頂きます。

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