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1.処刑の日、そして覚醒の日


「恐れ多くも神聖なる神子を語った希代の悪女に粛清を!」


襤褸布を纏い、手枷に足枷を付けられ、その場で押さえ付けられたまま、少女はその声を聞いていた。


リアナ・モーヴァン。

神の愛し子と呼ばれる神子。

彼女は教皇により、神子だと選定され、祀り挙げられ、第一皇子と婚約させられた。


何処にも、彼女の意思は無かったにも関わらず、神子の力を発揮出来ないからと処刑を受ける事になった。


リアナは緩慢な動作で顔を上げ、高い位置から此方を見下ろす元婚約者に目を向けた。


元婚約者、第一皇子はリアナを案じる素振りも無く、冷え切った視線を送ってくる。

その隣に立つ女は、これまた教皇により、大聖女だと選定され、リアナとの婚約を破棄させ、第一皇子と婚約した。


リアナが神子だと騙った事に憤る民衆の怒声が耳を突き刺す。

それ程までに、神子は尊いものであり、汚してはいけない領域である事を示す。


(私が神子だと言い出した訳では無いのに)


誰にも声は届かず、斧は振り下ろされた。


ごろりとリアナの首が転がった時、大歓声が湧き上がった。

誰もに死を渇望され、死ぬ。


私の人生は、何だったのだろうか。

リアナの空虚な瞳は空の色を写していた。


**


衝撃が横面を襲う。


訳もわからず、リアナは酩酊感の中、恐る恐る目を開くと生い茂る草が目に入る。

青々しい空気を吸い込み、立ち上がろうとして、違和感を感じる。

身体の感覚が遠い。そして、立ち上がった感覚はあったが、視界は変わらない。


何かがおかしい。


必死に目を動かすと、首の無い、襤褸布を纏った自分の姿を目に捉えた。


そうだ、リアナは神子を騙った罪人として斬首された筈。

空は青かった。そして、元婚約者はまるでゴミを見るかの様に悍しい顔をリアナに向けていた。


痛みは一瞬だった。

だが確かに、リアナは死んだ筈だった。


一先ず、身体を動かし、頭を拾い上げる。首に置いてみた所でぐらりと傾いでまた地面に落ちる。

針と糸があれば。縫い止める事が出来れば良いのにとリアナは溜息を吐いた。


生憎、森の中である。

こちらをチラチラと伺う動物に話しかけても手芸道具は手に入らないことは明白である。


両手で首を押さえ、リアナは歩き出した。ここに居ても動物達の餌になるだけだ。

処刑された後、動物の餌にする為に捨てられたに違いない。


運良く生きていたのでこれからはひっそりと生きていく事にしよう。

空き家を探して、畑を耕し、魚を釣って。

生きているとバレるとまた殺されるかも知れない。


だが、リアナは気が付いていなかった。

首を落とされて尚、生きているのは、教皇に選定された神子だからだと。


リアナは再生の神子。

自分を含む人間や動物の命を蘇らせる事が出来る。

まさに奇跡の技。


グラグラ揺れる頭を押さえながら、リアナは森の獣道を歩く。

草木をかき分け進んでいると、ばったりと一人の騎士と出会した。


「何者だ!…罪人か?」

「いや、あの、迷子です!!」


襤褸布を纏い、手足には枷をつけていた痣が残っているリアナは何処からどう見ても脱獄した罪人にしか見えない。

すらりと剣を抜き、切っ先をリアナに向けて騎士は吠えた。


慌てたリアナは両手を前に突き出し、否定する。


安定のしない頭は、ごろりと落ちた。


「ウワアアアアア!!!!???」


騎士は腰を抜かし後ろに後退りした。

怯えた騎士の顔色はすこぶる悪い。


一方、リアナは。


(まずい、この人に手芸道具を持ってきて貰わないとずっとこのまま…!)


宜しくお願い致します!

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