第二話「JK」-5 “最終作戦”
そうして、一週間後。
俺は椎名と会うこともなく、何もない一週間を過ごした。
朝やプリントを配るときに加藤の顔を見るときはきつかったが、それ以外はとくに精神的な支障もなく、俺は普通の学校生活を送った。
その加藤はというと、俺の存在など知らぬかのように、話しかけるどころか、今までどおりもいいとこ、といった感じだろうか。
ほんとに俺のことなどムシケラ程度の存在だと思われていたのだろうか…いや、そんなはずは…でもなぁ・・・・・・・・。
俺の精神回復はあまりできていないようだった。
今日がちょうど椎名の告白事件から一週間の日なので、俺から一年の教室に行こうとも思ったが、椎名側の準備とやらができていなかったら行き損だなぁなんて思ったので行かなかった。
断じて二年が大した用もなく一年の教室に行くことが恥ずかしいとかの理由ではない。断じて!!!
そういうわけで俺は昼休みまで普段通りに過ごし、無駄にドキドキするだけの時間を費やした。
椎名が約束を破るとは思えないし、俺も直接聞きに行きたくない。となると、俺が行きつく先は一つになる。
わざわざ行くのは面倒だが、一週間わざわざ待って何もなしというのは、なんだかもやもやする。重い腰を上げ、俺は三度目になる屋上への階段を上る。
仮に屋上に誰もいなかったとしても、貴重な昼休みの時間に屋上に来るバカはそうそういないだろうし、誰にも気づかれずに踊ることなど容易だろう。
こういうリスクを考えてしまうところは、まだ椎名を信用しきれていない証拠なのかもしれないな。
疑心暗鬼な状態で、俺は屋上につく。
重い鉄のドアを開けると、その先にいたのは、もはや見慣れた紅のツインテールだ。
「・・・では、始めようか」
そいつは、振り返ることなく宣言する。
「漆黒の最終作戦を!!!!!!!」
「それで、作戦って?」
特別積もる話があるわけでもない俺たちは、一週間ぶりの再会を喜ぶでもなく、淡々と話しを進めていく。
「フッ」
椎名が何をわかりきったことを、というような感じでため息をつく。
「それを考えるのがお前の役割だろうが」
一瞬でもこいつに期待した俺がばかだった。
「まぁ、なるようになるだろうな」
無責任なことを言い張る椎名。その椎名に対し俺は、
「ところで、お前の言う準備ってなんだ。さすがにそれはしてきたんだろ?」
一週間前にこいつが言っていたことの真意を確かめようとする。
「ふっ、この私に抜かりがあると思うか?」
おまえ、さっきまでのセリフを思い出せ。
そんなことを考える俺を後目に椎名は、
「みよ!!これが、我々の闇血の刻印だ!!!」
そう言って椎名が取り出したのは、黒に赤い印が刻まれたTシャツだ。
「…なんだ、それは…」
「フフフ、聞くまでもないだろう?私の仲間としての証だ」
そう言って椎名は俺にTシャツを渡してきた。こいつこれを準備とか言ってたのかよ…
「無論、私は装備済みだ」
どや顔で制服のブレザーを脱いだ椎名は、髪の毛と同じ赤色に黒色で俺がもらったやつと同じマークの入ったのTシャツを着ていた。
なるほど。このTシャツはこいつの仲間入りの会員証ということか。
晴れてこいつの完全な仲間として認められてしまったらしい。俺は。
一体こいつはどういう設定で生きてるんだろうか。決闘といいながらバチバチに仲間求めてるし。
この矛盾感もまた、中二病らしいといえばらしいのだが。
そんな茶番をやっていると、いつの間にか昼休み終わり5分前の予鈴が鳴り響く。
実は俺が屋上まで行くのを決めあぐねてたからとかそれが理由ではないはずだ。きっと。
俺は白々しく言う。
「お、もうこんな時間か」
「チッ、まだ見せたい兵器があるというのに・・・」
まだあんのかよ。どちらのせよこの昼休み中に加藤関連のことが進むことはなさそうだ。
「ほら、教室戻るぞ」
実際に屋上から三階までは5分くらいかかるのでここでうだうだしている時間はない。
俺たちは小走りに階段を下りていく。
が、そこで事件が起きる。五階から四階に続く階段を下りる途中、まさかの加藤海葵本人と俺たちがすれ違おうとしていたのだ。
俺はコミュ障モード発動により、加藤のことを無視して通り過ぎようとしたのだが、加藤はこちらに気づき、
「あら、天音ちゃん」
「ミキパイ…」
俺は無視を決め込もうとしていたのに、加藤は椎名に話しかけてしまう。…。
「またあの告白、聞かせてくれないの?」
「ぐはぁ!」
「!? 」
殺人現場!?流れるような展開。まさに仕事人のそれだ。後ろでは椎名が吐血…したような声を出しながら倒れていった。つい一週間前にも見た気がするが…。
再び椎名を殺害した容疑者は、もちろん、加藤海葵だ。
俺がおびえたように加藤のほうを見ると、一瞬、俺のことを一瞥してから、何事もなかったように下の階に降りていく。
えぇ・・完全に通り魔じゃん。
俺にとっては椎名も十分やばいやつだが、サイコ度では加藤がすでにカンスト級に上回っている。
そこで、五時限目の開始を告げる本鈴が鳴る。
後ろの椎名も心配だが、すまん、俺は成績のほうが大事だ!
俺はショックで倒れる椎名を置いて階段を下りた。
あいつがもう使い物にならないことが分かった。
あいつは、もう加藤に手も足も出ないだろう。俺がどうかは置いといて。
俺が考え込んでいると、突然、悪魔の声が後ろから聞こえた。
「ねぇ、あなた。ちょっといいかしら」
そこにはラスボスがいた。