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第一話「邂逅」-4 “決闘”


「これから貴様に決闘(デュエル)を申し込む!!」


「へ?」


デュエル?デュ〇マのことか?でも俺カードゲームやったことないからなぁ。


闇の契(フィンスターニ)約儀式フェアトラークに準じて、貴様に真名を授ける!!」


椎名の設定の展開はとどまることを知らない。

こいつには協調性というものはないのか。反論しない俺も俺だが。

ちなみに俺のセリフ数は約四回。うそでしょ。自分でもびっくりしたわ。


さすがにまずいと思った俺はやっと口を開く。

「おい、ちょっと待て。その決闘(デュエル)とやらの前にまず事情を説明しろ。お前の目的を教えろ。」

なんか俺も椎名につられて中二病っぽい口調になっちゃうね。


「ふむ、やはり貴様もそう来るか、何も言わないからあまりに物分かりが良いなと思っていたところだ・・」


え、俺って中二病すらひかせられるほどのコミュ障だったの。どうやっても物語の主人公になれないやつ。あいつらなんだかんだコミュ力あるからな。

そんなコミュ力皆無の俺だが、この場にいるのは俺と椎名の二人だけ。俺がしゃべらなければ、会話もくそもない。心を落ち着かせ、言葉を紡ぐ。


「俺は沖名陸。ただの高校二年生だ。お前の言うような能力がどうだとかは全くない!!」


言い切ってやった。俺の16年の歴史に残る啖呵ですこれは。

その俺の全力の啖呵に対し椎名は、


「沖名か・・ふむ・・貴様の真名は、ルーク。そうだな、ルークにしよう。」


少しだけ考えると、椎名は俺の闇の名前らしきワードを口にする。どうやら俺の中二ネームはルークになったらしい。なんかやけにかっこいいし。

そして俺の啖呵は当然のようにスルー。


「それで、名前がどうのとかはどうでもいいが、なんで俺をここに連れてきたかがわからん。」


「案ずるな。ちゃんと貴様を連れてきた理由はある。」

そう言って、椎名は続ける。



「それは、—————私と貴様の闇決闘(ダークネスデュエル)をするためだ。」



「は?」

反射で声が出る。


「ちょ、ちょっと待て、いろいろ説明が足らなすぎる。まずお前の目的を教えろ。」


「私の目的は、真の闇の使い手を決めることだ。そのために、闇の候補となるお前を呼んだ。」


??何言ってんだこいつ。って顔をしていたら、椎名は、


「つ、つまりだ、私は貴様を私と対となる闇の候補者(カンディダート)として選んだ。そして、真の闇の使い手を決めるために、私とお前は決闘(デュエル)をしなくてはならないというわけだ。」


ちゃんと説明するのが苦手・・というか、急に質問攻めになってしまった俺に驚いたのか、椎名は少し焦ったように説明する。

だが・・・少しわかった気がする。俺も少しそういうのにあこがれていた時期はあったからな。

つまり、こいつの言わんとすることは、自分の中二病ワールドにつきあってくれる人を探したら、なんか俺がいて、中二病の遊びをしようとそういうことか。これ、ほんとに高校生の考えること?


そうすると、まず二つの疑問が浮かび上がってくる。


「お前はなんで俺を選んだんだ?それに、その決闘ってなんだ?」


「やれやれ。せっかちな奴だ。そんなに知りたくば教えてやろう。」

そう言って椎名は口を開く。


「貴様の心は闇に侵されている。その暗黒の力はわがとしてふさわしいものと感じた。」


心の・・闇?確かに俺は入学式の時、そんなことを思ったが、もしかしてこいつはエスパー?ただの中二病かと思いきや、本当にそんな力があるのか・・?

俺の考えていたことが顔に出ていたのか、椎名は付け足す。


「フフ、貴様の腐った目を見れば一目瞭然だ。世にいう社畜(スレイブ)と同じような目をしていたぞ。」


スレイブって奴隷って意味じゃなかったっけ。てか、奴隷と社畜をイコールにするなよ。

目の話はともかくとして、俺の心を読むこいつ、最初は別世界の人間かと思ってたけど、なんか根っこのほうは似たような奴なのかもしれないな。

こいつも、中二病として一人で生きてきたわけだ。こいつの目的は、ただ“仲間”が欲しかっただけなんだ。

そう思うと、こいつが急にかわいい後輩に思えてきた。中学の頃は後輩のことなんてみじんも思わなかったけど。

それはともかくとして、肝心なことを聞いていない。俺が口を開きかけると、それもわかっているというように椎名は言う。


「そして、この決闘(デュエル)についてだ!!」


椎名は嬉々として説明し始めた。

そして、この何気ない説明が、俺の運命の分かれ目となった。


決闘(デュエル)の内容、それは・・・」



完全無欠(パーフェクト)()女王(クイーン)を我が闇の集い(パーティ)に入れることだ!!」



椎名がその一言を高らかに宣言した瞬間、雲一つなかったはずの青空から、一粒のしずくが俺の頭上に落ちる。


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