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第三話「友情」-4 “戀”


「まずは、ミキパイの言っていた小林をここに呼び出す!」


「おい、椎名。もう帰宅部は帰った時間だぞ。小林が部活に入ってるかは知らんが、もう帰った可能性もあるんじゃないか?」


俺が椎名に対して問うと、椎名は「確かに…」とか言って、首をかしげる。


「…問題ないわ。小林は確かダンス部。ダンス部は基本毎日活動があったはずよ」

そこに本を読んでいた加藤が口出してくる。

ということは、小林はまだ教室にいるということか。しかし、小林はまだ部活中。これはさすがに…


「それはともかくとして、私は小林と話すことがまず嫌なんだけど…」


「わかった、行ってくる!」

そんな俺の考えも、加藤の訴えも吹っ飛ばして、椎名はすぐ行動に移す。


「…ほんとに、あいつは…。あほなのか?ほんとはただあほなだけなのか?」

「まぁ、あながち間違いではないかもしれないわね…」

俺らはその後、何の会話もなく椎名を待った。


「それにしても、お前もよくきたな…。」

マジで会話がないので、謎の感想を加藤に伝える。

「まぁね。私個人としても、天音ちゃんへの興味は尽きないからね」

本に目を落としたまま、視線を変えることなく加藤は答える。

あんだけばっさばっさと椎名のことを振っておいて、加藤からこんな言葉を聞くとは。


・・・。


そしてまた沈黙が訪れる。俺は会話の話題は何とか出せたりするが、そこから展開することができないタイプのコミュ障だ。そして加藤はもう話題すら出そうとしないタイプの人間なので、もう相性最悪だ。

もう三十分中に三回目のトイレに行こうと決心したところで、生徒会準備室の扉が開く。

てか、これとなりで生徒会さんたち活動してるんだよね。何でばれないの?

勢いよく教室に入ってきた椎名は、この部屋を出る前に宣言していた通り、小林紗良を引き連れていた。




「フフフ、彼女こそ、“陽団の統治者(ソレイユリーデル)”こと、小林さんだ」

なんかシュール。こいつが人の名前をちゃんと呼ぶなんて…。

やはりこいつが認めた人にしか中二ワードの名前は付けないのだろうか。ちゃっかり二つ名は付けているが。これまたよくわからん言語の。

椎名は小林に俺と向かい側の長椅子に座らすと、俺と同じ長椅子に座ってきた。


「それで、相談とはなにかな?」

少しキザっぽく訊く椎名。

俺ら三人は、小林の少しうつむいた顔に注目する。


「じつは、ね。私の友達二人がもめてて…」

少し話しずらそうに口を開く小林。

「こういう喧嘩みたいなのは別によくあることなんだけど、今回は恋愛がらみで…」


俺の視界の端で加藤が露骨にいやそうな顔をしたのはスルーするとして、この時点で俺は力になれそうにない気がするのは気のせいか…?

「私の親友のあーちゃん、七谷文と、ふーちゃん、清水風香には、彼氏がいてね、二組ともいい感じだったんだけど…」


出ましたよ彼氏持ち。俺の周りには今も昔も恋愛体験豊富な奴なんていなかったかれ、謎の新鮮な感覚があるな。


「それでね、今、ふーちゃんの彼氏があーちゃんと仲良さげにしてるって言って、今喧嘩してて…」

「でも、ちょっと仲よくしただけで浮気したことになるの?」

恋愛経験ゼロの俺が質問する。


「仲良くって言っても、二人きりで出かけたりしてるみたいで…」

なんかガチっぽいやつ。しかも二人きりて。

これ、相談第一号にしてはだいぶ重くない?

椎名さんもちょっと質問受けたの後悔してそうな顔しないでくんない?俺も逃げ出したくなるわ。

苦虫をすりつぶしたような顔をしている椎名に俺はアイコンタクトを送る。

すでに半ば諦め的な視線を送ってくる。俺も嫌なんですけど…。


まぁ、それはそれとして、今回のお悩み相談だが、一つ不可解な点がある。それは、なぜ加藤海葵に相談を持ち掛けたかということだ。

加藤といえば、あんなに目立つ存在なのに、恋愛がらみの話が何一つ知らない、という認識で俺はいるのだが…。

俺が加藤をちらりと見て不思議そうな顔をしている俺を見て、小林は続ける。


「あ、加藤さんって、中学の時、男子の告白を全部受けたって伝説があってね…」

俺の脳内で点と点が結ばれた。

俺が加藤の恋愛系の話を今まで聞かなかったのは、高校に入ってから彼氏を作らなかったから。

そして、加藤がこくってきた男子すべてと付き合っていた理由は、自分の実験に男子を使うため。

小林は当然ながら俺の何倍もコミュが広いので、加藤の中学での恋愛事情も知っているということか。


小林がわざわざ俺を通してまで加藤に相談しようとしていた理由もわかる。

あいつに直接相談とか絶対断られそうだしな。そう考えると、俺も悪いことをしたなと思う。


「最初は、ダンス部のみんなに相談したかったんだけど、この学校のダンス部、レギュラー争いとかで結構ぎすぎすしてるから、加藤さんに相談したかったんだけど、一発で断られちゃってね…」

それで今に至るというわけか。


「ところで、ここは何の部屋なのかな…?」

当然の疑問だな。というか、俺、椎名、加藤の組み合わせがまず謎だし。

「ククク…ここは、我々の隠れ家、極秘(ゲハイムニス)()闇穴(ホロウ)だ!!」

「まぁ、俺らが勝手に集まってるだけだよ」


椎名を介してしてなら何とか意思を伝えられる俺。俺的には及第点な気もする。


「なんだか意外だなぁ。加藤さんが沖名君や椎名さんみたいな人たちと一緒にいるなんて」

俺は椎名と同じカウントなのか。陰キャ代表的な?笑えん。

「私が誰と一緒にいようが、あなたには関係ないでしょう」

今まで小林の話など無視しているかのように読書をしていた(一応話は聞いていたようだが)加藤が、鋭い眼光を小林に向けて答える。


「いや、そんなつもりはないんだよ?だって、加藤さんって一年の時は誰とも話してなかったし…なんか、意外だなって」

「ちょっと、あなたが私のこと知っているような口を利かないでくれる?私が付き合う人間は、私が決めるわ」

「ご、ごめんね。そんなつもりはなかったんだけど・・・」


だいぶ攻撃的な加藤。こいつ、露骨にいやな感情出しすぎだろ…

それはそれとして、このメンツでこの問題を解決できるのか‥?早速不安しかない。



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