プロローグ ~時間は常に残酷である~
――爆轟
異世界の彼方、その深淵に密やかに潜む魔王の根城たる魔王城!!
その最奥にて、爆轟音が鳴り響いた。それは我々の想像する爆発では決して起こり得ない音だった。
我々の住まう世界では決して観測し得ない衝撃、その正体は恐るべき時空魔法によるものだ!!
時間は空間であり、空間は時間である。その時空を操作する、世界の理をも歪める究極魔法だ。
それにより魔王城は時空そのものから破壊せしめられ、戦略兵器すら霞むほどの衝撃派が一帯を襲い、全てを刻んだのだ。
――そして刹那、不自然に収まる破壊。
その破壊痕では、空気から土塊まで、その全ての存在が融け合わさって金属と化していた。
当然、これで生きていられる存在など居ようはずもない。
だが、其処に在るのは一つの浮かぶ人影!そして蠢く、謎の肉塊!!
蠢く片割れは、人呼んで絶死のガデュバディス。世に死を振り撒く原初の魔王。死そのもの。
そして浮かぶ人影こそ、今しがた爆ぜた時空魔法の使い手……真なる賢者、ジオリティクス。
勇者が滅び、全てを無くし、それでも世の為に泥を啜って生き延びた愚者と自ら嘲笑うもの。
しかし、その全ては報われた……!
今ここに、人類と魔族の悠久なる戦いに決着が付いたのであった!!!
――そう思ったのも数千年前。
「なんでいつもアイツ浮いてんの?」
「知るかボケが、あんな自慢野郎!」
「ってか、あいつマジで死んでくんねーかな。自慢が過ぎるだろ」
「知ってるか?あれって わざわざ落ちた瞬間に元の位置へ転位してるらしいぜ?」
「嘘だろ!?魔力の無駄遣いってレベルじゃねーぞ?」
「なんでも、寝てる時も浮いてるって話だ」
「いや。俺が聞くところによると、毎晩いっつも寝ないで浮き回っているらしいぜ?」
「……ね、寝ないで?」
「ああ、時空魔法の回帰ってあるだろ?自分の状態を巻き戻す魔法」
「まさかとは思うが、毎晩ずっとそれかけてんのか?」
「そう、その"まさか"だ」
「「「完全にキチガイじゃねーか!!」」」
――世界はオレに厳しかった。
どうしてこうなった……
どうしてこうなった!!!!!
これは、最大にして最強の時空魔法の使い手ジオリティクスの、その生涯の苦悩を綴る物語である!!
2020/04/05: プロローグの一部を切り取って意向の話に移植し、簡略化しました。