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VRMMORPGサービス開始

 今回は長めの一万字超え

感想・誤字・脱字報告待っています。


 「やっと届いたぁ!」

私はつい先ほどAmoz○nから届いた包みを開いて声をあげた。


 届いたものはVRヘッドセットと現在世間で騒がれているゲームfantasy saga online 通称ファンサガのソフト。


 ファンサガは半年前にβテストを終えようやく公式サービスが開始されるVRMMORPGである。

βテスト時は五万人のプレイヤーが参加し、βテストで用意されたストーリーを攻略した。

まぁ、本来の十分の一にも満たないストーリー量なのだが・・・


 私はこのゲームの初版生産版を手に入れる為にお小遣いを前借して発売の二日前から並び抽選券を獲得した。初版生産版は十万本、そのうち半分はβテスター用である。つまり、五万本のソフトを手に入れた

私はもしかすると人生の運全てを使い切ったかもしれない。


 「はぁ~早く明日にならないかなぁ~ウフフフフ私も最強の九人みたいなプレイヤーになりたいなぁ」


 最強の九人とはファンサガのβテストでトップを占めていた九人のプレイヤーである。

彼らは一人でフィールドボスを倒せる力を持ち、対人戦においても他のプレイヤーとは次元の違う位置に

属するプレイヤーである。


 それぞれ他のプレイヤーから付けられた二つ名を持っている。

「私も二つ名欲しいなぁ~」


 私は手に入れたヘッドセットの設定をしてベッドに入り眠った。






 翌朝 午前九時 ついにファンサガの開始時刻となった。

ヘッドセットを付けてベッドに横になる。一応冷房も付けてこれで準備完了だ。


 「DIVE」

ヘッドセットの起動キーをいうと私の視界は暗く閉ざされloadingという画面が表示される。


 『アバター作成』と表示が変わった。

私は既に登録していたアバターを使う。プレイヤーネームはアリン。私の本名である亜咲あさき 鈴音すずねの亜と鈴を使ってアリンにする。


 身長は160ちょっとで体系はリアルよりも少し痩せた体系。

胸は小さくした。私の胸はそれなりにあるがそのせいで肩こりが酷く正直、こんな脂肪はいらないと思う。

友達に言うと「殺す」と言われたがほんとに邪魔なだけだ。

髪は赤にする。他にも色々と色があったが私は赤が好きなので赤にする。


 『アバター作成完了・ステータス及びスキルセットをしてください』

すると再び画面が変わりステータス表示とスキル画面が現れた。


 ステータスポイント100

 STR(筋力)10

 VIT(耐久)20

 DEX(器用)15

 AGI(敏捷)15

 INT(知性)20

 MND(精神)20



 とりあえず、私は魔法師をしたかったので魔法師にお勧めのステータス振りにオートで任せた。

魔法師は耐久力が育ちにくい為最初に耐久にステータスポイントを振っている。

あとは、魔法を使う時に消費するMPに影響されるMNDと魔法を使う時に消費されるMPを少なくする

INTにもステータスを多く振られている。


 まぁ、その分に筋力のステータスが低いのだが、STRは物理攻撃に反映されるだけなので魔法攻撃が主体の魔法師にはあまり意味はない。


 「よし、次はスキルね」


 スキル枠は10枠あり、レベルが10上がるたびに10枠増やされる。

スキルにもレベルが存在し、そこはスペシャルポイント(SP)を使うことでレベルを上げることができる。こちらはレベルが1上がるたびに10ポイント貰える。


 「やっぱり魔法使いに必要なスキルを取らないとね」

 

 私が選んだスキルは『詠唱速度上昇』『魔力消費減少』『魔法効果持続時間増加』『移動速度上昇』

『物理攻撃耐性』『魔法命中(小)』『スタン耐性(小)』『毒耐性(小)』『遠視』『鑑定』


 これらの10個のスキルだ。

効果は名前のまんまでそれぞれ魔法使いに必須だったり、ちょっとしたことに耐性が付く。

スタン耐性や毒耐性などは対人戦においても強力な力を発揮する。


 いくつかのスキルには(小)などついているがこれはレベルを上げると(中)になったり(大)になったいるする。現時点でSPはないのでそれはレベルを上げてからになるだろう。


 『以上でアバター作成は完了です。ようこそfantasy saga onlineへ』


 表示が出たと思うと私の視界はガラリと変わり中世のヨーロッパのような街並みを映した。


 私の口から出たのは「すごーい」だった。


 グラフィックは今まで見てきた中で一番綺麗で、ほとんど現実と変わらない様に見えた。

自然と足が上がり私は町を歩いた。


 町を歩き始めて五分が経った。

今まではしゃぎすぎて見えていなかったが多くのプレイヤーがいた。

既に何人かのプレイヤーとグループを作っていた。


 「そういえば、これからどうすればいいのかしら?」

せっかくなので口調も変えてみる。せっかく大人っぽいアバターにしたのだから口調が子供っぽかったらおかしいだろう。まぁ、一部ではギャップ萌えとか受けそうだけど・・・


 私はメニュー画面を開く。


 アリン 職業 見習い魔法師


 レベル1

 STR(筋力)10

 VIT(耐久)20

 DEX(器用)15

 AGI(敏捷)15

 INT(知性)20

 MND(精神)20


 装備

 

 見習い魔法師のローブ

 見習い魔法師のブーツ

 見習い魔法師の杖


 これが現在の私のメニューに映っている文字だった。

右端にあるヘルプを選択していくつかある項目を全て読む。


 『このゲームについて』


 このゲームは現実では体験することの出来ないバーチャル空間を利用した本格VRMMORPGである。

プレイヤーたちはストーリーを進め各町に存在するモンスターを討伐し次の街へと進む。


 ギルドに入りギルドミッションやパーティーを組んで協力プレイをすることも可能である。


 プレイヤーは職業を選択しレベルを上げて職業を強化し副職業を育てることもできます。


 副職業はアバターのレベルが10になると職業スロットが解放される。

私としては副職業として薬剤師をしてみたいとは思っている。薬剤師はポーションを製造できるし他のバフを付与するアイテムを製作できる。いかにも魔法師と相性ピッタリではないだろうか。


 「もしもーしそこの赤髪のお嬢さん」


 ヘルプを読んでいる私に声がかかる。一応周りを見渡して私以外に赤髪がいないことを確認して私を呼んでいると確信する。


 「えっと、私のこと?」


 「そう、君だよ。お困りかなと思って声を掛けてみたんだ」


 私に声を掛けたのは黒髪で深緑色のバンダナを巻き口元も深緑色のスカーフで隠した少年だった。

少年の装備を見るとファンサガのホームページに載っていた罠師の初期装備であった。


 「えっと、そうです。どうすればいいのか分からなかったのでヘルプを見ている所です」


 「だったらもしよければ俺が軽くチュートリアルの説明でもしようか?」


 「はい、お願いします」


 私は少年に頼む。正直、怪しい人と関わりたくはないがゲームの中なので多少怪しい姿をしていても仕方ないだろう。


 「オッケー、じゃあまずは冒険者ギルドにでもいこうか」


 少年は私の手を取り冒険者ギルドに向かい駆けだす。

少年の敏捷が高いせいなのか私はついて行くのが精一杯だった。


 「ね、ねぇ、君の名前は?」


 私は少年に問いかける。


 「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺はロキっていうんだ。一応βテスターだったぜ。君の名前は?」


 「私はアリン。見習い魔法師よ。よろしくねロキ」


 私はロキという名前に少し違和感をもったが特に気にすることはなくロキの手をしっかり握り離れないように頑張って走った。リアルでも走るのは苦手だがゲームの中でも変わらないとは少し泣けてくる。


 「そうかい、俺は罠師だ。おっ、見えてきたぜ。あれが冒険者ギルドだ」


 ロキが指を指した場所には大きな木でできた建物があった。

盾の形をイメージされた看板にギルドと書かれている。


 ギルドの周りにはたくさんのプレイヤーが集まっていた。


 「ここでクエストの依頼を受けるから人が多いだろ。たまに無理やりパーティに誘ってくる馬鹿が居るから気を付けろよ」


 ロキは楽しそうな声で私にそういった。


 「気を付けるわ」

 

 ギルドの中に入った。中は酒場にもなっているみたいでNPCも多く見られる。

βテスターは初期装備とは違った装備を纏っている。

 

 そんなβテスターを囲むように何人かのビギナーが囲んでいる。


 「ミカエル様、次はどうすればいいんですか?」


 「私にも戦い方を教えて下さーい」


 そんな声が聞こえてくる方を見ると白銀の鎧を纏い美しい金髪の髪を逆立てたイケメンがいた。私の予想が正しければ彼は騎士だろう。もしかすると聖騎士かもしれないが・・・

その周りを何人もの女性プレイヤーが囲みキャーと声をあげている。


 「良いですよ。私が手取り足取り教えてあげますので安心してプレイしてください」


 「「「「「キャー」」」」」


 見てるだけでなんだこいつとなってしまう。


 私は関わらないようにロキの近くに向かう。


 「おねーさん、ビギナーのプレイヤーにチュートリアルやってあげてくれないか」


 ロキが受付カウンターで緑色の髪をした女性NPCに声を掛ける。


 「はい、かしこまりました。チュートリアルはおひとり様ですか?」


 「そうだな、俺も久しぶりだから肩慣らし程度にやっておきたいから二人で頼む」


 「かしこまりました。それでは初級ダンジョン《始まりの草原》に転移します」


 突然足元に青い魔法陣が浮かび上がり目の前に緑色のバーが現れる。

バーは少しずつ埋まり完全に埋まると目の前の景色が変わった。


 先ほどまでいたギルドとは打って変わり美しい草原に転移した。

何種類もの花が咲き、心地よい風も吹いている。


 「すごい・・・ほんとうにゲームの中なのよね」


 つい自分の頬を抓ってしまった私は悪くないはずだ。

目の前に広がる光景が全てゲームだなんて、これは本当にもう一つの現実世界、異世界と思ってもいいだろう。


 『これからチュートリアルを始めます。まずは武器をお持ちください』


 突然、私とロキしかいないはずなのに声が聞こえた。

 

 「おっ、久しぶりだなこの感覚も」

 

 ロキが隣で呟く。よく聞くとこれは直接脳内に語り掛けられているようだ。

なんだか初めての感覚に少し気持ち悪いが面白いという方が勝ってしまっている。


 声の指示通りに背負っていた見習い魔法師の杖を手に持つと再び音声が脳内を走る。


 『右上に見えます緑色のバーがHPバーです。これがゼロになってしまうと蘇生設定エリアに強制転移させられますので気を付けてください。ゼロになったときはペナルティーとして経験値が少し減少します。

 次に、その下にある水色のバーがMPバーです。こちらは通常攻撃を行うと回復いたしますので魔法やスキルの発動後の残量を確認して戦ってください。

 それでは、目の前に現れた『ホッピング・ラビット』に攻撃してみてください』


 音声が流れ終わるといきなり黄色いウサギが現れた。


 「キュキュキュ」と可愛らしい鳴き声をあげながら私達の方へ跳んでくる。


 「ほら、攻撃しないとやられちまうぞ」


 ロキが私に注意する。そうだ、いくら可愛くても敵である以上倒さなければ意味が無い。

しかも、チュートリアルで負けるなんて自体、恥ずかしすぎる。


 「魔法の使い方は分かるか?」


 ロキが『ホッピング・ラビット』に攻撃しながら聞いてくる。

ってか、一撃で倒してるし。流石はβテスターかこの程度は敵にならないと・・・


 「えぇ、わかるけど詠唱の時間が・・・」


 「オッケー、俺が時間稼ぎするから詠唱してろ」


 ロキが『ホッピング・ラビット』が集まったところに向かい地面に手を付ける。


 「《落とし穴・中》」


 すると『ホッピング・ラビット』たちは残らず消えた。いや、ロキが造った落とし穴に落ちた。


 「ほら、ここに魔法を打ち込め」


 「えぇ、分かったわ。生命の繁栄たる光と熱の恩恵よ 《炎の球(フレイムボール)


 私のMPバーの五分の一が減るとバスケットボールほどの大きさをした球が現れて

ロキが造った落とし穴へと飛んでいく。


 「「「キュピキッユピィ」」」と焼かれたことにより悲鳴を上げる『ホッピング・ラビット』たち

こんなところまで再現しなくていいよと思う。罪悪感に襲われる。


 「おっ、いいじゃん。レベルは上がったか?」


 完全に『ホッピング・ラビット』たちが消滅したことを確認したロキは私に声を掛ける。


 罪悪感のせいで気が付かなかったが、レベルが2になっていた。

ステータスはINTとMNDが2ずつ上がり、それ以外は1上がっていた。


 「えぇ、2になっているわ」


 「そっか、これでチュートリアルは終わりだな。これからはクエスト受けたりするんだけど、ソロでいくのか?なんだったらパーティ組もうぜ」


 再び私に近づき一緒にクエストを受けないか誘ってくる彼、ここまでくると下心がありそうな気がしてきた。幸い、女性プレイヤーにはハラスメント防止の昨日が付いており、セクハラをされたりした場合はすぐに運営が対処してくれる。


 「一つ聞いて良い?」


 「いいぜ?なんでも聞いてくれ」


 「あなたはなんで私にそこまでしてくれるの?」


 彼はいきなり固まり動かなくなった。もしやフリーズしたのかと思っているといきなり笑い出す。


 「ハハハハハ、助けるも何もβテスターがビギナーを助けるのに理由なんていらねぇよ、それに人を助けるのに理由もいらない。それでも納得できなかったら・・・そうだな、強いて言うなら面白そうだから」


 私の質問に対する彼の回答は真面目なのかふざけているのか良く分からない。


 「俺は面白いことが好きなんだ。罠師になったのだって、対人戦や魔物と戦うときに誰も考えもしないような方法を使って勝ちたいから、その方が面白いから・・・俺はそんな奴だ。これじゃあ理由にならないか?」


 意外と真剣な声で話す彼はきっと本心からそう思っているのだろう。まだ、下心が完全にないとは言い切れないがでも、一応βテスターらしいし、手伝ってもらうことにする。


 「わかったわ。一緒にクエストをしてもらっていいかしら」


 「おう、よろしくな」


 彼がサムズアップをすると私の視界は再びギルドの酒場へと変わっていた。


 「お疲れさまでした。以上を持ちましてチュートリアルを終了します。このままクエストを受けるなら

引き続き私が手続きを行います。


 「じゃあ、頼むよ。何か簡単な討伐系のクエストとかないかな?」

「それでしたら、こちらの『ラフレシアローズ』討伐のクエストなどいかがでしょう。依頼人はパレードに必要な『ラフレシアローズ』のドロップ品のラフレシアンを5個とってきてください」


 『ラフレシアローズ』というのはモンスターの名前である。

私の見た情報によると、『ラフレシアローズ』の撒き散らす花粉には

他のモンスターを呼ぶ能力があり、魔物大群(モンスター・パニック)

を引き起こす厄介なモンスターである。


 一体ずつ相手をするとなると大した相手ではないのだが

やはり他のモンスターを呼ぶだけあってあまり時間をかけられない相手である。


 幸い、この付近にいるモンスターは弱いのでなんとかなるだろうが

それでもやはりモンスターの数が多いと私のMPが足りるか不安になってくる。


 「ねぇ、『フレシアローズ』って私でも行けるのかしら?」

「そうだな、あまり多すぎるのは難しいかもしれないけど

罠師の俺がいるんだぜ、さっきみたいに落とし穴を作るからアリンはそこに飛びっきりの魔法をぶっ込んでやれ」


 少し不安げな私に対してロキは心強い言葉をかけてくれた。

確かにβテスターの彼がいれば『ラフレシアローズ』なんてあっという間に罠に嵌めてしまうだろう。ならば、私がすることは彼が作ってくれた罠に魔法をぶち込むだけだ。


 「そうね、ロキの言う通りだわ。私はただ魔法を撃てばいい。

ふふ、あなたって案外頼りになるのね」


 「おう、ということでクエストの受注を頼む」

「かしこまりました。クエストレベル★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

『蠢く花』を受託します。お気をつけてください」


 女性NPCが頭を下げる。


 「よし、いくぞ」


 ギルドから出ていく彼に付いていく。


 ギルドの外に出るとやはりたくさんのプレイヤーがいた。

そんな状態ではあるがどれも共通しているのはβテスターが中心となってビギナーにアドバイスをしているところだ。


 「ねぇ、そういえばなんでロキは初期装備なの?βテスターなら

もっといい装備とかあるんじゃないの?」


 他のβテスターはみんないい装備を持ってるのに対してロキは初期装備だ。

罠師の特徴としては誰もが持っているアイテムボックスに加えて罠を設置および作成するためのアイテムを収納できる

アイテムボックスが用意されている。


 彼の装備を見ると両足の太ももに巻き付けられているポーチがそうなのだろう。

アイテムボックスの容量はクエストの報酬や課金により増やすことができる。私は今の段階で50枠ある。

そのうち二つはビギナーに配られるHP回復ポーションとMP回復ポーションがそれぞれ10個ずつ用意されている。


 「そっか、まだ知らなかったのか。俺が装備しているのは結構レアな装備なんだぜ」


 ロキはうっかりしていたといわんばかりの表情を私に向ける。


 「他のMMORPGはやったことあるか?」 

「えぇ、一応何個かやったことあるわ。それがどうしたの?」


 ロキの質問が予想外だったため私は頭の上に?マークが浮かぶ。


 「えっと、ほらアバターの外見の装備と実際に装備している装備を変えることができる奴があるっだろ?

それだよ。だから、俺が実際に装備している装備とアバターの外見装備は違うんだ」


 ロキの説明を聞いていると確かにそんなことができるMMORPGがあったのを思い出す。

キャラを可愛くするための装備と強力な装備を別々でガチャがあった。

どちらを回すか悩むこともよくあった。


 「なるほど、もしかしてロキって有名なプレイヤーだったりする?」

「さぁな、俺はただこのゲームを楽しむだけさ。他のプレイヤーにどう思われていようが自分のしたいようにゲームはするもんだろ。あぁ、もちろん他のプレイヤーの迷惑になるようなことはしないけどさ」


 ロキと話ながら歩いているとあっという間にフィールドにでた。


 『蠢く花』開始致します。


 フィールドを歩きマップに表示されているクエストエリアにつくと目の前に金色の文字でそう現れた。 

それと同時に私たちの回りに気持ち悪い紫の花が現れる。


 「グギャァ」という声が聞こえると花は地面から飛び出して蔓を使い攻撃してくる。

「キャァ」私はこの世界に来て初めてダメージを喰らった。


 痛くはないのだがその代わりものすごく変な感触がする。

現実世界では絶対に受けることのないこの感触を私はうまく言葉にすることができないが、とりあえず、それだけ変な感触ということだ。


『ラフレシアローズ』の数は全部で八体だ。

私の魔法は詠唱が必要なため、やはり一人ではモンスターと戦うことは難しい。


 こんなことになるんだったら『戦闘詠唱』を覚えれば良かったと思う。

『戦闘詠唱』は詠唱しながら行動できるという魔法師にとってはモンスターから逃げながら詠唱できるというソロプレイでも

一人で立ち回ることが可能なスキルである。


 ほんとに、あのときの私を憎む。


 「ほら、よそ見すんなよ」


 私の背後から迫っていた『ラフレシアローズ』をロキは装備していたダガーで切り裂く

一撃で『ラフレシアローズ』はHPバーがゼロになり消滅する。


 「残念、ドロップしなかったか」


 余裕の笑みを見せながら消滅した『ラフレシアローズ』のあとに近づいてドロップ品の確認をしている。


 「それじゃ、俺がモンスターを引き付けて落とし穴に落とすから詠唱して待っとけ、今回は七体だから威力高いの頼む」

「えぇ、任せて。今の私が使える魔法のなかで一番火力の高い魔法を使うわ」


 「《標的横取(ヘイトスティール)》ほらこっちに来やがれ」


 ロキがアーツを使用すると『ラフレシアローズ』たちは一斉にロキに向かって気持ち悪い動きをしながら追いかける。

アーツとはMPを使用することにより使える技だ。


 分かりやすい例えをつかうと剣士はMPを使ってアーツを使い、魔法師はMPを使い魔法を使う。

ようするに魔法職以外がつかう魔法である。


 ちなみにロキが使った《標的横取(ヘイトスティール)自分にヘイトを一時的に集めるアーツで基本は盾職のプレイヤーがつかうのだが

そんなこと気にすることもなくロキは逃げ回る。

 

 そして、七体の『ラフレシアローズ』が一ヶ所に纏まるとロキは立ち止まった。


 「グギャァ」と一体の『ラフレシアローズ』が雄叫びをあげてロキに蔓の鞭で攻撃した。


 「よっと、あぶねぇ」と落ち着いた声で呟きながらバク転で攻撃を回避する。

ロキはそのまま体操選手の如く何度もバク転を繰り返し『ラフレシアローズ』との距離をあける。


 「ばーか」


 そんな彼を追いかける『ラフレシアローズ』たちの姿が突如消えた。


 「ほら、やってやったぞ。さぁ、魔法を放つのじゃ」


 やたらテンションの高ロキの言う通りに彼の作った落とし穴の底で蠢いている『ラフレシアローズ』たちに魔法を放つ。

「轟ききたるは天上の裁き《天雷強襲(ライトニング)》」


 私のMPバーのほとんどがなくなると空から青い閃光が降り注いだ。


 雷は十秒間に渡り降り注ぎ収まったと思い底を除くとドロップアイテムに変わっていた。

私のレベルも上がり3となっていた。


 ステータスはさっきと同じでMNDとINTが2上がり他は1上がっていた。


 「ドロップアイテムは・・・三個かぁ、あと二つだな。もう少しすればリポップするだろうからそれまで休憩するか。

MPポーションは持ってるだろ。先にいっとくけどクソ不味いから鼻摘まんで一気飲みした方がいいぜ」


 ロキの顔が曇ったのを見るとそんなに不味いのかと一周回って興味が沸いてくる。


 アイテムボックスからMP回復ポーションを取り出し瓶の蓋を開けて臭いを嗅いでみる。

臭いは特にしない。色は薄い水色で綺麗な色をしている。


 「いただきます」


 一口飲んだ・・・


 「まっずぅぅぅぅナニコレ」


 ロキのいったとおりクソまずい、漢方薬にさらにイソジンを混ぜたような味がする。

一口しか飲んでいないためまだ残っている。量はヤ〇ルトほどではあるが、これを飲むのはほんとにキツイ。


 「なんで運営はポーションの味を美味しくしなかったのかしら」


 「良薬口に苦しだそうだ。まぁ、社長がドSなだけだがな」


 「なんて?」


 「いや、なんでもない。それより、もうそろそろりリポップするから準備しとけよ」


 ロキが最後に言った言葉が聞き取れなかったが、まぁ今は置いておく。


 「ギュア」と声がすると同時に『ラフレシアローズ』がリポップした。


 「さっきよりかは数は少ない。そろそろ俺のサポートなしでもいけるだろ」

 

 「やってみるわ。生命の繁栄たる光と熱の恩恵よ 《炎の球フレイムボール》」


 まだこちらに気付いていなかった『ラフレシアローズ』一体に向けて魔法を放った。

魔法は『ラフレシアローズ』に直撃した。頭らしき場所にある花弁を燃やしつくすと消滅した。


 「おっ、ドロップしてるじゃん。あと一個だな。よし、他の奴も倒しちまおうぜ」

「えぇ、もう一発喰らいなさい生命の繁栄たる光と熱の恩恵よ《炎の球フレイムボール》」


 レベルが上がったことでMPが増えた私は次々に魔法を放つ。

その結果、あっという間に『ラフレシアローズ』は消滅した。


 レベルは上がらなかったが経験値は溜まった。クエスト完了報告をしたら経験値を貰えるのでそれでレベルが上がるだろう。ドロップアイテムも一個余分にゲットできた。


 「おつかれ、これでビギナー卒業かな」


 「ありがとうね、助かったわ」


 「いやいや、気にすんな。それじゃ冒険者ギルドに報告しにいこうぜ」


 フィールドから街に戻り冒険者ギルドに着いた私達は無事クエスト完了報告を終えた。


 「お疲れさまでした。こちらが報酬の1000ゴールドでございます」


 先ほどの女性NPCが報酬の1000ゴールドをくれた。

ゴールドはこの世界の通貨で1000000ゴールドで1プラチナとなる。


 お金を受け取ると私はレベルが上がった。これでレベル3だ。

ステータスは前までMNDとINTが2ずつあがっていたのだが、今回はDEXも2あがっていた。


 「やぁ、お嬢さん」


 自分のステータスを確認していると突然、声を掛けられた。

声がした方を見るとミカエル様と呼ばれていたプレイヤーがいた。


 相変わらず立派でピカピカな鎧を纏う姿は中世の騎士のようだが、私からしてみると眩しすぎて関わりたくない人だった。


 「見たところビギナーのようだね。そんなお嬢さんにはβテスターであるこの僕、《紅炎の騎士クリムゾンナイト》の二つ名で知られているミカエルが手取り足取り教えようじゃないか」


 前髪を手で上げながら私に手を差し出す姿はとても様になっているがナルシストにしか見えない。

「いいえ、大丈夫です。私には既に教えてくれている人がいますので」


 「誰なんだい?この僕よりも強いプレイヤーなのかい。まぁ、二つ名持ちの僕に勝てるとは思わないけどねハハハハハ」


 今度は右手を顔に当てて笑うミカエル。

さっき見た取り巻きたちも集まってきてミカエルとともに笑っている。


 ロキは今、預けていた装備を取りに行くとかで一度ギルドの外にでているためいないが、なんだかムカついてきた。このすかした面に一発魔法をぶち込みたいところだが街の中なので魔法は使えるない。

使うには決闘をするしかないのだが、流石に今の私で彼に勝てるとは思わない。


 「そんな奴に教わるよりも僕に教わった方がすぐに強くなれるよ。ほら、君達も何かいってくれ」


 するとミカエルは取り巻きたちに声を掛ける。


 「そうよそうよ、ミカエル様に教わった方がずっといいわ」

「えぇ、でもそれだと私達が教わる時間が減っちゃうじゃない」

「ほんとだー、それは嫌だなぁ」


 取り巻きは全員女だった。明らかに下心が満載のクソ野郎に見えてしまう。

女の方もミカエルに媚売っている尻軽だろう。私はそんなミカエルたちを無視してギルドの外へと出た。


 「ちょっと待ちなさいよ。せっかくミカエル様が誘ってくれているのにその態度は何?」

「別に、私は既に教えてくれている人がいるって言ってるじゃない。それにあんたらも私が入ったらミカエル様に構ってもらう時間が減るのじゃなかったの?」


 一人の女が私の肩を掴んで声を荒げる。

こう言う奴は盲目というか周りが見えていないっていうかイノシシみたいに突っ込む奴だから


 「お嬢さん、勝手に外に出てしまうとはひどいな。それより、これからクエストに行くんだ。お嬢さんも一緒にどうかな」


 明らかに嫌そうな表情を浮かべている私を見てもミカエルはまだ誘ってくる。

取り巻きの女も私の周りを囲むようにして私が逃げられないようにするとじりじりと距離を詰めてくる。


 「さぁ、僕と一緒にクエストに行こうじゃないか」


 一人で劇をしているかのような彼の話し方に私は更に嫌悪感を抱く。


 「なぁ、おたく。人の連れに何してんの?」


 




 面白かったらブックマークお願いします。

 

 次回は少し短めですが面白く書きます。

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