3 勇者一行の末路とこれから
「知るか!アメジストに勝ってから、勇者は急にアメジストとの二人旅を始めおったのだ!その後、我等はずっと劣勢を強いられとるぞ!」
ふむ……
戦いは数だからね……
ある意味では当たり前か。
……ん?
「どうした?何を思い付いた?」
ねぇ、どうして向こう側が複数で来てるのに、相変わらず一人で戦ってるの?
「は?戦いとはそういうものだろう?」
いやいや……
鎌倉時代の武士じゃないんだから!
しかも向こうが変えたんだから、遠慮なんて要らないじゃない!
「はぁ、具体的にどうするのだ?」
本来なら、ほかの四天王との共闘が効率は一番良いんだけど……
現状不可能だから、数で押そう。
この城にも衛兵隊や近衛隊は居るんだよね?
数が聞きたいんだけど……
「ん?衛兵や近衛は魔王様の指揮下だから無理だが、各四天王にはそれぞれ軍団がある。全て我が指揮下に一時的だが入っておるからな…ざっと兵力40万が動かせるぞ!?」
四天王一人当たり兵力10万かよ!
使おうよ!
なんでそれで負けてんだよ!
「使う?どうやって?」
考慮の外かよ!
仕方ないのかなぁ……
まぁいいや。
4対40万の戦いで行けば、負けようがないわ。
「は?そんなもんは時間稼ぎにしかならんだろう?」
あぁ、一対一の戦闘を40万回繰り返すつもりなわけね?
そうじゃないの。
一ターン当たりに、向こうは4回の攻撃。
こっちは40万回の攻撃が出来るわけ!
さっきのガーネットちゃんの状況の逆って言えばわかる?
「逆?あぁ!そうか!そうだな!手数が増えれば……」
そういうこと!
さぁ、もうこの城の近くまで勇者が迫ってるんでしょ?
時間との戦いだよ!
一人でも多くの兵士をここに召喚しなきゃ!
「よしっ!わかった!そうと決まれば、わが城の兵力10万は、我が近辺に!各居城よりワームホールで、兵を移動させよう!」
待って?
この部屋に鮨詰めにする気?
駄目だよ!
狭すぎるって!
城の前の広場……
いや、40万だったら、もっと広くなきゃ……
えっと……
この魔導水晶に表示された平原は何処?
「ん?ここなら、森へと続くアベンチュリン平原だ。さっきの碧雲広場を抜けた先にあるな」
ふむ、城の守りを解除せずに、兵の集合と展開が可能なのはありがたいね。
ここに10万の兵力を急行させて展開、各居城へは、足の速い順にワームホールを使用して、平原に集合する旨指示を出したら、ガーネットちゃんもすぐに出発ね!
「構わんが……まだ、勇者の到着には三時間ほどある。それに併せれば良いのではないか?」
何言ってるの?
こちらがあちらの状況も筒抜けになってると見て良いわけだよ。
つまりは、何らかの手立てを講じるかもしれない。
「そして、我らにとって一番まずい状況は……」
もちろん、不利な状況での遭遇戦だよね?
「……わかった。親衛隊を常に50名侍らせるとしよう」
それで良いよ。
後は、どれだけ有利な状況で開戦できるかだね……
「ガーネットーっ!なんって卑怯な真似してくれますのーっ!キャーッ!」
これは戦術だよ。
まずはブルートパーズのHPが尽きたか、ご愁傷さま…
猫尻尾も可愛いね。
「ふみーっ。ガーネットちゃんが、この作戦の肝に気付くなんてどうしちゃったの?お胸と一緒でちょっと足りてないと思ってたのにっ!この私の完璧な作戦が!うぎゃあああああ!」
喧しいっ!
お前が黒幕かよっ!
アメジスト!
まぁ、最初に負けたのはお前だしな……
作戦立案したわけか!
「痛っ!痛いじゃん!あたたっ!1回1回の攻撃は大したこと無いのに!あっ!あぁっ!あああああ!も、もぅ!らめぇえええええ!」
エメラルド……
単に兵士に攻撃くらってるだけだよな?
その口調はなんだよ?
格闘バカに何があったんってんだよ!?
「……っ!くっ!うっ!うあっ!んっ!うぅ、はっ!おぉっ!ぐぅ、おぅわ!んんっ!ふっ!っ!!!!!」
無口系主人公か!
意思が感じにくい呻き声をあげるんじゃない!
倒せたかどうか、判りにくいわ!
……っていうか、この声?
勇者って女じゃん!
だから宝石化出来なかったのか?
宝石化の条件に授精があるもんなぁ……
そら無理だね。
「……なぁ。何か凄くあっさり勝ったな…我の出番無かったぞ?」
いや、そうでもない。
戦闘召集に間に合ったのが23万だったし、その8割が攻撃に参加してやっと倒せたの見てただろ?
ていうか、いくら強くても、普通は指揮官が自ら戦ってたら、その戦は敗けだからね?
「犠牲者は4名か……奴等の先制攻撃から、身を呈して庇ってくれねば、ここに転がっていたのは我だったかもしれぬな……」
手厚く報いてやってよ。
ガーネットちゃんを立派に守ったんだからさ。
レズ勇者様と旧仲間達はどうするの?
「処遇か……再起されても困るからなぁ……エメラルド以外は、褒美として兵達全員に下賜してやるとしようか。指揮官らしく」
……ガーネットちゃん怒ってるよね?
3人で23万人のお相手?
一人あたりざっと7万人をお相手かぁ……
頑張ってねとしか言い様がないっすね。
「まぁな。だが、我が魔王軍に逆らったのだ。致し方あるまいよ」
まぁ、勇者は下手に殺すとリポップするかもだしね。
手加減出来ない奴には任せない方が良いかも……
「なぁ……しかし、お前は何者なのだ?確か、ずっと背後霊として死んだ目をして佇んどったはず……ピクリとも動かんかったのに。急に覚醒しおって。何が目的だ」
ガーネットちゃんは、僕のお嫁さんだからね。
勇者なんかにヤらせたくなかっただけだよ?
愛してるもん!
「ははっ!そうか。お前はブレないな……では行こうか」
ん?
何処へ?
折角城に攻めてきた敵を撃退したとこなのに。
「魔王様のところだ。我の伴侶を報告せねばならん」
え?
マジで僕で良いの?
「なんだ?先程までの言葉は嘘か?」
いやいや……
真実だからこそ、こんなスケベな僕で良いのって聞いたんだけど?
しかも、霊体だから触れ合えもしないよ?
「あぁ、良いとも。男なんて大抵はスケベなものなんだろ?それに我自身も大して変わらんしな!真に我を愛してくれるバカなら、本望よ」
男前だね。
だが、そこが良い!
愛してるよ。
ガーネットちゃん!
「ふふっ!さっさと魔王様に受肉してもらって爛れた毎日でも送ろうぞ」
ん?
魔王様ってそんなことまで出来るわけ?
「あのなぁ……我等は元々魔王様の装飾具だったのだぞ?それを受肉させたのは魔王様だ。背後霊ごときの受肉など、雑作もあるまい」
そりゃありがたいね。
「しかし、我はお主の名前も知らんな……これでは、魔王様に紹介も出来ん。我の未来の旦那様よ。名前を告げてはくれないか?我の名は碧雲のデマントイドガーネット」
僕の名前は……
楽しんで頂ければ幸いです。