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誰が為の「キビダンゴ」 2

 「お爺さんの意見に見るべき所が有るとすれば、それは桃太郎が携帯糧秣として『キビダンゴ』を必要としているのではない、という部分なのかも知れません。」

 お婆さんは、考え考え、ゆっくりと話します。

 「レーションとしてなら、より適当な物を準備する事が出来ますから。それに『キビダンゴ』と看做みなされるモノである事、という条件が……私の灰色の脳細胞に引っ掛かります。」


 「そうだなあ。自衛隊では赤飯とタクアンの缶詰が人気だなんて噂を聞いた事があるなぁ。」

 お爺さんの与太話を、お婆さんは黙殺します。


 「武器にする、という考え方は無い事もない……かも知れません。」

 お婆さんの出した結論に、お爺さんは鼻を高くします。

 「やはりお前も、その結論に達したか! どうする? M68破片手榴弾でも団子の中に仕込んでおくか?」

 「手榴弾を包んだら、それは餅のサイズになってしまいます。とても団子とは呼べますまい。餅のサイズでOKならば、鏡餅サイズにしてクレイモアでも仕込んでおけば良いじゃありませんか。」

 「なるほど、お前は賢いな。」お爺さんはお婆さんの明察ぶりに帽子を脱ぎます。「それでは、何を包む?」


 「何も包まなくて良いのかも知れません。」

 それが、お婆さんの出した答えでした。

 「何も包まなくても、団子そのものが兵器であるのです。」


 「げえええ! それは一体全体どういう事なのだ?!」

 お爺さんは驚きのあまり、大きな悲鳴を上げてしまいました。

 「まさか団子にボツリヌス菌でも注射しておくのか? あるいはコレラ菌とかO-157……?」


 「そんな危険な生物兵器を作れば、持ち運ぶ桃太郎自身にも危険が及ぶじゃありませんか! 違いますよ。中毒症状かアレルギー反応を利用するのです。」

 「なるほど! それならば理屈が通じる。桃太郎は、鬼が何かのアレルギーか忌避食材を持っているという情報を掴んだのだな。……けれども、鬼が苦手とする穀物って何だろうな? 黍アレルギーは、米や麦のそれと症状は似ているが、激烈ではないと聞く。蕎麦アレルギーの様な高い効果は得られないのかも知れんぞ?」

 「お爺さん、言わずもがなの事ですが、生物種によって反応は様々です。人間が大丈夫でも、犬にはタマネギが、猫には二枚貝が毒であるように。」

 「婆さんや、お前は先ほど『オニ=人間説』を採用していたように記憶しとるんじゃが……。」

 「細かい事はいいんですよ! 何せ御伽話ファンタジーの世界なんですから!」


 結局、お婆さんがこしらえたのは、餅粉・強力粉・黍粉で作ったお団子でした。

 あわひえも混ぜようか、小豆餡を塗ろうかとも考えましたが、桃太郎から特に「それを使うように。」と指示が出ていた訳ではないので、敢えてシンプルに仕上げたのです。

 何か特殊な成分を追加する必要があるのなら、桃太郎が密かに自分で細工するでしょう。


 ◎『キビダンゴが完成しました!!』


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