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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
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第66話 洋服の作成依頼

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


9/12 改稿あり 加筆あり

 大将軍様の私室の前に来て、扉をノックする・・・中から「どうぞ」という声が聞こえてくる。

 中には椅子に座っている大将軍様と、隣に立っている奥さんがいた。

 俺とユカさんは「失礼します」と言ってから中に入り、扉を閉める。


「顔色が良くなりましたけど、御加減はいかがですか?」

 ユカさんが、大将軍様に近づき言う。


「体調はいいのだが、上手く動けん・・・もどかしいな」

 大将軍様は右手を胸まで上げ、握ったり開いたりしながら言う。


「寝たきりだったんですから仕方ないですよ、御大事になさってください」


「少しいいかしら?」

 大将軍様の奥さんがユカさんの近くに行き、肩に手を置いて言う。


「え? はい、何でしょうか?」


「この洋服は何処で買ったものなのかしら? はじめて見るデザインですわね」


「え? あ! これは、アヤコさ・・・仲間が作ってくれました」


「それを私も作ってもらうことは出来るのかしら?」


「あの~・・・カナタさん、出来ますか?」


「そうですね、聞いてみなければ何ともいえませんが、頼めばたぶん作ってくれると思いますよ」


「それは本当!? 嘘じゃないわよね?」

 大将軍の奥さんが、目を見開いて言う。


 あぁ、何処に行っても女性はお洒落がすきなんだな・・・というか怖い。


「ユカさん、折角なので隣の部屋などに行って、嫌じゃなければ下着も見せてあげられませんか?」


「え? え? 何でですか?」


「アヤコさんは、この国にはレースとか無いと言っていました。洋服を作るなら下着も見て貰い、一気に作ってもらうのがいいと思います」


「はぁ・・・そうですか・・・・いいですよ、分かりました。では、こちらへ」

 ユカさんはあきらめた様に言い、2人は、隣の部屋に向かっていった。


「いや、あの・・・すまんな、いつもはあんな事は言わぬのだが」

 大将軍様は、困った顔をしてこちらに言う。


「いえ、女性は、色々気になるものですよ・・・」


 隣の部屋で、奥さんがキャーキャー言っている。どうなってるの? とか、これ作れるの? とか。


「いや、本当にすまん」

 大将軍様は、小さく頭を下げる。


「いえ、仕方がないですよ」


 その後ユカさんが、疲れた顔で、奥さんが満面の笑みで出てくる。


「カナタ君といったかしら? どの位で出来るのかしら? お金はいくらでも出すわ、どうなの? 出来るの?」

 奥さんはすっごい笑顔だが、プレッシャーを感じる。


 こんなことなら、魔物を目の前にした方がまだマシなんじゃ・・・


「私が作ってるわけでは無いですし、一人ひとり胸のサイズも違うので調整が必要ですし、アヤコさんに聞いてみないと」


「直ぐに、呼んで来てもらえないかしら? 義姉さん達にも言っておかなくっちゃ」


「あの・・・もう夕方です。明日でもよろしいでしょうか?」


「何を言ってるのかしら! 緊急を要するのよ! 良い? 今から連れてきて貰えないかしら?」


 今日もみんなで晩御飯を食べれると思ったのに・・・仕方がないか・・・


「解りました、今から行ってきます。ですが、確実につれてこれるとは思わないで頂きたいです。よろしいですか?」


「いいわ! その時はこちらからそちらに向かいます! 頼みますわよ!」


 まじかよ・・・結局絶対今日になるのか・・・アヤコさん、ごめんなさい。


「はい。では、ユカさん帰りましょうか」


「はい、解りました」


「なんか・・・すまんな」

 大将軍様が頭を下げる。


「あなたは黙ってて」

 奥さんは、大将軍様を睨み付ける。


 大将軍様はシュンとして、椅子に座りなおした。

 この世界でも奥さんの方が強いのかもしれない・・・まぁ、女性が強い方が良い国って気がするからいいだろう。

 ユカさんと一緒に屋敷へ戻り、アヤコさんを探す


「ユカさん、アヤコさん何処にいるか分かります?」


「地下じゃないですか? 工房とかは、前に地下にするって言ってた気がしますし」


「そんな事言ってた気がしますね・・・行って見ましょうか」


 地下の1室を訪れる。ノックをすると「どうぞ」と返ってきた。


「アヤコさん、いいですか?」


「おかえり。どうしたんだい? そんなにあわてて」

 アヤコさんはレースを編んでいる手を止めて、こちらを見る。


「ただいまです。実は大将軍の奥さんにアヤコさんが呼ばれてまして」


「どういうことだい? 会った事も無いのに」


「ユカさんの洋服を気に入ったみたいです。下着も一緒に欲しいみたいなんですが、大丈夫ですか?」


「そう言うことかい、もちろんいいよ。明日行けば良いのかい?」


「いえ、あの、今から・・・」


「へ? 今からかい? う~ん、訳有りって事かい? じゃあ、仕方がないね」


「はい、お願いいたします。サンプルとかあれば持って行って欲しいのですが・・・」


「解ったよ、色々と箱に詰めるから少し待っててくれるかい?」


「はい、了解しました」


 タダシさんに遅くなることを伝え、アヤコさんを連れて王城へ。

 門番の人と顔見知りになってきたが、ちゃんと許可証を見せている・・・小説や漫画だと顔パスが多いが、仕事をちゃんとしているところに好感が持てるね。

 大将軍の部屋に行こうと思って進んでいると、大将軍の奥さんが待ち構えていた。


「お待たせいたしました。こちらが洋服製作者のアヤコさんです」


「よろしくお願いします」

 アヤコさんは、頭を下げながら言う。


「いきなり呼び出したりして申し訳ないわね。詳しい話は部屋でしましょう、こっちよ」


 別の部屋へ案内されると、中には鼠の獣人と狸の獣人の女の人がいた。


「お義姉様方、連れてきたわ。本当に驚くわよ~」

 大将軍の奥さんは、ニヤリと笑う。


 姉さん? ってことは王妃様なのかな?


「そんなに凄いの? 見たところ、可愛いとは思うけど・・・・そこまで?」

 ネズミの獣人の王妃様が、首をかしげながら言う。


「そうね、可愛いと思うけど・・・」

 狸の獣人の王妃様も首をかしげながら言う。


「申し訳ありません、テーブルにサンプルを置いてもよろしいですか?」


「ええ、もちろん。お義姉様方もいいですわね」

 大将軍の奥様が、こちらに言う。


 そう言われ、生地やレース、ショーツやブラなど、色々置いていく。

 王妃様2人は、口をぽかんと開けてものすごく驚いた顔をしている。

 大将軍様の奥さんは、何故かものすごいドヤ顔なのだが・・・


「どう? 凄いでしょう!」

 大将軍様の奥さんは王妃様2人に向けて言う。


「これは何? 魔糸なのよね? でもなんでこんなにピカピカして綺麗なの?」

 狸の王妃様は、布を手に取り興奮している様に言う。


「こっちもよ、これは花? 布なのよね? どうなってるの?」

 鼠の王妃様は、マジマジと見ながら言う。


「これは、ビロードといって特殊な織り方で光沢を出しています。こちらはボビンレースと言って、織りながら模様を作っていくものです。作成には時間がかかるため、小さいのですが」


「アヤコさん、下着の話とかになると思うので一旦出ますね」


「わ・・・分かったよ。でも敬語とか苦手だよ・・・大丈夫かい?」

 アヤコさんは顔をこわばらせワタワタしながら言う。


「技術の説明ですから大丈夫ですよ、そんな訳でお任せします」


「仕方ないね、いつもの喋り方でいいんだね」


「はい、お願いします。皆様、男の私に聞かれたくない話が出るかと思いますので、外に出ています」

 俺はそう言うと外に出る。気持ちは楽になるが、結局王城にいるため気は休まらない・・・

 さて、どうすっかねぇ~・・・暇つぶしになることとかないかな?


 窓の外をぽーと眺めながらそんな事を考えていると、足音が聞こえてくる。


「カナタではないか、夜遅くにどうしたのだ?」

 陛下が笑顔でこちらに向かってくる。


「奥様方に洋服について聞かれたので、製作者を連れてきたんです」


「なるほど、重要な案件があると騒いでいたのはそれか・・・すまんな」


「いえ、女性はいつでも美しくありたいものですから、仕方がありません」


「その服が作った物か? 出来はいいと思うが騒ぐほどの物か? 分からん」


「男の我々には理解できないことなのでしょう。陛下、この下に着ているインナーなのですが、特殊素材で出来ています。見てみますか?」


「面白い、見せてみろ」


「では、上着を脱いでもよろしいですか?」


「構わん」


 服を脱ぎ、カーボンナノチューブのインナーを渡す。


「光沢があるが・・・そんなに凄い素材なのか?」


「百聞は一見にしかずと言いますし、試してみるのが早いかと思います。剣を振るえる所はございますか?」


「うむ、では庭に行くぞ」


「畏まりました」


 城の裏手にある庭に出る。そこには剣の跡でボロボロで壊れそうな案山子や、鉄の大剣が置いてあった。


「ここでいいか?」


「はい、案山子にこの服を着せますので、そこの大剣で思いっきり切ってください」


「ん? どういうことだ? 案山子が壊れるだろう?」


「物は試しです、お願いいたします」


「薬の事もあるからな、一度試してみよう」


 案山子にインナーを着せて、袖の部分を持ち魔力を流し離れる。


「お願いします」


「解った、試してみるとしよう」


 魔力は、思いっきり補充しておいたから、すぐに魔力切れにはならないはずだ・・・たぶん。

 思いっきり案山子に大剣が振り下ろされる・・・が、案山子に当たっても、音や振動が少しするだけで、壊れたりはしなかった。


「ほほぅ、身体強化を使ってもいいか?」


「はい、どうぞ」


 身体強化を使っても同じ結果となる。


「これは素晴らしい! これを・・・この服を何処で?」


「皆で作りました。しかし、このインナーにも難点があります」


「何だ? 費用がかかりすぎるのか?」


「いえ、素材の力を引き出すときの、魔力の消費が激しいこと、もう1点は・・・そうですね、剣で叩かずに案山子を押して見て下さい」


 陛下は剣を案山子に当てると、ゆっくりと押す・・・すると案山子は、壊れてしまった。


「このように、衝撃以外は消せません」


「なるほどな、それを差し引いても、素晴らしい服なのだがな。魔力量の乏しい我らには、過ぎたる物と言うことか」


「もし使えるようになれば、お渡ししますよ。ただし、素材が特殊なので多くは渡せません」


「いいのか? この素材はダンジョン産では無いのか?」


「素材はダンジョン産と言えますが、どのダンジョンで取れた素材かは言えません。魔力の多いフランソワーズ様の装備は作り始めています」


「そうか・・・何から何まで、すまんな」


 そんな話をして、別れ・・・アヤコさんを連れて屋敷に戻る。

 これだけ利益を差し出せば悪いようには出来ないだろう・・・そんな事を思いながら眠りに就く。

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