表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
83/406

第59話 奴隷契約

ブックマーク・評価、本当にありがとうございます


8/24 改稿あり 加筆あり

「交渉・・・畏まりました。事務所へ参りましょう」

 奴隷商は首をかしげ言う。


「はい、お願いいたします」

 来た道を戻り、入り口近くの建物へ入ると、左側の扉を開け


「では、こちらで少々お待ちください」


「はい、ありがとうございます」


 通された場所は応接室なのか、真ん中に長方形のテーブル、長椅子は2つと1人掛けの椅子が2つ、壁には女性の天使の絵がかかっている・・・ゴテゴテしておらず、かなりシンプルな部屋だった。


「お待たせしました。喉が渇いておいででしょう・・・どうぞお召し上がりください」

 奴隷商はそう言うと、コップを3つ出す。

 中は紅茶のように見える・・・毒とか入っていないよね?


「ありがとうございます」


 ファウストさんが何の警戒も無く飲んだ・・・が、何ともないようなので、一口飲んでみる・・・美味しい。


「紅茶ですか? 美味しいですね」


「はい、御口にあったようですね。では、早速ですが商談させていただきます」


「よろしくお願いいたします」


「奥にいた3人なのですが、全員犯罪奴隷となりますが、よろしいですか?」


「はい、構いません」


「規則ですので、どのような犯罪をしたのか申し上げたいと思います」


「いや、聞いてますので大丈夫です」


「畏まりました。それで、家族全員買っていただける・・・それでいいですか?」


「もちろんです」


「3人で、金額は大金貨1枚ですが、よろしいですか?」


「それは・・・」


「その金額では、前回と同じだ。奥さんが死病ということを考慮しないのか?」

 グロスさんが俺の言葉を遮り奴隷商に言う。


 あらら、先に言われちゃったな・・・


「失念しておりました。金貨7枚でいかがでしょう? 最初に2人を買い取った金額ですのでこれ以上は・・・」


 あれ? 一気に下げたぞ。もしかして・・・良い人なのか?

 考えてみると、奴隷のことを一度も奴隷と言っていない。商品だと言っていたし、臭いは酷かったけど掃除は行き届いていたように見られるし、怪我をした奴隷も手当てされていたし・・・

 人族は、利益至上主義だと思っていたよ・・・


「まずは、あなたの事を誤解していたようです。申し訳ありません」


「何のことでしょうか?」


「奴隷商というと、人を人と思わず、利益のみを追い求める人だと思ってしまっていました」


「なるほど、それで交渉をといったのですか・・・そうですね、そういった奴隷商が多いのも事実です。仕方ありません・・・しかし、私は敬虔なるレティア教徒です。全ての人を愛せ・・・ですよ」


 にっこりと微笑む奴隷商・・・宗教は知らないけど、良い人ではありそうだ。


「ならば何故! セードルフ達を他国になど!」

 グロスさんが声を荒らげ奴隷商に言う。


「死病の傍らにいれば、死病になるのは必然・・・ならば、別れた方が命の無駄にはなりますまい」

 奴隷商は変わらず淡々と言い放つ。


「家族をわける事がどれだけのことか解らんのか!」


「貴族であれば、手厚く保護されましょう・・・ですが、平民は・・・自分から出て行くものもいるのですよ? 知りませんかな?」


 そう言われるとグロスが黙ってしまった。


「すみません、後学の為に聞かせていただきたいのですが、あなたにとって奴隷とは?」

 俺は軽く手を上げて聞く。


「奴隷ですか・・・あくまで商品でございます」


「手足が無い奴隷・・・いえ、商品もいましたが、手当てがされていましたよね?」


「手当てするのは当たり前でしょう? 商品ですので・・・そういうのが好きな方もいますしね」


「掃除もされていた気がするのですが」


「もちろん毎日していますよ。商品が病気などをして働けなくなってしまったら、意味は無いでしょう?」


「なるほど、商品たちには長く働いて貰いたいという事ですね?」


「その通りでございます。皆様のお役に立つのが奴隷の務めでございます」


「なるほど、解りました。ありがとうございます。他の奴隷商も同じ考えですか?」


「いえ、私どものようなロートルは同じ考えの者が多いですが、今の主流は・・・」

 顔を背け悲しそうな顔をしている。


「では質問があります。他の奴隷商が、大金を稼いだらどうなると思いますか?」


「あまり考えたくありません・・・死病を患っているのに、健康だと偽って売ってしまうようなやつらですので」


「陛下が、犯罪奴隷を買おうと言っているのを偶然聞いてしまったのですが・・・しかも大人数を・・・この国の全ての奴隷商に均等に発注した場合、どうなると思いますか?」


「まさか! そんな・・・いえ、多くの死病患者の温床になってしまうかと・・・」


「他の奴隷商を改心させる事は可能ですか?」


「無理でしょう・・・利益のみを求めているので・・・」


「では、私とグロスさんが陛下に言ってみましょう。ここで買うようにと」


「お待ちください、それでは余りにも・・・」


「独占になってしまうと?」


「その通りです」


「しかし、こう考えられませんか? 奴隷であろうと人として接することが必要である。その事を他の方々に知らしめるいい機会であると・・・

 そう、これは・・・女神レティアがあなただけに与えた試練なのかもしれません。

 私どもがここに来たのも、何らかの啓示やも知れません。

 実行する・しないは自由ですが・・・もし、試練だった時に実行しないを選んでいた場合、何かの拍子に、女神レティアに出会ってしまったらどうしますか? あなたはどの様に言い訳するのですか? 気が付かなかったと? 荷が重すぎると?

 あなたは解っている筈です。このままではいけないと・・・本当にいいのですか?」


「そう・・・その通り・・・そうですな! 目が覚めました! あなたの仰るとおりです!

 御代は金貨3枚・・・いえ、結構です。商品の3人は、私からのお礼として受け取っていただきたい。死病にかかっているかもしれませんが、治るように祈っております。

 陛下にはよろしくお願いいたします」


 あれ? やっちまったか? どうしよう・・・最近交渉ばかりやっていたから、へんてこなギフトでも増えてるんじゃないのか? 詐欺師のギフトとかか?

 あぁ・・・最近ギフトを調べてないから、調べとかないとな・・・


「解りました、進言させていただきます。ですが、100%では無い事をご承知ください」


「もちろんでございます。私だけで・・・いえ、私どもだけで今の奴隷の待遇を改善してみせます!」


「それは頼もしいですね、よろしくお願いいたします」


「直ぐに準備をしますので、少々お待ちください」

 奴隷商はそう言うと、さっと外に出て行った。


「カナタ殿・・・どうなさるのですか?」

 グロスさんが、心配そうに言う。


「少しやり過ぎちゃったかもしれませんが・・・まぁ、何とかなるんじゃないですか?」


「あんな一瞬で人が変わる所を初めて見ました・・・魔法ですか? 魔道具ですか?」

 ファウストさんも驚いたように言う。


「そのような魔法も、魔道具も、ギフトも、持っていませんよ! たまたまですたまたま」


「奴隷の件、進言だけはしてみましょう・・・ですが、移動させようとしたことは忘れません」


「う~ん、そうですね。たぶんですが、奴隷商が言ってたように、死病に2人がかからない様にしたかったのでは無いかと思います。最後まで働いて貰いたいみたいにも言ってましたし、グロスさんも気が付いてましたよね?」


「それは! 頭では理解していますが、気持ちが・・・」


「まぁ、3人がお金がかからないで手に入ったんですから、万事オッケーってことで」


 そんな会話をしていると、1人の筋肉質の人が来て「準備ができましたこちらへ」と言い、俺達は別棟に移動する。

 そこには奴隷商と3人がいた。3人とも首輪を着けている。


「お待たせいたしました。全ての準備が整いました。後は血を一滴、首輪の魔方陣の部分に垂らして頂ければ完了です」

 奴隷商は満面の笑顔で対応してくれる。


「ありがとうございます」


「いえ、あなた様がいらっしゃらなければ、私は目が醒める事もありませんでした。女神レティア様に感謝を」


 跪き、祈りのポーズを捧げてブツブツ言っている・・・邪魔しちゃ悪いと思い、血を一滴ずつ首輪に垂らす。

 首輪の魔方陣が淡く輝き、数秒して輝きが収まる。


「失礼いたしました。今刻んである命令は、主人の命令遵守、主人への反乱禁止です。

 命令変更は、魔方陣に手を触れながら【命令変更】といえば変更できます。

 成功した場合は淡く光り、失敗した場合は警告音がなります。

 命令の詳細を見たい場合は、こちらに御越しいただければいつでも確認ができます」


「この首輪は取ることはできないのですか?」


「妻と子の首輪は取ることが任意で出来ますが、少し様子を見た方がいいかと思われます・・・取った直後に殺される主人もいますので」


「分かりました、ありがとうございます。助かりました」


「いえ、あなた様に女神レティア様の祝福があらん事を」

 奴隷商は終始笑顔を絶やさず、答える。


 とりあえず全員で屋敷に戻ることに・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ