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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
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第57話 薬の作り方を教える

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


8/20 改稿あり 加筆あり

 ティンバー陛下の後ろについていくと、1つの扉の前で止まった。


「この部屋は今は使われていないが、掃除はされているのでちょうど良いだろ」


「昨日言った物は準備されているのでしょうか? 無ければ屋敷からとってきますが」


「もちろん大丈夫だ。準備したが材料や設備などがあれだけで、良いのか?」


「私が教えられる物は、初歩中の初歩でございます。後はファウストさんと薬師の皆様でお願いいたします」


「それで良い。他に何かあれば言うがよい」


「では、1つだけ・・・薬は量産でき、色んな方の手に渡すことが出来ると思いますが、危険がございます」


「情報の漏洩か? 犯罪奴隷を使い、喋らぬ様縛るつもりだ。そして、城の地下を改装中だ。倉庫だったところを製作現場にする。速記もやめたぞ」


「漏洩もそうですが、薬の効果についてです」


「効果とな? 同じ物が出来ぬということか?」


「いえ、同じ物は出来ます」


「もったいぶるでない、何があるのだ?」


「薬に頼りすぎると、薬が効かなくなってくるのです」


「ポーションの飲みすぎの時のように、身体が薬に慣れてしまうということか?」


「いえ、薬の効かない病・・・いえ、死病が進化し、薬が効かなくなってしまう事があるのです」


「何だと! そうなったらどうすれば良いのだ? 何かあるのか?」


「もっと強い薬を開発するしかありません・・・そうならないために、死病の予防をしてみるのはいかがでしょう?」


「予防とは? もしや防げるのか? 死病をか?」


「絶対ではないのですが、聖女ユカさんや私の見立てですと、防げる可能性があります」


「何をすれば良い? 祈祷か? 生贄か? 何をすれば?」


「端的に言いますと、整理・整頓・清掃・清潔ですね。まずは、手洗いうがいの徹底。大きな所ですと、下水の見直しから行うのが良いかと」


「そんな事でか? 死病の原因は何なのだ?」


「汚れなどについている細菌が原因ではないかと思います。細菌は体の自浄作用により排出されますが、排除が間に合わないほど多く、取り込んでしまっているのでは? と私は愚考いたします」


「汚れだとすれば、農奴が1番汚れているが、死病はいないぞ。何故だ?」


「魔物や汚れた武器での傷や傷口に、汚れがついている時に回復魔法などで、無理やり傷口を塞いでしまい外に出ずに、身体の内部に残ってしまったんだと思われます」


「なるほどな。では、傷を負ったときはどうすればよい?」


「綺麗な水で洗い流すか、浄化魔法で傷口の菌を取り除いてから、回復をした方がいいと思います」


「なるほどな、解った徹底させよう」


「ありがとうございます」


「では、早速だが薬を頼む」


「畏まりました」


 陛下は一度頷き、きびすを返して去っていった。


「素晴らしいですね、カナタさん。良く陛下とあのように話が出来ますね」

 ファウストさんは、拘束を解かれたようにふぅとため息をついてから言う。


「そうですか? 気さくな陛下ですから、大丈夫だったのでしょう」


「私は10年ほど御仕えしていますが、まだ慣れません」


「仕えていないから話せるのかもしれませんよ。じゃあ、時間がもったいないですし、薬の作り方をお教えします」


「最初に質問なのですが・・・何の薬の作り方なのかをお聞きしても良いのでしょうか?」


「もちろんですよ。光茸に代わる、死病の新しい薬ですね」


 目を見開き、口をぽかんと開けて微動だにしていない・・・大丈夫なのかな?


「お~い、大丈夫ですか~? お~い!」


 目の前で手を振って呼びかけても、反応が全く無い・・・死んでるんじゃないのか?


「へ? 失礼失礼・・・聞き間違いですよね? 薬師にとっての悲願でもある物を作れるだなんて・・・」


「良かった生きてた・・・一応製作者はこの国ということになっています。絶対に喋っちゃダメですよ」


 それを聞くと、頭を抱えて奇声を発し、膝を突いてクネクネと動いている・・・壊れたっぽい。どうすりゃ良いんだ?


 数分、ブツブツ言いながらクネクネしていたが、ピタッと止まり、正気を取り戻した。


「すみません、取り乱しました」


「いえ、大丈夫ですよ~、作っちゃっていいですか?」


「ええ、もちろんです。よろしくお願いします」


 部屋の中にある桶は、大体1m位でかなり大きい。1つの桶の中には、カビの生えたミカンがたくさん入っていた・・・正直こんなにいらないのだが・・・


 面倒なので魔法で作ろうと思うのだが、何か言われないだろうか・・・まぁ大丈夫だろう・・・面倒だし。

 布をマスクにして口と鼻をかくし、頭にも布をかぶる。

 家から持ってきたスピリタスで手を消毒すると、作り方を教える。

 作り方は前回と同じなのだが、カビを自然に増やすこと(今回は魔法で増やした)、水と油を混ぜた時に水だけを取り出すために、穴の開いた桶を用意すること、その他注意点などを細かく伝えていく。

 ファウストさんは、色々聞きながら見ていたが、最終的には自分で作ってみることに・・・

 やはり魔法がないと難しく、数度失敗をしたが、安定して作れるようになっていった。


「薬の効果は調べてみないと解らないんですが、たぶん大丈夫だと思います」


「こんなありふれている材料で作れるなんて、なんと素晴らしい薬なんでしょうか・・・」


「明日にでもユカさんに見て貰いましょうか」


「そうですね! 実に素晴らしい!」


「そういえば、スライムパウダーについての質問なんですけど、いいですか?」


「はい、何でしょうか?」


「昨日作った時に、錠剤1個しかできなかったのですが、何ででしょう?」


「それは、ポーションの容器1つ分で1つの薬になるからですよ」


「そういうものだってことですか?」


「そうですね、考えた事もありませんでしたが、そういうものなんでしょう」


 この世界の薬は、やはり魔法薬だからなのか、こちらの常識は通用しないようだ・・・容量についてもまったく解らないし・・・まぁ、健康になるんだからいっか~。

 一段落したので手を洗い、桶を洗って外の庭に穴を掘り、桶の中に残っている汚れた水を入れて埋めて置く。

 桶を部屋に片付けて、ポーションの容器に入っているペニシリンを、棚の中に並べていく・・・そのとき扉がノックされる。


「私が出ましょう。片づけを続行していてください」


「は~い、お願いします」


 扉を開けると、そこにいたのはグロスさんだった。


「こんな時に申し訳ありません」

 グロスさんは、入り口付近で深く頭を下げる。


「グロス殿、どうなさったのですか?」


「カナタ殿に、お話がございまして・・・」


 殿!? って何? 人間思いもよらない事を言われたら、時間が止まるもんなんだな!


「え? おれ・・・私ですか?」


「折り入って頼みたいことがございます・・・よろしいでしょうか?」


「ええ、もちろんですよ。何でしょうか?」


「それはですね・・・」


「調子はどうだ? はかどっているか?」

 グロスさんが話し始めた瞬間に、急に陛下が部屋へ乱入してきた。ビックリしたよ・・・まじで。


「む? 話し中だったか、すまんな」


「いえ、陛下の用事が優先でありますので」

 グロスさんが、恭しく礼をする。


「うむ、すまんな。カナタよ、先にこれを受け取っておいてくれ、礼だ」

 陛下はそう言うと、大金貨より少し大きく、ピンク色した金貨を5枚渡してくる。


「これは?」


「紅金貨といって、1枚で大金貨10枚分の価値があるぞ・・・今はこれしか出せん。公の場になったら残りを渡そう」

 え? え? くれるの? ってか残り? doyukoto? 思考がストップしてしまい呆然としていると、


「ファウストよ、覚えられたか?」


「もちろんでございます。今回できたものは、ポーション容器151本分でございます」


「おお! もうそのような数を! でかしたぞ!」


「あぁぁぁ・・・ありがたき幸せ」


「ファウストも今日を含め4日後を空けておけ! 表彰するぞ!」


「なななななな・・・何を仰います! わたわたわた・・・わたくしなどとても・・・」


「決定事項だ! では、邪魔したな・・・グロス、すまんな」


 陛下が出て行くと頭の整理がついた・・・が、大金持ってると思うとなんか怖い。

 今度はファウストさんが呆然としていた。


「カナタ殿、よろしいですか?」

 グロスさんは、こちらを見て礼をする。


「はい、何でしょうか?」


「実は、人を・・・奴隷を買っていただけ無いかと思いまして・・・」


 え? どゆこと? 思考がまた停止しそう・・・

 一体何があるんだろう・・・

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