第55話 王との会話
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しばらく待つと、ノックが聞こえ陛下が入ってきた。
この方が陛下か・・・狼の獣人? やっぱり風格があるんだなぁ。
「待たせたな。フランよ、体はどうだ?」
「私は、死病でした」
「なんだと!? 何故早く言わん! 直ぐにエルフの国へ伝令を・・・」
「お待ちください! 叔父上! もう治っております」
「何を言っておる、死病はほぼ100%死にいたる。生き残る者もおると聞くが奇跡に近い・・・そういう病ぞ」
「そうです、その通りなのですが、この者達のもたらした薬によって治りました」
「何だと! これはこれは、貴重な薬を・・・せめて光茸の金額はお支払いしたい」
陛下はこちらを向き頭のみ下げる。
平民に頭だけでも下げるなんて、この国は何なんだ?
「叔父上、この者達は光茸を使わずに治したのですよ。新薬を作り出したのです!」
「何だと! 新薬か! 治療薬が出来ていたのか! たのむ、いくらでも出すので譲ってはくれまいか?」
「叔父上! 話を最後まで聞いてくだされ!」
「いや、取り立てる事も可能だ。いや、取り立てたいと思う。どうだろうか? 考えて貰えぬか?」
「叔父上! 叔父上! 話を聞いて下され!!」
「なんだフランよ・・・今はこやつに話してるところだろう! 気を使わぬか!」
「この者が、製造法を買って欲しいと言っているのです! しかも、開発者をこの国にして欲しいと!」
「何を馬鹿な事を。気でもふれたか? がっはっはっは」
「うぬぅぅぅ!」
「フランソワーズ様がおっしゃった事は本当です」
「いや、どういうことだ? 意味がわからぬ、何故だ? 大発見なのだぞ? それとも入手が難しい素材なのか?」
陛下は、本当に意味が分からないといった表情で見る。
「昨日薬を見てから今朝までに作りました。入手は凄く簡単な素材です」
「では何故? 一国の王となることも出来る程の功績だぞ?」
「私は・・・いえ、私達は勇者を目指しています。その為に安全を保障していただける国が必要になるのです」
「そうか、おぬしらに危険が迫れば、薬でどうにかして欲しいということか。本当にそれだけか?」
「もう1つだけ理由はございます」
「何だ? 何を望む? 何でも言ってくれ」
「望むのではなく、私は一度フランソワーズ様に助けていただきました。その恩返しもかねています」
「何を言っておる! 恩なら返して貰いっぱなしだ! 兵士や冒険者の治療、ポンプの開発、上手い料理の数々、新たな防具の開発・・・1つだけでも褒美を与えるべき物なのに、皆好きでやってることだと・・・私こそ、恩を返したいのだ」
フランソワーズ様は、声を荒らげる。
「なるほどな、おぬしらが聖女と料理の神の仲間であったのか。これは公式の場で褒美を与えねばならんな」
にやりと不敵な笑みを浮かべて、こちらを見ている。
「本日を含めて5日後に表彰を行う。確かクランだったな? 全員出席せよ、良いな? その時に褒美も用意しよう。薬は国の開発としておくとするが、発表するのは少し後にしたい。良いか?」
「解りました。作成するのにも時間がかかりますので、数がそろってからの方が良いかと私も考えます・・・調合のレシピは、書面でお渡ししますか? 直接指導しますか?」
「直接指導を頼む」
「畏まりました。教えるのはファウストさんでよろしいですか?」
「うむ、場所は王城で頼む。速記に長けてる者も良いか?」
「もちろんでございます」
「うむ、材料は何になるのだ?」
「かんきつ類に生えているアオカビです」
「な! そんな物で本当に平気なのか? 他の物も必要なのではないのか?」
「確かに他にも準備するものは必要ですが、薬自体はアオカビで出来ております」
「驚きだ、そんな物でできているとは・・・身体に異常等は出ないのか?」
「出ることは無いでしょう。薬の心得を持っているユカさんにも見て貰っています」
「そうか・・・解った、5日後に迎えを出す。楽しみに待っているぞ」
陛下は、もう一度にやりと笑ながら、こちらを見てくる。
「では、フランよ、良い話を聞けた! 余は戻るぞ」
「はい、叔父上」
体調も良くなってソワソワしているフランソワーズ様だったが、ユカさんに明日までは安静にと言われ、横になった。
俺達が帰ってから運動していたら、タダシさんとヨシさんに一週間料理を出さないようにお願いすると脅したのが効果覿面だった訳だが・・・
そんなこんなで、屋敷に帰ることにした・・・色々ありすぎて疲れたよ・・・あぁ眠い。
帰り道は2人で話しながら帰る。
「なんか、凄いことになっちゃいましたね」
「そうですね~、それよりも眠そうですね」
ユカさんは、こちらを見ながら言う。
「昨日徹夜だったので、帰ったら食事して直ぐ寝ますよ」
「その前に皆に話をしてくださいね」
「そうですよね、皆に話さないといけないんですよねぇ・・・表彰のために王様に呼ばれたって言えばいいんですかね?」
「そうですね~・・・あ! 服! 着て行く服ってどうします?」
「今から作ってもらうしかないですね・・・燕尾服? スーツ? 着物? 女性ならドレス? 何を着ればいいんだろう?」
「う~ん・・・中世っぽいですからドレスなのかな? でも、フラン様の私服はワンピースっぽい物でしたよね」
「あれは寝巻きではないんですか? 異様なほどシンプルだったので」
「いえ、お城の中をあの恰好で歩き回ってましたよ。なので私服だと思います」
「じゃあ、ゴテゴテしたドレスじゃなくて可愛いワンピースの方が良さそうですね」
「ワンピース・・・私似合わないんですよね・・・・太って見えちゃうし・・・」
「まぁ、アヤコさんとかと相談して決めてください。流石に女性の服はわからないので・・・」
「解りました。はぁ~・・・気が重いですよね」
「そうですね、王様は気さくな人でしたけど、他の貴族の方達がどうなのかは解りませんからね・・・いきなり喧嘩売られて、ショウマ君が買っちゃったりして・・・」
「止めて下さい、縁起でもない・・・ありそうで怖くなってくるじゃないですか」
「治療院でもそうでした?」
「はい・・・治した途端に喧嘩して、相手を怪我させてまた治す・・・そんな事が多かったですね」
「解りやすいですね・・・さて、どうしようかな・・・」
お屋敷に着き全員を呼び、事の顛末や王様に呼ばれていることなどを説明する。
「おいおい、全員行かなきゃならんのか? カナタだけで良いんじゃないのか?」
タダシさんは、頭を押さえながら言う。
「タダシさんの事も知ってましたよ、料理の神と評されていました」
「フランだな! 面倒な事をしやがって」
「防具の事も知っていたんですか?」
ケイタ君が聞いてくる。
「いや、最初は知らなかったと思うよ? たぶんだけど、今頃説明してるんじゃない? フランソワーズ様が喋っちゃったし」
「俺は行かなくて良いだろ? 何もしてないんだぜ?」
「全員強制。喋るのだけは俺がするから来てね」
「服はどうするんだい・・・ドレスなんて今からじゃとても間に合わないよ」
アヤコさんは腕を組みながら言う。
「最初は着物が日本っぽくて良いと思ったんですが、出来ないですよね?」
「生地も無いし、和裁と洋裁だと裁縫の仕方自体が違う・・・無理だね」
「ワンピースなら出来ますか? 男性の服装は何でも良いので」
「シンプル目な物なら出来ないことは無いと思うよ。生地もあるしレースも作ってたからさ」
「フランソワーズ様の分と女王様の分と大将軍の奥方様の分も出来ますか?」
「出来るよ・・・ただ会って見ないとサイズとか解らないね」
「それはフランソワーズ様に会えるかどうか聞いてみましょう・・・あ! 下着も出来ます?」
「大丈夫だよ、生地はかなりあるからね・・・これからのためにも多めに針金が欲しいね」
「針金は急いで用意します。明日の夕方でも構いませんか?」
ケイタ君が軽く手を上げて言う。
「ああ、頼むね・・・それと、皆の予備の下着ができたよ、前と同じ部屋においてあるから持って行っておくれ」
「ありがとうございます。タダシさんは料理を出来ますか? どうなるか解りませんけど、謁見の時にグロスさんに持って行ってもらおうと思っているんですけど」
「うん? 別に構わないぞ・・・そうだ! 待っててくれ」
タダシさんはキッチンに戻ると、木箱を持って来てテーブルに置いた。
「見てくれ! 行商が来たんだ! キャベツにレタスに小松菜、トマト、玉ねぎ、瓜、椎茸、竹の子、唐辛子、小豆・・・こんな物まであったんだ」
タダシさんは、にやりと笑いながら見せるように取り出す。
「昆布だ! 出汁が取れるぞ! まぁごく少量しかないがな」
いろんな詳細などはみんなに任せて、風呂に急いで入り作ってもらった下着を着て、早めに1人寝ることにした・・・もう無理・・・眠い。