第53話 腹黒
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8/11 改稿あり 加筆あり
「あら? どうしたの? 今日はフランちゃんと一緒じゃないのね・・・体調悪いって言ってたし、昨日も食べに来なかったから心配してたのよ」
「あの・・・フランソワーズ様が、お倒れに・・・」
「え? 何? どうしたの? 大丈夫なの?」
「今のところは・・・お二人の食事を食したいと仰っておりますので、お願いできないかと」
「ええ、もちろんいいわよ、作っちゃうから少し待ってて・・・えっと、リクエストはあるの?」
「はい、うどんが食べたいと仰っていました」
「解ったわ、カナタ君手伝って」
「はい、喜んで」
そうして、うどんをこねる作業を手伝い、茹でたりしている間に容態を聞く。
「グロスさん、率直に聞きますが・・・死病ですか?」
「いえ・・・あの、私では何とも・・・今、治療師と薬師が見ておりますので直ぐにわかると思います」
「ファウストさんが治療を行っているのですか?」
「その通りです。フランソワーズ様は意識もはっきりしていますし喋る事も出来ますので、大事を取ってという形です」
「そうですか・・・もう1つ質問ですが、光茸の水溶液とスライムパウダーの2つがあれば死病の薬になるんですか? もし知っていたら教えて下さい」
「はい、薬としてはその2つで出来ると聞いているのですが、体の反発を防ぐために回復魔法をかけながら服用します」
体の反発? 副作用のことか?
「ありがとうございます・・・ところで、スライムパウダーは余っていたりしますか?」
「余っているわけではないですが、ございます」
「すみませんが、後で少し分けていただくかもしれません。その時はお願いいたします」
「それは、どういう意味・・・」
「グロス君! 入れてもらっていい? できたわよ~」
「はい、畏まりました」
死病が発病したとしたら・・・感染する可能性もあると考えた方がいいのかもしれないな・・・あぁ、後手に回ったか・・・いや、初期段階だろうから何とかなるはず。
食事していたエルさんを口止めしてから、皆で王城へ行く。
フランソワーズ様が休んでいると言われた部屋へ。
扉を開けるとそこにはベッドに座っているフランソワーズ様と、治療師とファウストさんと美人のエルフが居た。
もしかしたら、フランソワーズ様のお母さんなのかもしれない・・・エルフはやっぱり長生きなのかな? 下手すれば姉妹ですって言われても納得しそう。
「皆で来てくれたのか、こんな恰好ですまんな」
「フランちゃん大丈夫なの? 顔色が悪く見えるわよ」
「大丈夫だ、疲れが出ただけだ。直ぐに良くなるさ」
フランソワーズ様は、ヨシさんと会話をしている・・・ヨシさんに全部任せれば大丈夫だろう。
俺は俺の出来る事をしよう。
「ファウストさん、外に来てもらって良いですか?」
「はい、分かりました・・・すぐ行きますね」
俺とユカさん、ファウストさんは外に出た。
「あの・・・フランソワーズ様は大丈夫なんですか?」
ユカさんが、心配そうにファウストさんに聞く。
「そうですね、聞いたところ最近公務が忙しく、お疲れだったと言っておりましたし、睡眠も不足しているみたいです。しかも治療師の見立てですと、体の・・・」
ファウストさんは、こちらに説明をする。
が、いつもより饒舌で動きが小さく、瞬きも多い。鼻をかいて目を合わせない・・・嘘か・・・
「ファウストさん、嘘はいいです・・・大丈夫なんですか?」
俺は、真っ直ぐに見て聞く。
「うぐぅ、えっと・・・あの・・・ふぅ・・・死病です。
治療薬は1つしかないので、お二人のどちらかしか助けられません」
「なるほど。実は、これを持ってきました」
俺はファウストにポーションの容器を見せる。
「ポーションですか?」
そのまま手渡すと、驚愕の表情へと変わる。
「こ・・・これを何処で! 何をして!」
ファウストさんは、驚愕しながら言う。
「完成はしていませんよね? 薬の作り方を教えていただけますか?」
「も・・・もちろんです! ですが、こんなに貴重な物を良いのですか?」
「人の命には代えられませんし、フランソワーズ様には命を助けていただいた恩もあります。
早速ですが、ご教授お願いします」
「はい、解りました・・・では、部屋を借りて調合しましょう」
近くの部屋を借りて薬の調合をする・・・注意されたのは1つ。粉が舞い易く、布で口と鼻を塞ぎながらでないと作業してはいけないとのことだった。
作業自体は非常に簡単で、ペニシリン溶液1に対してスライムパウダー1の調合となり、量は、ポーションの容器1つで薬1つ分となる。
水の量が多すぎてもスライムパウダーの量が多くても上手く固まらないらしい・・・量だけ気を付けないとな。
スライムパウダーをボウルのような容器に入れて、ペニシリンをかけるとシュウシュウ言いながら一つの錠剤に変化する。
「錠剤一つしかできなかったんですけど、大丈夫なんですか?」
おれは、錠剤をマジマジと見ながら聞く。
「錠剤一つで十分です。効果は折り紙つきですよ」
ファウストさんは、そう言い微笑む。
「私も見て良いですか?」
ユカさんは今回見てるだけだったので、気になったようだ。
「どうぞどうぞ」
一応俺が作った物と、ファウストさんが作った物を両方見てみて貰う。
「私が作った物をフランソワーズ様に渡しても良いですか?」
「ええ、構いません。同じ物が出来上がっているようですので」
「ありがとうございます。でも、1錠だけだとやっぱり不安がありますね」
「1人の治療なら1錠で十分ですよ。
言いたい事は分かります・・・1回の調合で何錠も出来たら嬉しいですよね・・・多くの人を助けられるのに・・・・」
1錠飲むだけで治るとか・・・さすが異世界の薬。魔法があるから出来る物なのかもしれないが、素晴らしいな。
ユカさんは何かを言いかけたが、エルフに言われた事を気にして言えないでいる。
たぶんだが、効果が違うのであろう・・・思惑通りに進む可能性が高いな・・・などと、あくどい事を考えていた。
部屋に戻り、コップに魔法で水を入れ、その水に回復魔法を付加できているか解らないが、付加してみた。
「フランソワーズ様、私の作った薬です。効果はファウストさんにもユカさんにも見て貰ったので大丈夫だと思います。飲んでください」
「おお、すまん。して・・・どの様な病気に効く薬だ?」
フランソワーズ様は、こちらを真っ直ぐに見て言う。
なるほど・・・自分が何の病気か分かってるのかもな・・・隠してもしょうがないか。
「死病です。大将軍様のものは、エルフ様方の持ってきた物を飲んでいただくので大丈夫です」
「やはり、そうであったか・・・本当に2つあるのだな?」
「はい、こちらにございます! 決してこのような所で嘘は申しません」
ファウストさんは、薬をフランソワーズ様に見せながら言う。
俺は1つ黙っていることがある。それは薬の効果が違うこと。
ユカさんにもあの後、スライムパウダーを使って、錠剤を作って貰ったのだ。
俺はその作った錠剤の詳細を、事細かに聞いておいた。
エルフの持ってきた物だと、 薬効果:小 副作用蓄積量:微
魔法を使わず作成した物だと、 薬効果:中 副作用蓄積量:微
魔法を使って作成した物だと、 薬効果:大 副作用蓄積量:微
一つ一つの工程で魔法を使った物、薬効果:特 副作用蓄積量:無
全部を錠剤にして持っているが、フランソワーズ様には薬効果:大の薬を飲んで貰おうと思っている。
大将軍の様子から、たぶんエルフの薬では治らない。
そうなった時のために薬効果:特は残しておいた方がいいだろう。
俺が作った薬で、フランソワーズ様を助けるだけでもかなりの評価をされるだろうし。
この薬を交渉の材料に使い、クランメンバーへの勧誘や誘拐に対する断固たる措置を講じる許可を貰うつもりだ。
その効力はこの国だけになるかもしれないが、新薬を盾にとって他国への交渉をしてもらう事もできるはずだ。
上手くいくかは解らないが、やるだけのことはやっておかないと。
「では、飲んでみてください。ユカさんは体調の変化を見てみてください、お願いします」
俺は、水と錠剤を渡してから言う。
治療師の人が空気を読んでくれたのか、歌をうたい始めた。
「ああ、すまんな」
「ちゃんと見てますので、飲んで下さい」
そう言うと直ぐに飲んだ・・・毒の可能性とか心配しないのかな? 逆に不安なんですけど・・・
おっと思考がそれたな・・・今のフランソワーズ様は、見た目で体調が悪いことぐらいしか解らない。
こんな時にギフトを持っていれば違って見えたのかもしれないな・・・
皆のギフトは、軽く習ったり感覚だけ教わっていたが、そろそろ本格的に覚え始めるべきなのかもしれない。
1人よりも2人いたほうが色々と余裕が生まれるし、考えの幅や深みも増すだろう。
そんな事を考えながら、ゆっくりと時間が経過する・・・
ファウストさんは、フランソワーズ様が薬を飲むと大将軍に薬を届けに向かった。
「魔力の流れがゆっくりとですが、治ってきています」
ユカさんは、フランソワーズ様を見ながら言う。
やはり、一気に回復ということは無いようだが、改善方向へと向かっているようだ。
「うむ。ところで、腹が減ってきたのだが、食事をしても良いだろうか・・・」
フランソワーズ様は、こちらを見てから言う。
「もう少し・・・もう少しだけお待ちください。せめて内臓の乱れがなくなってからにして・・・」
ユカさんが喋っていると、ぐぅ~きゅるるると大きな音が鳴り響いた。
部屋の中がシーンとし、ドッと笑いが起こった。
「何てことだ・・・恥ずかしい・・・」
ベッドに座っていたのだが、横になり掛け布団を頭まですっぽり被ってしまった。
「ふふ・・・すみません、フラン様。見えないので出てきてください」
「いやだ・・・恥をかいてしまった」
「何を言っているんですか! 体調が良くなった証拠でしょう? 食欲が出てきたって事は喜ばしいことですよ。
そこの机に食事を出して、食べたらいかがでしょうか? 少しくらいの乱れなら、回復魔法で癒すことも出来るはずですので」
「むぅぅ」
「そうですね、それが良いですね」
まだ少し不服そうにしていたが、食欲には勝てなかったのだろう。のそのそと布団から出てきた。
食事を出してるときにグロスさんが泣いていた・・・気丈に振舞ってただけで心配だったんだなぁ。
食事を開始し、軽く談笑しながらゆっくり時間が過ぎていく気がしていた。
しかし、外から駆け足の音が聞こえ扉は急に開き、ファウストさんが駆け込んで間髪入れずに叫んだ。
「ユカさん! 大将軍の元へ来てください! 体調に改善が見られないので回復魔法を!」
それを聞き、やっぱりか・・・と思っていた。