第5話 初めての戦闘
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6/5改稿あり、加筆あり
「皆さん、すみません、朝ごはん食べながらでいいので聞いてください」
ドングリを恐る恐る食べ「結構美味しい」とか話し合っていたが、こっちに顔を向けてくれた。
「もったいぶっても仕方がないですので、単刀直入に言いますと、ここは地球ではなく異世界だと思います」
「がははは、おいおいおい、頭がおかしいんじゃないか? 病院に行ってきたほうが良いんじゃないのか? 頭の弱い仕切りたがり様よ」
三沢 伊三雄さんは、自分の頭に指をトントンと当てながら言う。
「ふぅ・・・そうですよね、そう思われても仕方が無いと思いますけど、残念ながら頭がおかしくなった訳では無いんですよ、昨日の散策行った時に気が付いた人も多いと思いますが、虫の大きさが明らかに異常です・・・下手すると、襲ってくる虫も居るかもしれませんので、昨日より一層気を付けながら作業をお願いします」
「おいおい! 異世界というならよぉ、この世界の現地のやつらに保護を求めりゃいいじゃねぇのか? 何で何もしようとしない? 街を見つけて、さっさと行けばいいだけだろ! そんな事も考えつかねぇのか!? こんなところにいつまでも居られないだろぉがよぉ! どうなんだよ! クソ仕切り屋様よぉ!!」
「そうですね、現地人が友好的ならいいですが・・・もしですが、敵対するなら・・・どうしますか?」
「おいおい! そんなもんやってみなきゃ解んないだろ! 勝手に決め付けるな!」
「ふぅ、そうですか・・・たぶん敵対する場合、殺されます・・良かった場合でも、拷問にかけられ、この世界には無いような知識を喋らされ・・・知識が無くなれば・・・奴隷になり死にます、どちらの場合でも死ぬことに変わりないですが・・・それが、女性の場合は・・・考えたくも無いですよね」
「クソ! 敵対するってどうしていえるんだ? おい! 敵対するって証拠でもあるのか? あるなら出してみろよ! そんな話はお前の妄想でしか無いだろ! アニメ、漫画、ゲームそんなくだらないものの知識だろうが! このクソオタクが!」
「そうですね、確かに推測です・・・ですが、森を抜けなきゃ何も出来ませんよね?
その為には保存食・水は必須です、現地人に助けを求めるのも、街を探し出したその後で、ちゃんと調べてから・・・そう考えていますが、いかがですか?」
「がっはっはっは、ならよぉ、狼煙でも上げりゃぁいいだろ? そうすりゃあ発見されるだろう? なぁ、ちゃんと頭を使えよ、仕切りたがり様よ」
だから危ないって言ってるじゃないか・・・頭使えよ・・・そんな風に思っていた。
「あのですね、地球でも虫の種類によっては、火の近くには人がいる事を知っていて、人の目とかに卵を産むハエなんかもいるんですよ? しかも、異世界なんですから、動物も来てしまう可能性は捨てられないですよね? なので、狼煙は使えないんです・・・単純に、川下に進むのが1番ではないかと思っていますよ、折角水場が近くにあるって言われたんですから」
三沢 伊三雄は、チッと言うと腕を組み黙った。
たぶんだが、納得はしていないが仕方が無いと思ったのだろう・・・非常に面倒なことだ。
俺が仮眠を取ることを皆に告げると了承してくれ、田中 良太郎が、やることごとに班分けなどをしてくれた。
横になると、一瞬で夢の中へ入って行った。
「・・・・・さん!・・・原さん! 起きてください! 榊原さん」
仮眠を取っていると、揺り起こされる。
「田中さん、おはy『敵です』」
いい終わらないうちにかぶせて言ってくる、かなり焦っているようだ・・・すぐ跳ね起きた。
「え? 敵ですか? 何ですか? 何がいたんです?」
「たぶん、ゴブリンだと思います」
「え? マジ? え? ゴブリン? 本当に?」
その問いに無言で田中 良太郎さんは頷き。
「起きたばかりで申し訳ないのですが、急いでこちらに来てください」
と言うなり進んでいく。
洞窟内に皆で避難しているが、中山 敬太君と五十嵐 渉真君の姿が見え無い。洞窟内の皆に、小声で話しかける。
「おはようございます、ゴブリンを見つけたんだって?」
皆一様に少し暗い顔をしている、本当に居たんだなって確信する。
その間にも田中 良太郎は、こちらをチラチラ確認しながら進んでいく。
洞窟の外に出ると水の音が鳴るほうに指差している。頷きそちらに進んでいく。
湧き水まではそんなに遠くなかった。
湧き水の見えるところまで来ると、姿勢を低くとジェスチャーされる。
姿勢を低くしながら進んでいくと、2人が背の低い木の影から覗いているのが見える。
2人は気が付き、背の低い木の奥を指差していた。
「うわぁ、マジモンの本物のゴブリンだ・・・結構小さい」
独り言を言ってしまった。
湧き水から少しはなれたところに、小さな池があり、その淵あたりに緑色の肌のゴブリン2匹? 2人? がいた。
ゴブリンたちは、身長1m位に見え結構小さい。
1人が持っているハルバードっぽいものを使い魚を取ろうとしているが、足を滑らしたり2~3秒かけて槍を持ち上げ池に振り落としたりしている。
槍の振り方が端を持ちながら重力に逆らわず落としている程度だ・・・見るからに弱いと解る。
4人は、少し離れて小声で会話をする。
「う~ん、危険だけどさ、ゴブリンが持ってる武器欲しいね、いろいろと役に立ちそうだし」
「さすがに危ないとおもうんですけど・・・」
「僕は賛成ですね、あの槍があれば色々と便利になりますし」
「よし! じゃあ、倒すか! 弱そうだしな」
いきなり五十嵐 渉真君が進もうとするのを、服の裾を掴み一旦止める。
「待ってよ! 真正面からは行かないよ? 怪我をしたらどうするのさ、今ちゃんと作戦を考えたから聞いてから行動してね、槍を持ってるやつに馬鹿正直に戦いを挑みたくないからね。
いい? まずは、数人で池の反対側から石をゴブリンに向かって投げて、注意を引く。
注意がそれてる間に、後ろに回りこんでいる人がこっそり近づいてハンマーで頭を叩く。
近づく人が見つかった場合は、砂で目潰しをして森や白竹に逃げる。
そうすれば、木が邪魔して槍を振るうのが出来なくなるから、どうかな?」
3人は無言で頷く、話し合いの結果・・・俺が襲撃することとなる。
一応、3人には靴下に石を詰めた簡易的な武器を持ってもらった。
未だに魚を取ることに夢中のゴブリンの背後に回る・・・
気が付かれない様に手を上げる・・・作戦決行。
作戦は大きく違うものになる・・・ただし、いい意味で・・・
3人が草影からいきなり飛び出し石を投げる。野球のフォームで最初の1撃を投げるようだ・・
未だに3人にすら気が付いていないゴブリン。
石は思った以上にまっすぐゴブリンに向かう。
1個は外れたが、1個は槍ゴブリン1匹の頭に当たり、もう1つはもう一方のゴブリンの体に当たった。
槍ゴブリンは崩れ落ちそのまま仰向けで倒れる、もう1匹はぐるぁぁと言いながら蹲る・・・
さっと出た俺がうずくまるゴブリンを先に殴り、もう一匹の槍ゴブリンも殴る。
最終的には両方の頭を数回殴りつけた・・・終わり・・・
頭を叩いた後3人に顔を向ける・・・え? と言う顔で石を持ちながら固まっている。
たぶん、3人を見た俺も同じ顔をしていたに違いない。
ハッと気が付き、倒されていない可能性もあるので槍を拾い、少し離れてからつんつんしてみる。
まったく動かない・・・緑色の血が池に流れている。
「大丈夫です、死んでますね」
「なぁ? こいつら弱すぎないか? 尖ってる石を思いっきり投げたからって・・・流石になんかな・・・」
「弱くてよかったじゃないですか! 怪我が無くて本当に良かった」
「なるほど、緑色の血ですか、まったく・・・ファンタジーですね・・・」
3人がこちらに進みながら口々に言っている。
「一度皆を呼んだほうがいいと思いますが、希望者だけのほうがよさそうですよね・・・死体なんて、女性達に見せたくないですし・・・」
田中 良太郎が皆を呼んでくる間に、持ち物とかを漁り始める・・・
吐き気と、ものすごく高鳴る心臓の音、体の震えを意識的に切り離す。
何も感じないように、何も考えないように・・・
2匹のゴブリンが持っていたものは、鉄製の飾りっけの無いハルバード、青銅の短剣、青銅のショートソード、布のバッグだった。
バッグの中には直径4~5cm位の石ころが5個入っていた・・・なんでこんなものを??
そうこうしている間に、皆が来た。
「あら、全員で来たんですね。ゴブリンの死体なんて見たくないでしょうに」
「そうですね、ですが一応皆様にも見てもらったほうがいいと思いまして」
なるほど・・・百聞は一見にしかずって言うし、見てもらったほうが早いか。
皆ゴブリンを見て気持ち悪そうにしているが、これからの事を考えてるようだった。
ゴブリン:10級の魔物。 POPするタイプと子供が生まれ育つタイプがいる。 育つタイプの方が断然強い。 POPするタイプには武器を所持している物が多い。 今回はPOPタイプ。
ゴブリンの装備記載
ハルバード:魔鉄(魔力で作った鉄)とメイプル材で出来た柄のハルバード。
青銅のショートソード:青銅で出来たショートソード。 ナイフより少し長いのでショートソードと表記、実際にはナイフの方が正しいかも。