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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
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第48話 交渉の終了

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


7/30 改稿あり 加筆あり

「確認なのですがネムガさん、この籠手には、このシートが入っていませんか?」


「ああ、それを入れて作ったぞ。組み込みたいと言ってただろ?」

 ネムガさんは、黒いシートを指差しながら言う。


「な・・・な・・・な・・・」

 ゴラントさんは、何を言いたいのか悟ったのだろう、ワナワナ震えていた。


「では、本当の交渉に入りましょうか、ゴラントさん」


「謀ったな! 調子に乗りおって! おい、お前らこいつを」

 ゴラントさんは、後ろに控える冒険者に言う。


「待ってください。特に私は貴方を騙していません・・・しかも、私を殺せば貴方も家族も犯罪奴隷になるのは確定です。良いんですか?」

 俺は、ゴラントさんの前に手のひらを出して制する。


「ぐ・・・ぐぅ・・・・」

 ゴラントさんはうめき声を上げながら頭を押さえた。


「私は、貴方に嘘を言っていませんよ、多くの情報を教えなかっただけです。読み間違えたのはあなた自身ですよ。

 良いですか? もっと良く考えてください。まず、借用書を破棄したら縛る物がなくなりまよ? どうやって作らせるんですか?

 しかも、籠手を見た時にネムガさんを呼んで籠手を調べれば、打刻以外の情報が出てきたかもしれないのに、何故呼ばなかったんですか?」


「お前ら、グルだったのか! それで私を」


「それも残念! 私は一言、ネムガさんには喋らないでくれって言っただけですよ。

 まぁ、実際には交渉の場にすら居ませんでしたがね」


「では! その装備主任は偽者か!」


「本当に残念だ・・・こちらのエルさんは本当の装備主任ですよ。

 しかも、装備の発注も本物です。ああ、私がエルさんに頼んだのは交渉中喋らないこと・・・だけですよ」


「お前が! おまぁぁえぇぇがぁぁあ!」

 ゴラントさんは、机をたたき俺を指差しながら言う。


「そうですよ、全て私が仕組んだのです。こんなに上手く良くとは思いませんでしたが。あっはっはっは」

 俺は、悪魔の降臨かと思うような高笑いをし、手を大きく広げて立ち上がる。


 後ろでケイタ君とタクミ君が、小声で話しているのが聞こえてくる。


「なんかさ・・・カナタさん、楽しそうだね」

 タクミ君がこっそりと言う。


「本当ですね、どっちが悪者かわかりませんね」

 ケイタ君が答える。


 ちゃんと聞こえてるよ、まったくもう。

 声が聞こえて冷静になり、座る。


「ふぅ、一度落ち着きましょうか」


「出て行け!」


「そうですか・・・かしこまりました。1年間の自由をお楽しみください」


「待て!」


「はい?」


「待って・・・待ってください・・・お願いします」


「どうされたんですか?」


「どうにか・・・どうにかなりませんか? 私には妻と子が・・・」


「鍛冶師の方々にも居ますよ、分かっておられたでしょう?」


「どうか・・・どうか、お願いいたします。妻と子だけでも・・・」

 ゴラントさんは立ち上がり、テーブルの脇に出ると土下座をする。


「ネムガさん、そのシートを使って防具を作っていただきたいんですけど大丈夫ですか?」

 土下座をしているゴラントさんを無視して、ネムガさんに話しかける。


「え? ああ・・・そりゃあ、大丈夫だが・・・どのくらいだ?」

 ネムガさんは呆気に取られていたが、返事を返してくれた。


「エルさん・・・お~い、エルさ~ん!」

 俺は、エルさんの顔を見て言うが反応がない・・・何でこっちを見てるのに気が付かないんだ?


「ひゃい! え? え? 何ですか?」

 エルさんは、ビクッとしてから喋りだす。


「ネムガさんへの説明を、そちら側でしてもらって良いですか? まだどこか俺が分からない場所へ飛んで行かないで下さいね・・・

 ケイタ君、タクミ君はエルさんの説明のサポートを!」


「「はい」」

 2人一緒に返事をしてくれた。


 この会話中もゴラントは顔を上げる事はなかった・・・今頃人の傷みを解ってもなぁ・・・

 エルさんとネムガさんの会話が、一段落するまで少し休憩する・・・お茶、おいしくないなぁ。


「さてと、ゴラントさん?」


「はい! 何でもいたしますので、どうか!」


「では、交渉といきましょうか」


「畏まりました」

 ゴラントさんは、今現在も一切頭は上げずに喋る。


「まずはネムガさん、こちらに来てもらっても良いですか?」


「あ? ああ、何だ?」

 ネムガさんは、エルさんの説明が完全に終わる前に呼ばれて、ビクッとしてから言う。


 なんとなくだけど、俺って怖がられてるのか? なんかなぁ・・・


「装備の詳細などはお聞きになりましたか?」


「ああ、全部聞かせてもらった。魔鉄の部分は平気なんだが、皮の部分は何か手を加えるのか? それによって、また一からなんだが・・・」


「皮の部分はどういう風になっているのですか? 一度見てみたいのですが・・・」


「そうですね、見てきても良いですが、ちゃんと交渉が終わるまでは、外の鍛冶師の人達にこの交渉の事は絶対に喋らない。良いですね?


「了解だ」「解りました」


「うん、それでは、2人は一度見てきて来て下さい」


「ああ、すまないが、報酬は出るのか?」

 ネムガさんは、こちらを見ながら言う。


「もちろん、通常通り出しますよ。ただし、依頼を成功させてくれればですが」


「それさえ聞けりゃあ良い! こんな大口のご依頼だ! 気合入れてやるさ!」

 ネムガさんは、パッと顔を明るくし言う。


「そうですか。皮の部分の結果が解り次第、教えて下さい」


「す・・・直ぐ見てきます!」

 エルさんは、ネムガさんを追いかけながら言う。


「さてと。冒険者の方々、依頼はどの様な内容でしたか?」


「え? あ・・・ああ、護衛は6日で、報酬は1日銅貨8だ・・・寝床に3食も付いてるって言うからここにしたのに・・・依頼は失敗になるのか・・・参ったな」

 冒険者は、呼ばれて驚いていたが詳細を喋る。


 1日銅貨8枚って1人銅貨4枚って事か? 食・住が付いてるからって、そんな安い金でやっていけるのか? ずいぶんだなぁ・・・


「そうですね・・・失敗は取り消せませんが、お二人に銀貨1枚お渡しします、どうですか?」


「それでは割に合わない。銀貨2枚だ」

 冒険者は、特になにも考えることなく値上げを要求してくる。


「解りました。お二人に銀貨2枚ずつお渡しします」


「え? 本当に?」

 冒険者たちは、ポカンとしながら言う。

 たぶん断られることを考えていたんだろう。


「いやぁラッキーでしたね! ただし! いいですか? 今日は仕事に来ていない・・・もちろん、良いですね?」


「ああ! もちろんだ! 寝坊しちまって、失敗した」

 冒険者たちは、嬉しそうにしながら言う。


「ありがとうございます。口を滑らさないようにお願いしますね、滑らしてしまったら・・・私のように、金払いのいい依頼にはもう出会えないと思ってください」


「そんなことするはず無いじゃない! 私も寝坊しちゃっただけよ」

 冒険者は、笑顔で返事をする。


 2人に、銀貨を2枚ずつ渡す。


「では、お気をつけて」


「何か依頼があれば、お願いします。では」

 2人は、ビックリするほどの笑顔で頭を下げて言う。


 冒険者が出て行くタイミングでエルが戻ってくる。


「皮は城の物に似ているので、大丈夫だと思います。あと、期限内にバッチリできるそうです」


「ありがとうございます。では、ゴラントさんお待たせいたしました」


「とんでもない」

 ゴラントは、まだ土下座の姿勢を崩さずに言う。


「まずは、このシートの値段ですが、今回の防具の11倍でいかがですか?」


「そ・・・それは、ご勘弁を」


「そうですね~、ではこうしましょう。先程の防具を用意する契約が完了すれば、妻子には借金が残らないものとする・・・それでは?」


「私だけの借金になるのですね、それならば」


「あぁ、追加で自殺や他殺を依頼したり、魔物にわざと捕まって亡くなった場合は、妻子に借金を払って貰うこととする」


「ぐぅ・・・わた・・・私が稼がないと妻と子が・・・」


「そうですね~、私もお店を開こうと思っているんですが、ノウハウを教えて貰えれば有利な条件を足しましょう」


「はい、解りました・・・私に出来ることであれば」


「店を経営するノウハウを自分達に教えること。ちゃんと教える限り、返済の最低額は利益の5%とし、最低額を払っていれば利子は増えないものとする」


「ありがとうございます」


「以上でどうですか?」


「過分な心遣いありがとうございます」


「では、サインと血判を」


 魔法契約紙にエルさんが文字を書いていてくれていたため、サインと血判で契約終了。


「最後にネムガさん、ゴラントさんを怒っていると思いますが、皆さんに何もしないように言っておいてください。約束が守られれば、追加の報酬も渡せると」


「追加報酬あるのなら絶対に手を出させたりしねぇよ、まかせな」


「では、ゴラントさんの事よろしくお願いしますね・・・エルさん、エルさ~ん・・・エル装備主任!」


「え? あ? あれ? ひゃい!」


「こちらを見つめてぽーとしないで下さい。報告に戻った方が良いのではないですか?」


「え? あ・・・そうですね、報告に戻ります」


 惚れられたか? いや、無いな・・・憧れか? あまり会う事は無いんだし、特に問題はないだろう。


「ケイタ君、タクミ君、俺達も帰ろうか」


「「はい」」

 帰り道を3人で進んでいく。


「やっぱり凄いですね、カナタさん。お金を使わずに全部解決して、何がどうなっていたのか全くわかりませんよ」

 タクミ君が、俺に言う。


「それは、先にケイタ君が調べてくれたからだよ」

 おれは、ケイタ君のほうを見る。


「いえ・・・あの、カナタさん」

 ケイタ君は、どもりながら言う。


「何? どうしたの?」


「気が付いていますよね? どうして聞かないんですか?」

 ケイタ君が真っ直ぐ俺を見ながら言う。


「え? 何を急に? どうし・・・」

 タクミ君はわけが分からない様子だ。


「そうだね。じゃあ、何でこんな事をしたの?」


「カナタさんも・・・2人で何を言ってるんですか・・・?」

 タクミ君が、俺達を交互に見ながら言う。


「そうだなぁ・・・聞き方を変えようか、何故グラフェンを商人にばらしたんだい?」


 ケイタは、驚きの表情をしている・・・解っていないと思ってたのかな?

 完璧主義のケイタ君が、周囲の警戒を怠る事などないと断言してもいい。


 それなのに何故、グラフェンの実験中に、商人が近づいてるのに気が付かなかったのか・・・いや、気づいていたが何もしなかったのか・・・

 商人に有用な素材があると知らしめるため・・・まぁ、鍛冶場で実験をする事こそ、見つけてほしいと言うようなアピールに過ぎないのだが・・・・


 本当に隠しておこうと思うなら、屋敷の地下で実験をするのが最適だろう。

 ケイタ君ならそんな事は分かっているはずだ。


「え? あれは・・・僕が」

 タクミ君は、解らないという表情で言う。


「僕は・・・あなたが怖いんです・・・カナタさん」

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